第2話「筋肉大会、爆誕!まずはジム!」
「大会……か」
シーヴァは玉座の間で腕を組んでいた。いや、腕を“圧縮”していた。上腕二頭筋が二つの岩のように盛り上がり、左右の僧帽筋がまるで鎧のように膨らむ。
「その通りじゃ、シーヴァ。我が国と隣国が、魔法の代わりに“肉体”で争う。これが……**《マッスル・オリンピア》**だ!」
「名前ダサッ……いや、いい。名前なんてどうでもいい。大事なのは、“ルール”だ。」
シーヴァは、真面目に言ったつもりだった。しかし、その口調には自然とプロテインのような説得力がにじんでいた。
*
【マッスル・オリンピア ルール概要】
•1チーム6人制(男女不問)
•“美しさ・筋力・完成度”を競う審査制
•食事・体重管理・トレーニング記録も加点対象
•薬物・魔法による補助は禁止
•大会までの準備期間:3年
「まるで減量と増量のハイブリッド戦じゃねえか……」
シーヴァは思わず、懐かしい減量末期の地獄を思い出す。炭水化物の匂いに泣きながら生きていたあの日々。
「して、仲間は揃っておるのか?」
王の問いに、シーヴァは仁王立ちのまま、筋肉で答えた。
「いねぇッス!!」
王は一瞬絶句したが、次の瞬間、にやりと笑う。
「ならば集めるがよい。“そなたの筋肉に、魂で応える者たち”をな!」
(筋肉に魂で応える……それもう、筋肉じゃん)
そんなツッコミは飲み込み、シーヴァは旅立つ。
目指すは、国中に点在する若者たち。己を変えたいと願う者、筋肉に救いを求める者——
筋肉に人生を賭ける奴らに、出会うために。
*
「まずはジムだ。ジムがなきゃ始まらん!」
だが、この世界に“ジム”という概念はない。ならば——作るしかねぇ!
「ベンチもラックも手作りだ!まずは材木!次に鉄!いや、先に筋トレだッ!」
シーヴァの掛け声に、周囲の村人はぽかんとしていた。
だが、その日から村には奇妙な噂が流れ始めた。
——「筋肉で家を建てている男がいる」と。
筋肉の旅が、今、始まった。
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【筋肉知識コーナー】第2話:筋トレルールと大会の基本
大会(ボディメイク系)には大きく分けて「美しさを競う審査型」と「重さを競うパワー型」がある。
本作で扱うのは「フィジーク・ボディビル系の大会」に近い。
審査項目はポージング、筋肉のバランス、体脂肪率、見せ方など。日々の食事・トレーニング・メンタル管理が勝敗を左右する。