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3話 ようこそ魔法国家(ウェスターン)へ

今作は、フィクションであり、実在の人物・団体とは関係ありません。

「今まで魔王を倒してから十年間、君のような存在は現れなかった。これは好機なんだ。魔物と人間の共存ができるとすれば今しかないんだ。頼む」

「でも、それって魔物を殺しつくした方が早いんじゃ」

「そう。その通り。現在国の推進運動は正にそれだ。だけど、君たちは魔王に従ってただけなんだろう?なら、君たちに戦う理由はないはずだ。それなら、仲良く暮らした方がいい。そうは思わないか?」

冷静になって聞いてみたが、彼の言葉には一理ある。私達がいた魔物の集落は連合国の外に位置していた。それなのに、滅ぼしに来た彼らは異常だ。さらに、先ほど私が制したあの魔法騎士たちも魔物を殺すのを楽しんでるように見えた。彼に乗るのもいい手かもしれな

「マナーーーーー!大丈夫⁉」

私は彼女の叫びを聞いてハッとした。彼女は私が気になって追ってきたらしい。いい弟子に育ってくれた。ああ。やっぱり、私は

「あれは、君と一緒にいた…」

「ごめんなさい」

「えっ。なんで?」

私の返答に疑問に思ってる彼を一瞥し私の全てを言い放った!

「私はあの子を裏切れないから!」

杖を天に掲げ、全身の魔力を杖に込める。そして私の最高峰の魔法を弟子と私を信じてくれた人に全力で見せつけた!

爆炎の烈撃(バーニング・ブラスト)‼」

真紅の炎が空を仰ぎやがて周囲をまるで恋に焦がれた少女のように赤く染めた。

「綺麗…かっこいい!」

「正気か?ここは、山なんだぞ!」

彼女は私の魔法に見惚れて一方の彼は戦慄していた。実際、この行為には打算があった。炎で山を燃やせば、この場で唯一水魔法を使える彼が消火するしかない。何より、私達魔物を救おうとしてるような優しい人はこの状況を看過できない!

この状況、本来なら私は山に火をつけた魔女。どこまでも救えない存在だけど!今この瞬間だけは!私は心の底から自由だと感じられた!

「マナ‼」

「ユイ!」

今のうちにユイのもとに駆け寄る。このまま戻れば、私は、

今まで通りには戻れないかもしれない。それでも、きっとあの子と一緒なら、どんな場所でも構わない!

「くっ。来い!レイア!」

「えっ」

「誰?」

謎の呼びかけに私達は一瞬困惑し硬直した。その直後、

「ごめんね。私達は貴方を諦められないの」

「⁉」

初めて聞く声に驚愕し振り向く。瞬間。

「電流の絶弾エレキ・ショット

魔法が直撃し、全身に感じたこともない刺激が走り意識が遠のいた。

「な、なにが…」

「よし!彼女は捕まえた。消火はそんぐらいにしてさっさと帰ろう」

「わかった。けど、まだ完全には…」

「そんだけ消せばもう十分。彼女も火の海にしたかったわけじゃないでしょ」

「ああ。わかった。頼む」

転送陣テレポート・ゲート

「ちょっと待ってくれ」

「なに?まだなんかあんの?」

「彼女を連れていけないか?相棒らしいんだ」

「……………」

「残念だけど無理ね。運ぶ人が多すぎる。彼女は置いてくしかないわ」

「え?待って。行かないで!」

「すまない」

「私も連れて行って!」

「ごめんなさい。でも」

「え?」

「もし、貴方に覚悟があるのなら、この国の中央に来なさい。じゃあね」

「待って!マナ!マナ!マナーーーー!」

彼女の咆哮にも似た叫びを聞いたのを最後に私の意識は途絶した。


まず、始めに触覚が戻ってきた。木のような固いものにあたっている。痛くはない。

次に、嗅覚が戻ってきた。なにか甘い匂いがする。私はこの匂いを知らない。

そして、視覚が戻り目を開ける。お茶のカップが目の前にあった。私は突っ伏して寝ていたらしい。状況を理解するとともに私は、全身の意識を目覚めさせて体を起き上がらせた。

目の前の光景は見たことがなかった。大きく丸い机と驚くほど座り心地が良い椅子。茶色い液体が注ぎ込まれたカップと同じく茶色いお菓子。目の前に写る大量の棚とそれに納められた大量の本。そして、目の前に座っている赤い薔薇のような美しい髪色の女性。目は蒼く輝いている。やがて彼女は私の目覚めに気付いた。

「あっ。起きたんだ。おはよう」

彼女の挨拶に返答し、疑問を質問し尽くした。

「おはようございます。貴方は…?」

「私はレイア。そこで寝ている青髪がランス」

彼女は自身の真横を指さし、そこのハンモックで寝ていた青髪の青年を紹介した。

彼を見て私は自分の意識が無くなる前のことを思い出す。そう。彼はあの時戦った青年だった。思い出した直後、雑音のような耳鳴りに苛まれ頭を抱えた。

「うっ。私は、」

「大丈夫?」

「はい。あれから、どれくらい、経ったんですか?」

「貴方達に会ってから、一週間ぐらい経ったわね」

その言葉で絶望する。一週間。あまりに長すぎる。その間、いや今もあの子は何をしている?あの村に居続けたらどうなる?あまりに危険すぎる。

「今すぐ、あの子をっ!」

椅子から立ち上がり走り始めようとした。その瞬間、体のバランスを崩しその場に倒れこむ。その後、私は体が自由に動かせないことにようやく気付いた。欠損しているわけでも、感覚がなくなってるわけでもない。ただ自分の思い通りに動かない。

「無駄よ」

「え?」

驚く私に彼女は続ける。

「私は雷属性の上級魔法使い。体に流れる雷を操作すれば貴方を操ることだってできる」

「なっ」

その発言で彼女が私の意識を奪ったと確信した。だが、体に雷が流れているなんて聞いたことがない。しかし残念ながら、体が動かない以上私は彼女に縛られているという事を事実として認めるしかなかった。

「念のため、言っておくけど」

「念のため?」

「あの村にもう彼女はいなかったわよ。修行でもしてるんじゃないかしら?」

「いない?」

その言葉を聞いて私は、もう彼女が迫害されることがないという安堵感とどこに行ってしまったのかという不安の二つの感情を抱いた。

私は青ざめて硬直していた。しかし、その姿を見た彼が私に安心させるように語りかけた。

「安心していいよ。確かにレイアは雷魔法を使って敵を操ることは可能だけど、それは人間に限った話だよ。君には効かない」

「あら、起きていたの?」

「追い詰めてるからかわいそうだなって思って」

「そんなつもりなかったんだけど」

「すみません。じゃあ、さっきの言葉って…」

「ええ。ただのハッタリよ」

彼女の優しそうな表情と言葉で安心した。

そうして、頭の中を整理させる。そうして、思いついた疑問を次々と質問していった。

「あ、あの…」

「ん?」

「何かしら?」

「あの村って、大丈夫なんですか?」

その質問に彼らは大爆笑した。どうやら、あの村を心配することがまるで酔狂のように感じたらしい。よくよく考えたら当たり前だけど。彼らの笑う姿を見ていると、段々自分が恥ずかしくなってくる。

「大丈、夫だよ…」

「いつまで笑ってるのよ。真剣に聞いてるあの子に、失礼でしょ」

「いや、うん。ごめん」

彼は笑いをこらえて、彼女は大笑いしていた。少し間を置いて落ち着いた頃、彼らは話を続けた。

「あの村はかなり排他的だったから、そのうち破滅するよ。君が気にすることない」

「排他的?」

「要は他の村と仲良くしてこなかったの。よく八年もあんな場所にとどまれたわね」

「そうですか」

当然だけど、あの村にいい印象はなかった。もし、あの子に出会って優しさを教わらな

ければ滅ぼしていたかもしれない。まあ、あの子も嫌っていたし、もうどうでもいいか。

「二つ目なんですけど」

「何か気になったことあった?」

「ここってどこなんですか?」

一番最初に思いついた質問だ。そもそもこの建物は何なのか。この場所はどこなのか。一体何をするところなのか。単純に気になった。

「言ってなかったの?」

「忘れてた」

二人はほんの少しだけ口喧嘩をしていたがすぐに私の方に向き直り、私の質問を答えてくれた。

「ここは連合国西部魔法都市ウェスターン。ここは、その大魔法図書館第一分院だよ」

「えっと、図書館?」

「本を貸し借りする場所。ここには、五十万冊の魔法書があるわ」

「えっ」

魔法書。人間達には、開発や発掘した魔法や好きな文章を紙や布などの自分以外のものに書き記して保存する文化があるらしい。ユイが絵本で教えてくた。

それでしっくりした。だから、こんなに本があるんだ。面白い場所だ。

「えっと、ありがとうございました」

質問の返答に感謝し、最後の質問に移る。

「それで、私は何をすればいいんですか?」

私の言葉に二人はニヤリと笑みを浮かべた。魔物と人間の共存。大まかなことはランスさんから聞いていたけど、実際に私の何をすればいいのかは聞いていない。一体、二人はどんな過程でこんなことを成し遂げるのか?

「やることは二つよ」

「二つ?」

「うん。一つは今すぐできることだよ」

「いますぐ?」

何をするのか?私には、見当もつかない。今すぐできること。それって…

「読書とか…?」

よくわかっていなかったが、周りに本が大量にあって、つい答えてしまった。この冗談のような返答に対し、彼らは

「正解」

なんと肯定した。信じられないけど、私の当てずっぽうは合っていたようだ。

「つまりは、この国の人や文化に触れて知ることだよ」

「そんな、ことでいいんですか」

困惑した。だってそれって、ただここで生活しろってことだから。

「例えば、ここ。ここは、さっきも言ったけど本を読む場所でしょ。君はただ本を読んで楽しく生活するだけでいい。君がここで生活できているっていう事が大事なんだ」

「な、なるほど」

彼の言葉で納得したが、なんだか拍子抜けだ。もっと難しいことをするのかと思っていた。だけど、これなら私でもできそう。

「じゃあ、二つ目行くわよ」

レイアさんは覚悟を決めたかのように声をひねり出した。それに少し怖く感じて萎縮してしまう。

「は、はい…!」

「この国の中央のセントリアには、連合国営第一魔法学院っていう魔法の学校があるの」

「がっこう?」

聞いたことがない。がっこうってなんだろう?あの子もそんなことはなしていなかったし。一体何をするところなんだろう?

「え、その顔、やっぱり」

「学校を知らないんだろうね」

「は、はい。聞いた事なくて…どうゆうものなんですか?」

「どうゆうものって…」

彼女は頭を抱え始めた。どうしたんだろう。疑問に思っていると、ランスさんが私に話してくれた。

「ごめん。僕達も学校は行ったことがないんだ」

「え?」

「学校ができたのは約十年前なの。私達みたいな魔王と戦ってた世代は学校には無知なの」

「聞いた話だと、大人の先生の話を聞いて魔法の修行をするらしいけど」

二人の説明があまりにも曖昧すぎて不安になってきた。嫌な予感しかしない。さっきまで堂々と説明していたこの二人の説明の歯切れが悪い。この空気で私がやることは予感していたが、受け入れたくなかった。

「頼む。入学してくれ。一年後の上級生入学試験で合格すれば、入学できるそうなんだ」

「は、……」

予感していた。わかりきっていた。そうじゃなきゃ話し始めるはずがない。

だけど、わざわざこんなことをやる理由がわからない。そこまでして入学する必要はあるのか。

私はそれが気になって、無礼なのはわかっていたけど質問した。

「何で学校に入学する必要があるのですか?」

「……………」

少しの間、二人は沈黙した。やがて、深呼吸して口を開いた。

「それが条件なの……」

「えっと……」

うまく聞こえなかった。何と言ったのか。気になって彼女の眼を見ようとしたが、すぐに逸らされてしまった。

その様子を見て、ランスさんが詳細を話した。

「学校に入学して卒業すること。それがクリスト王の出した条件なんだ」

クリスト王。その名前は知っていた。知らないはずがない。かつて魔王を倒した二人の英雄の一人。最強の光属性魔法使い。私達魔物にとって恐怖の象徴としてその名を今もなお轟かせている。

そんな人が条件付きで魔物との共存を許可した⁉信じられないが、この人達が嘘を言っているとも思えなかった。

「それに、これは君にとって別の意味でも必要なことだ」

「別の意味?」

落ち着きを取り戻したレイアさんが話を続けた。

「クリスト王から、信頼を得れば貴方は自由に動ける。そうすれば、貴方の相棒も探せるんじゃないの?」

その言葉を聞いて、私はハッとした。確かに、レイアさんはあの子があの村にはもういないと言っていた。つまり、世界のどこかにいる。それを理解した時点で私の答えは決まっていた。

二人の前に大股で立ち上がり、宣言する。

「私は、その入学試験受けます!」

二人はその言葉に感銘を受けたようだった。

『任せて!絶対に相棒に逢わせて見せる!』

「はい!」


こうして、私のウェスターンでの生活が始まった。

図書館でたくさんの本を読んだり、たくさんの魔法を教わった。食事処では、肉や魚とかのいろんな美味しい料理を食べた。茶屋では、レイアさんがよく飲んでる紅茶を飲んで熱くてやけどしたりた。菓子屋では、茶菓子を食べ過ぎたこともあった。魔法道具屋では、ランスさんおすすめの魔法道具が爆発したこともあった。

この一年間、いろんな人達に出会った。魔法使いもそうじゃない人も。優しい人も。少し暗い人も。炎も。水も。風も。土も。雷も。いろんな魔法と人に出会って「外」を知った。  

ランスさんとレイアさんに連れ出されるまで知らなかった世界、景色。私はいつかこの景色をユイに見せてあげたいって思うようになった。そうして、運命の日が訪れるまでは、あっという間だった。だけど、本当は……


「これにて、第十一回連合国営第一魔法学院 上級生入学試験の受付を終了します!受験する方は会場にお入りください!」

あっという間だった。私の一年間は。

「今日、ようやくだね」

「気にすることないよ。マナなら負けないから!」

「ありがとう。じゃあ、行ってくるね!」

『うん!行ってらっしゃい!』

これで、全てが決まる……

さあ、始めるよ。私の戦いを!

待っててね。ユイ!

私は、新しい舞台に向かって足を踏み出した。



こんばんは。レインです。楽しんでもらえたら、良かったです。


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