第一百一十三話:闇落ち主人公パーティ? “中二”には“中二”で殴れ
(場所:第5層:黒の王座・前室)
外周ダンジョンを突破し、リンエンはコア区画へ辿り着いた。
立ちはだかるのは――闇落ち版・主人公パーティ。
黒アーサー:【デスナイト】。
漆黒の魔甲に身を包み、左眼に青い鬼火。
だが彼は斬りかかってこない。代わりに、極めて複雑なポーズを決めた。
右手で顔を覆い、左手で魔剣を逆手。身体は45度後傾。
台詞:「ククク……我は深淵の処刑者……漆黒の魂よ、我が魔剣の下で震えるがいい……」
黒ジャンヌ:【堕落シスター】。
露出多めの黒レザー、棘付き鞭。目は空洞で残酷。こちらを見る目が“ゴミを見る目”。
闇落ち版は道徳リミッターがない分、原版の十倍強い。
原版アーサーが突っ込んだ瞬間、剣で叩き割られて吹き飛び、吐血して倒れた。
「強すぎる……これが闇落ちの力か……俺、無理だ……」
「違う、アーサー。勝つ必要はない」
リンエンが拡声器を取り出し、薄く残酷な笑みを浮かべる。
「お前がやることは一つだ」
「――奴に“死にたくさせる”」
リンエンが黒アーサーへ呼びかける。
「黒アーサー。お前、カッコいい。マジで」
「でもさ――お前の“iCloudバックアップ”、俺が握ってるの知ってる?」
【公開処刑:中二黒歴史・朗読】
再生ボタンが押される。そこに流れたのは、変声期の少年の幼い声。
「西暦202X年、2月14日、雨」
「今日も右手の封印が緩んだ。太古の黒竜が咆哮している……痛い! 俺の麒麟腕が痛い!」
「クラスの女子が話しかけないのは、俺の力を恐れているからだ……そう、孤独は強者の宿命」
「母が醤油を買ってこいだと……フン、愚かな人類め、闇の子に命令するとは……」
ホールに4K音質で反響する。
「ぶはっ!!」
ポーズを決めていた黒アーサーが、突然盛大に吐血した。
高冷・憂鬱キャラの仮面が、ガラスみたいに砕け散る。
顔は瞬時にレバー色。魔剣が「カラン」と床に落ちた。
「や、やめろォォ!!」
黒アーサーは頭を抱え、断末魔みたいな叫びを上げる。
「読むな! あああ! 頼む、殺してくれ! それだけは読むなァ!!」
床で転げ回り、鎧で耳を塞ごうとして――つま先で床を削り、三LDKを掘り出す勢い。
【第二の処刑:聖女の秘密】
リンエンは無表情の黒ジャンヌへ向き直る。
「お前、堕落シスター。虐待が趣味っぽいな?」
「じゃあ私生活を見ようか」
リンエンがホログラム映像を投げる。
映像の中。高冷SM女王のはずの黒ジャンヌが、ピンクのクマ柄パジャマ。髪はボサボサ。
布団に潜って魔法少女アニメを観ながら、紅焼豚足を脂まみれで貪っている。
「うぅ……魔法少女、感動する……」
「豚足、うまい……」
「きゃあああああああ――!!」
黒ジャンヌはソプラノ超えの悲鳴を上げた。
冷酷の仮面が完全崩壊、顔は真っ赤、羞恥で死にそう。
鞭を投げ捨て、両手で顔を覆い、壁際にしゃがみ込み――“自閉キノコ”になった。
「見るな! 消せ! 今すぐ消せ!! 私、嫁に行けなくなる!!」
結末:
戦わずして勝利。
闇落ちパーティは全員“社死(社会的死亡)”で戦闘力ゼロ。




