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異世界の聖女を母に持つ私は、亡国の姫として生き延びる  作者: 雪沢 凛
第三章:皇権の盤上

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(78) 再会

 サイラスは大広間の扉を押し開け、懐かしさとどこかよそよそしさが混じる空間に足を踏み入れた。

 視線はすぐに、部屋の中央に立つ二つの人影に向けられる。


 ノイッシュとアレックだった。


 彼が入ってきた瞬間、二人は同時に振り向き、まず一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに安堵の息を漏らした。


「カイン様……」

 ノイッシュが口を開きかけたが、すぐに状況を思い出し、慌てて言い直した。

「あ、いや……今は何とお呼びすればいいんですかね?殿下?」


「そうだな、今となってはちゃんと呼び方を変えるべきか?」

 アレックが眉をひそめ、ややからかうような口調で言った。

「“遊び人のカイン様”が、実は高貴なる王族の御子息だったとはね。」


 ノイシュは腕を組み、わざとらしく首を振った。

「“ブレストのカイン”、“エドムンド侯爵の養子”、“辺境の酒場オーナー”、そして“帝国の王子”……

 一体いくつ肩書きがあるんですか、サイラス殿下?」


 サイラスは思わず目を転じた。

「……お前ら、いつからそんな皮肉を言うようになったんだ?」


「いえいえ、そんなつもりじゃ……」

 アレックは急いでノイッシュの脇腹を蹴りながら、口調を少し改めた。

「まだ慣れてないだけさ。」


 サイラスは二人の軽口を無視して、近くの椅子に腰を下ろし、額を揉みながらつぶやいた。


「……それで、今はどういう状況なんだ?俺はここに運ばれた記憶がない。」


 その言葉に、ノイッシュとアレックは目を合わせ、少し真剣な顔つきになった。


「その後、エドリック殿下が軍を率いて現場に到着しました。」

 アレックが静かに語り出す。

「俺たちが到着したときには、ラファエットは完全に撤退していて……追うことはできませんでした。」


「それで、エドリック殿下の判断で俺たちは帝都に戻ることになったんです。」

 ノイッシュが補足する。


「その間、あなたはずっと目を覚まさなかった……俺たちは正直……」

 彼はそれ以上言葉を続けなかったが、その沈黙がすべてを物語っていた。


 サイラスは静かに目を上げ、二人を見渡す。

 彼らの瞳に浮かぶ心配の色を読み取り、やれやれと言わんばかりに口元を歪めた。


「……まさか、俺が死んだと思ったのか?」


「……ただ、心配だっただけです。」

 アレックが低く答えた。


 サイラスは一瞬だけ黙り込み、それから小さく溜め息を吐いた。

「……無事だ。ただ、まさかこんな形で“帰る”ことになるとはな。」


 この帝都。この、かつて過ごした場所。


 そして今、彼は再びそこへ戻ってきた。


「……エレは?」彼は視線を戻し、静かに問いかける。「彼女はどこに?」


「エレ様とリタ嬢も一緒にここまで来ています。」

 ノイッシュが答える。

「エドリック殿下が、別の宿所を用意されました。」


 サイラスは数秒思案するように黙り込み、それからすっと立ち上がった。


「……彼女のところへ連れて行ってくれ。」

 彼には、まだ話すべきことがある。

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