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特別編:凛子の視界 〜見えてしまう未来〜
静寂の中で、世界は音を失う。
目の前に映るのは、ただの映像じゃない。
私の能力は「因果読解」。
——人の行動、選択、結果を視覚的に“読める”力。
だから、時々怖くなる。
見たくないものまで、目に映ってしまうから。
このダンジョンで見たのは——
赤い血。冷たい剣。
そして、笑う白石。
「——裏切り」だ。
凛子は胸を押さえる。
それは確定された未来の一片で、今はまだ変えられるかもしれないけど。
「どうして、白石くんが……?」
答えは簡単だった。
彼は過去に囚われている。妹を助けられなかった後悔が、彼の心を蝕んでいる。
だから、誰かを守ろうとする気持ちが、やがて歪む。
私は彼のそばにいるしかない。
「私が見た未来を、変えるために」
その時、凛子はふと気づいた。
ダンジョンが私たちを試しているのかもしれない。
私たちの心の弱さ、過去の傷、恐れを引き出し、見せて。
それで、誰かを引き離そうとしている。
だからこそ、私は声をかけ続ける。
「——白石くん、絶対に一人で抱え込まないで」
それが、私にできること。