第一百一十話:悪夢ダンジョン「核爆弾を売るマッチ売りの少女」
(場所:第2層:極寒メルヘン町)
第二層の気温は、極寒。
通りには、先行挑戦者たちの氷像が無数に凍結して並んでいた。
【BOSS:マッチ売りの少女(黒化版)】
壁際に小さな少女がうずくまっている。手には――破滅の気配を放つ、巨大な赤リンマッチ。
彼女がそれを擦れば、“概念級の烈焔嵐”が発生する。
「さむい……」少女は震えながら言った。
「マッチ擦りたい……世界を、滅ぼしたい……」
マッチの先端が煙を上げ、周囲の空間が高温で歪む。
「擦るな! 絶対擦るな!」竜王バハムートが近づいた瞬間、ヒゲが一瞬で炭化した。
「くそっ、これは【心理の火】だ! 竜鱗すら焼き抜く!」
「落ち着け」
リンエンはシュゴスが変形した極厚ダウンを着込み、淡々と歩み寄る。
「お嬢ちゃん。君は本当は誰も焼き殺したくない」
「これは【極端な体寒症】が引き起こした【放火強迫】だ」
リンエンは手品みたいに、背中から“巨大な机”を出した。
分厚い布団がかかっている。
【日本特産・神器:こたつ(Kotatsu・核融合魔改造版)】
「これは“永遠のぬくもり”だ」
リンエンは布団の端をめくり、剥いた蜜柑の皿を机の上に置く。
「中は常時26度。マッチいらない」
「それに……蜜柑、無限補給だ」
少女の目が止まった。
甘い柑橘の香りと、抗えない暖気が、心の防壁をぶち抜く。
少女は迷いながら、こたつに潜り込んだ。
――封印、完了。
「にゃ……」
少女は猫みたいな声を漏らし、全身が一気にとろけた。
「ぬくい……動きたくない……世界、滅ぼしたくない……」
【システム通知:BOSS……“だらけ化”状態。ダンジョン突破。】
少女はリンエンの袖を掴む。
「お兄ちゃん、このこたつ……持っていっていい?」
リンエン:「もちろん。ちょうど“戦略核兵器”が欲しかった」




