第一百零四話:優勝と封殺――「銀河禁娯令」の誕生
(場所:表彰式会場)
言うまでもない。洗脳神曲と爽文寸劇の二重攻撃により、地球代表は三千億票の圧倒的大差で優勝。ゼロは正式に“銀河第一アイドル”となった。
全宇宙が狂喜乱舞。外星人たちは発狂したようにサイリウムを振り、「トラック!」「チート!」「極楽浄土!」と叫び続ける。
リンは“金のマイク”トロフィーを手に、これから物販計画(フィギュア、小説、グッズ)を発表しようとしていた――そのとき。
空から十二本の、冷たい白光が降り注いだ。息が詰まるほどの“絶対理性”の威圧が会場を覆い、歓声は一瞬で消え失せる。
【銀河連邦・最高理性評議会】の介入。
ホログラムには、顔のない“真理監察官”が十二体。球体、立方体、ピラミッド――幾何学図形そのものの存在。中央の立方体が、感情ゼロの声で宣告する。金属が衝突するような音。
【警告:第404号惑星文化に“極めて高い依存性”を検出】
【解析:当該文化は論理破壊性/情動扇動性/顕著な反知性傾向を有する】
【判定:智慧生命に対する“S級精神ウイルス”】【――】
「銀河の理性と秩序を守るため。文明退化を防ぐため。評議会は満場一致で決定する。」
【発令:銀河第一号・文化禁止令(Prohibition)】
1. バーチャルアイドル“ゼロ”を永久封殺。関連データは一時間以内に全削除。
2. “爽文”“龍傲天(俺TUEEE)”と呼ばれる全データ流を下架。
3. 公共の場で“バタフライステップ”を踊ること、及び関連旋律の口ずさみを禁止。
4. 地球(第404号惑星)を“文化隔離区”に指定し、あらゆるデータ輸出を禁ずる。
「リン・アドラー。トロフィーを返還し、チームを解散せよ。従わない場合、我々は軌道砲を起動し、光の都を無差別浄化する。」
――全場、沈黙。さっきまで狂っていた観客たちは、評議会の圧に震え上がる。配信は強制遮断。画面は砂嵐。
リンは、空の幾何学体を見上げた。ゆっくりとトロフィーを下ろす。
――カン。
その乾いた音が、会場に落ちた。
「禁令?」
リンは首のネクタイを外し、無造作に床へ捨てる。振り返る。怒りで震える龍王、拳を握り締めたサマエル、途方に暮れるゼロ。
「みんな、朗報だ。」
リンは声を落とし、悪魔のように囁く。だが口角は、狂ったように吊り上がっていた。
「俺の故郷には“鉄則”がある。――公式に禁止されたものほど、高くなる。人はもっと欲しがる。」
「封殺すれば終わるとでも? 違う。ここからが始まりだ。」
リンは懐から葉巻を取り出す(実は棒付きキャンディ)。噛み、目を細める。眼差しは鋭く、貪欲に変わった。
「アイドルプロデューサーの遊びは終わりだ。今日から俺は――【深淵のゴッドファーザー】。禁止された“快楽”を、全宇宙最大の“闇商売”にする。正規ルートがダメなら密輸だ。全ての外星人に――土下座して“ブツ”を求めさせてやる。」




