第一百零二話:中毒発生!全宇宙が“メイド龍王ダンス”を踊り出す
(場所:中央ステージ)
視覚の震撼の次は、聴覚の洗脳。蟲族歌姫は歯噛みし、舞台下の妨害装置をこっそり起動した。
「綺麗なだけじゃ勝てない。聴覚で恥をかかせてやる――全帯域ノイズ干渉、起動!」
ジジジ――!
耳障りな電磁ノイズが響き、桜の幻境を引き裂こうとする。だがリンは読んでいた。
「ノイズ? ちょうどいい。こっちの“洗脳神曲”の伴奏にしてやる。音、上げろ。」
BGM:『極楽浄土(Gokuraku Jodo)・異世界魔改造版』。
ドン、ドン、ドン――!
生体の神経反射弧に“完璧に噛み合う”BPMの鼓動が、妨害ノイズを一瞬で踏み潰した。それは心臓を直接叩く太鼓。血が勝手に沸く。
ゼロがセンターに立ち、伝説の“毒舞”を踊り始める。機械関節が与える超精度――腰のひねり、目線の一つまで、息を呑むほど艶めかしい。だが、核弾級の爆点は――ここからだ。
「出でよ、我らがバックダンサー天団。」
リンの召喚に応じ、巨大な影が二つ、嫌々ながらステージへにじり出た。
左:龍王バハムート(身長二メートルの人型、無精髭、筋肉は岩)。
右:暴怒魔王サマエル(地獄火を纏う狂戦士、凶相)。
――彼らは、着ていた。特大サイズの“ピンクのレースメイド服”。頭には猫耳カチューシャ。手にはサイリウム。脚には白タイツ(筋肉で今にも破れそう)。
「リン……終わったら殺す……」
サマエルは顔を真っ赤にし、羞恥で自爆しかける。
「耐えろ、サマエル! 借金返済だ! 分解回避だ! 深淵の栄光だ!」
バハムートは涙目。凶悪なオッサン面にメイド服、その破壊力は天を突く。サビが来る。
『極楽浄土へようこそ――』
二人の筋肉巨漢が、無表情のまま動きだけは完璧に揃えて、伝説の“バタフライステップ”を踏み始めた。
「世界を滅ぼしたいのに、売り萌えを強要される」その極限の【ギャップ萌え(Gap Moe)】が、銀河の心理防壁を一撃で貫通した。
――会場が、崩壊する。外星人たちは恐怖した。自分の身体が、勝手に動き出すのだ。
「こ、これは何の生物兵器!?」
蟲族歌姫が叫ぶ。高貴だった複眼が、今や完全なパニック。
「私の数千本の脚が……勝手に……左、右、前、後……止まらない! 助けて! 恥ずかしい……でも……気持ちいい……!」
画面の前で、無数の外星人が腰を振る。厳格で硬直した銀河は、一夜で巨大ディスコと化した。警備の機械兵まで銃を落とし、腰をくねらせ始める。
【幻鏡コメント】
[ 目ぇぇ! これは精神汚染だろ! ]
[ 龍王メイド服……SAN値ゼロ。でももっと見たい! ]
[ 助けて、俺も踊ってる!! ]
[ 外星人、完全に堕ちた。これは“土嗨”じゃない、“電子麻薬”だ! ]
[ サマエル:怒ってるのに、このステップ……妙に滑らかだ…… ]




