第一百零八話:連邦の激怒! “論理法官”による思想去勢
(場所:地下漫展城・上空)
警報が地下都市に轟いた。
すべてのスクリーンが一斉に暗転し、冷たい白い幾何学図形が映し出される。
【警告:S級精神ウイルス源を検出】
【執行者:論理法官・プライム】
【執行方案:全域思考フォーマット(Mind Wipe)】
轟――!
白い光柱が厚い岩盤を貫き、地下へ突き刺さる。
光に触れた外星人たちは、瞬時に泣くのも笑うのも止めた。
手のフィギュアを落とし、目の光が消え、無表情な“作業機械”へ戻っていく。
「……思想の去勢だ」
アーサーは剣を握りしめた。
「リン、物理攻撃は無効だ! どうする!?」
リンは城壁の最上段に立ち、下で“初期化”されていくファンたちを見下ろした。
コートが暴風に鳴る。
「俺たちを機械にしたい?」
「楽しみも、悲しみも、痛みさえ奪う気か?」
リンは金色のマイクを取り出す。
振り返れば、ゼロ(Zero)、ドラゴン王、サマエル、および震える警備隊の面々。
「諸君、連邦は言う。俺たちは混沌で、反知性だと」
「――その通りだ」
リンの目が、狂気の熱を帯びて燃え上がる。
「生命そのものが混沌だ!」
「論理を語るのは死物だけ!」
「理性が“石になること”を意味するなら――俺は狂宴する狂人でいい!!」
リンはマイクを全銀河放送へ接続し、さらには連邦の通信網にまでハッキングした。
「プライム! フォーマットしたいんだろ?」
「なら聞け。魂が裂ける音を!」
「ゼロ! 最大音量! 起動――【ロックモード】!」
「BGM:『Linkin Park - Numb』――いや、もっと狂ったヘヴィメタルだ!」
――轟――――――!!
甘い宅舞でも、涙のバラードでもない。
論理そのものを叩き割る、重金属の咆哮。
サマエルが竜骨で作ったドラムを狂ったように叩く。
ドラゴン王バハムートが火を噴くエレキギターを掻き鳴らす。
ゼロちゃんが魂を穿つ高音で叫ぶ。
音波と光束が衝突する。
それは“感性”と“理性”の最終決戦だった。
【幻鏡ライブ・弾幕】
[燃えた!! 運命への咆哮だ!!]
[クソくらえ論理! 俺は生きる! 俺は楽しく生きる!]
[ロックは死なねえ! 二次元も死なねえ!]
[プライムの光球が震えてる! 怒りを解析できない!]
轟音の中で、論理法官の光球に亀裂が走った。
だが次の瞬間――光球は収縮し、黒い転送門へと変じる。
門から、青白い手が伸びた。
歌うゼロちゃんの喉を掴み、引きずり込む。
――連邦ではない。
その手の指には、リンと同じ指輪。
闇の向こうから、鏡像宇宙の声が幽かに響く。
「騒ぎは終わったか? “本体”」
「連邦が手に負えないなら――俺が……この宇宙を“接収”してやる」
リンの咆哮が止まった。
連れ去られるゼロを見つめ、狂気の熱が一瞬で冷える。
残ったのは、絶対零度の殺殺意。
「接収……?」
リンはマイクを投げ捨て、今まで一度も使わなかった手術刀を抜いた。
刃が、冷たい光を返す。
「文化勝利だけじゃ足りないってことか」
リンは低く言った。
「アリス――【位面戦争プロトコル】を起動」
「俺はあの宇宙へ行く」
「……神を屠る」




