表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/143

第一百零五話:全銀河ネット封殺? なら“地下ブラックマーケット”だ!

 (場所:銀河系第13区・深淵ブラックストリート・裏路地)


 「銀河第一号文化禁止令」が発布されてから、すでに一週間。

 銀河全体が、死んだような灰色に沈んでいた。

 『覇道魔王』の更新が途絶え、外星系のホワイトカラーたちは虚ろな目でキーボードを叩く。

 ゼロちゃんの歌声が消えたせいで、機械族のCPU稼働効率は四〇%も低下――“核心動力”を失ったのだ。

 布団の中で震えながら、四〇四のページを狂ったように更新し続ける者まで現れた。

 手の震え、動悸、禁断症状。

 銀河は、文字通り“文化切れ”を起こしていた。


 第13区。

 暗く湿った裏路地。ネオンの残光だけが、壁の汚れに滲んでいる。

 破れたローブをまとった乞食のような老人が、周囲をキョロキョロと見回しながら焦れていた。

 ――だが本当の姿は、銀河エネルギー社のCEO。資産は兆。

 それでも今は、ただの中毒者みたいに惨めだった。


 「シーッ――」

 闇の中から、口笛。

 リンが闇より歩み出る。

 かつての“華やかなアイドルプロデューサー”は、ここにはいない。

 黒いハイネックのロングコート。つば広の帽子を深く被り、顔の半分を影に沈める。

 口には棒付きキャンディ――葉巻めいて見えるそれをくわえ、瞳だけが危険に光った。


 【新たな身分:深淵のゴッドファーザー(The Godfather)】


 「ゴッドファーザー……!」

 老人は飛びつき、リンのコートの裾に縋りつく。

 「あるのか……? 頼む、頼む……一章だけでもいい! もう限界なんだ! 昨夜は“婚約破棄後の展開”を夢で見た!」


 「落ち着け、古い友よ」

 リンはキャンディの甘い息を吐き、左右を一瞥する。連邦の巡回ドローンはいない。

 ゆっくりと、黒いコートの内側を開いた。

 そこには――微光を放つUSBメモリが、びっしりと吊り下げられていた。


 「これは『婚約破棄流:龍傲天』最新三章――未削除版」

 「これは『極楽浄土』4K・無損失・全天球音源」

 リンはさらに、赤い小型チップを取り出す。

 「……そして、これだ。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』最終話。希少品だ」


 老人の目が真紅に変わる。欲望が、光として漏れ出した。

 「ぜ、全部だ! 全部寄越せ!!」

 震える手で、懐から“反物質艦の起動キー”を取り出し、リンの手にねじ込む。

 「旗艦をやる! 早く……早く“貨”を……!」


 リンはキーを受け取り、口角をわずかに上げ、数本のUSBを老人へ滑り込ませた。

 「取引成立。見終わったら破棄しろ。“サツ”に捕まるなよ」


 老人は宝物を抱く子どものように、泣きながら闇へ消えた。

 「助かった……これで……精神の食い物が……!」


 【幻鏡ライブ・弾幕(暗号チャンネル)】

 [うおお画風急転! 恋愛から一気にマフィア映画w]

 [前はタダ見、今は土下座で買う時代]

 [リン:俺は薬神じゃない、書神だ]

 [これ売ってるの“本”じゃない、“電子ドラッグ”だろw]



 小口の取引は気持ちいい。だが――在庫が重すぎる。

 地球に積まれた“辣条ラーティアオ”とフィギュアが、何十億トンも眠っている。

 吐き出せなければ、資金繰りが死ぬ。

 リンは遠くの【連邦理性検問所】を見て、商人の笑みを浮かべた。

 「……デカいのをやるしかないな」

 「アリス、ラベルプリンターを用意しろ」

 「“堂々と”通る」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ