表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/17

第3話:ダンジョン初階層、ボス戦開始

「こっちだ。俺が案内する」


 スーツ姿の男――**加賀谷かがや じん**は、俺たちを引き連れて、かつての新宿メトロモールの奥へと進んでいく。

 その顔には焦りと、どこか“熱”を秘めた奇妙な笑みが浮かんでいた。


 「お前ら、スキルは使えるんだな? だったら戦力としてカウントする」


 「おい……あんた、何者だよ。なんでそんなに状況に慣れてる?」


 俺が疑問をぶつけると、加賀谷はふっと笑った。


 「元・自衛隊特殊任務部隊。今は“ダンジョン対応局”所属だ。

 とは言っても、今回の件は“未確認”。俺も巻き込まれた一人に過ぎんよ」


 ――ダンジョン対応局?


 聞いたことのない組織名に引っかかるが、今は追及してる場合じゃない。


 「やつがいるのは、この先。ボス格だ。倒せば……“次の階層”への扉が開く可能性がある」


 俺たちは、朽ちたエスカレーターを降り、地下二層に広がる巨大ホールにたどり着いた。

 薄暗い空間の中央に、巨大な影が座していた。


 それはまるで、獅子と人間が融合したような異形の魔物。

 全身は黒い鎧のような皮膚に覆われ、肩から突き出た骨の翼が、不気味にうねっていた。


 >《ボスモンスター《魔獣グローム・リオン》 Lv.12 が出現しました》


 >《周囲の魔力濃度が上昇中。スキル効果強化が確認されました》


 その声は脳内に直接響いた。

 警告のようでもあり、試練の開始を告げる合図でもあった。


「構えろッ! 来るぞ!」


 加賀谷が叫んだ次の瞬間、グローム・リオンが突進してきた。

 信じられない速さ。壁を破壊しながら、咆哮と共に跳躍――!


 「くっ……《魔装剣アームドブレード》!」


 俺の右腕に黒剣が展開される。咄嗟に迎撃、剣と爪がぶつかり、火花が散った!


 ズガァン!!


 吹き飛ばされる。壁に叩きつけられ、視界が揺れる。


「……強すぎ、だろ……!」


「響くん、下がって!」


 明莉が後方から手をかざす。光が弾ける。


 「《ライト・バリア》!!」


 聖なる光の障壁が、グローム・リオンの攻撃を逸らした。だが、完全に防げてはいない。

 耐えるだけでは、やられる。


 加賀谷が一閃。鉄パイプが紫電をまとい、グローム・リオンの足を叩き斬る。


 「食らえ、俺の《衝撃加速》!」


 ——瞬間、彼の体が“消えた”。


 ……いや違う。“加速”したんだ。まるで弾丸のように、加賀谷はボスの腹部に突撃。

 肉が裂け、血しぶきが舞う。


 「こいつの弱点は“再生能力”。長期戦は不利だ。畳みかけるぞ!」


 俺は、脳内に流れ込む“スキルの選択肢”を探る。


 >《新たなスキル選択可能:斬撃強化/血刃連撃/魔力斬裂》


 「選べる……いや、欲してるのか、俺の体が……!」


 俺は無意識に呟いた。


 「……《魔力斬裂》ッッ!!」


 剣が形を変える。黒い光が刃から伸び、巨大な一太刀へと変化した。

 俺はグローム・リオンの背後を狙って跳躍、一閃——


 ズバァンッ!!


 裂けた。魔物の背中が、深々と切り裂かれた。

 叫び声を上げてのたうつグローム・リオン。そこへ加賀谷が再び打ち込む。


 「トドメはお前だ、神薙!」


「おおおおおおおッ!!」


 俺の剣が、魔物の喉を斬り裂いた——!


 魔物が崩れ落ちると同時に、天井から光の柱が差し込む。

 空間の中央に、石造りの“ゲート”が現れた。


 >《階層制圧完了:次層への進行権限を付与》


 >《報酬:スキルポイント +1、魔晶石×5、称号《討伐者》獲得》


 ようやく、終わった。


 崩れ落ちる俺の横で、明莉が駆け寄ってくる。


「響くん! 無事……無事だよね!?」


「ああ……なんとか、な……」


 だが、その瞬間だった。

 加賀谷が、俺たちに背を向けて言った。


 「……よかったな、初勝利だ。これで、お前らも“戦える兵器”になった」


 「え?」


 その口調が、どこか異様に冷たかった。


 「俺は……知ってる。これから始まる“日本全土のダンジョン化”に備えて、上は“覚醒者”を確保しようとしてる。

 お前らみたいな“新規個体”は……貴重な“データ”だ」


 「……おい、何の話を——」


 「そのために俺はここに来た。最初から、命令でな」


 加賀谷の笑みが歪んだその瞬間、背後のゲートが開いた。


 次の階層。闇の奥から、何かが俺たちを“見ている”気配がする。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ