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ファーストコンタクト

あまりの可愛さに放心していた。

(ハッ!いけない!怖がらせないようにしていたのに私が怖がらせてどうする。なるべく優しく笑顔でゆっくり話しかけなくては)

『ご気分はいかがですか?もしよろしければ枕元に水もありますので喉を潤して下さいね。お腹が空いているなら食事もご用意できますよ。』

話しかけられて恐ろしかったのだろう、神子様は体を縮こめて息を吸った拍子に小さく呻いた。

「つっ…」

『神子様!大丈夫ですか?』咄嗟に神子様に手を伸ばした。

その瞬間神子様は腕で頭を庇って小さく震えた。

(ああ、やってしまった。あんなに傷だらけだったのは普段から暴力に晒されていたからだ。)

これ以上神子様を刺激しないように、そっと距離を取った。


少し離れた場所から神子様に小声で声をかける

『神子様が目を覚まされた事を知らせて参りますので、しばらく御前を失礼いたします。部屋の中の物はご自由にお使い下さい』

ゆっくりとした動きで、神子様を不安にさせないように静かに部屋の外に出た。


室内の物音で神子様が目覚めた事が分かったのだろう。部屋の前に待機していたルーデンが声を抑えながら聞いてきた。

『神子様のご様子はどうですか?』

『神子様は怯えていらっしゃる。普段から暴力を振るわれていたようだ。私が側にいてはパニックになりかねないので、一度お一人で落ち着いていただこうと思う』

『了解しました。隊長もここで警備につきますか?』

『いや、料理長に少し話をしてくる。引き続きここで警備を頼む。神子様の身の危険以外は無闇に部屋に立ち入らないようにしてくれ』

『お任せ下さい。神子様の心身ともにお守りします』


神子様の事はルーデンに任せ、料理長に話をしに厨房に向かった。

『料理長。神子様について共有しておきたい事がある。今大丈夫だろうか?』

『少しだけ待ってくれ。今後の指示だけ出したらすぐに話せる』

夕方の忙しい時間帯にもかかわらず、料理長は神子様を優先してくれるようだ。料理人達に手早く指示を終えると、こちらに向かってきた。

『すまない待たせた。神子様が目覚めたのか?』

『ああ。目覚めたのだが、日常的に暴力を受けていたようで怯えておられる。料理長の言うとおり食事は胃に負担がかからないものがいいだろう』

『了解した。食事の事は任せて貰おう。神子様の食事の様子を見ながら調整して無理をさせないようにする』

『神子様の世界の食事はこちらの世界と大分違うのか?』

『そういうのは神殿の管轄らしくて俺も詳しくは知らないが、神子様が居られる事だし、一度神官に聞きに行った方がいいだろうな』


料理長と別れ、神子様の事を詳しく知るために神殿に向かった。

神殿にも神子様が保護された事が伝わったのだろう。いつもは閑散としている神殿で多くの神官が立ち話をしていた。近くにいた神官に神殿の責任者がいる場所まで案内を頼んだ。

神殿の奥にある立派な扉の部屋に案内され、他の神官より明らかに刺繍の装飾が豪華なローブを纏った優し気な顔つきの初老の神官と対面した。

『突然の訪問で驚かせてすまない。私は王都の騎士団で第五隊の隊長をつとめているレオンハルトと言う。実は騎士団で神子様を保護したのだが、色々と話を聞かせてほしい』

『私はガラクの街の神官長です。私でよければ必要な事は全てお伝えしましょう。さて神子様のご様子はいかがですか?』

手で促されてソファーに着座しながら返答をしていった。

『先程目を覚まされた所だが、神子様は怪我をされている。他にも日頃から暴力をふるわれていた形跡もあった。当然の事ながら知らない場所に怯えておられる』

神官長は特に驚いた様子もなく納得したようだった。

『そうですか。私の知っている言い伝えとも合致します。神子様は元の世界ではあまり平穏な生活をしていなかったのだと思います』

それを聞いてまたも苦しい気持ちになった。だがこれからは誰よりも幸せになっていただきたい。思わず縋るように問いかけた。

『神子様はこの世界で幸せになれるだろうか?』

『はい。神はこの世界の為と神子様の幸せを願って連れてこられるのです。この世界で心身の傷を癒していただければきっと幸せになれますよ。ではもう少し詳しく神と神子様のお話をしましょうか。』

神官長は記憶を思い出すように、目を瞑りながら静かなトーンで話し始めた。

『まずは我々の世界の成り立ちからお話しましょう』

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