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 瑠璃羽は密かに決意した。親子を地上に出すと。そして、自らも地上へ出ていくと。


 それは間違いなく瑠璃羽なりの、無意識の恩返しであったが、何よりも瑠璃羽自身の地上の世界への興味の強さがあった。話に聞く、美しく輝いている世界。その世界への強い好奇心。


 瑠璃羽には、恩返しというものが、どういうものかわからなかった。恩返しをしたいという気持ちがあることも自覚していなかった。それでも、それは確かに恩返しという気持ちだった。


 とはいえ、まずは何から手をつければいいのかわからず、何も起こらないまま、小百合がいない間に百香の面倒を見るという毎日が続いていた。


 しかし、転機は突然訪れることとなった。


 小百合が高熱を出して倒れたのだ。


 瑠璃羽は小百合がどこかで売春をしていることに勘付いていた。性病か、免疫力が落ちることによる感染症か。とにかく、満月街以外で何の病気にも罹らずに生きることは不可能だ。


「小百合さん、大丈夫?」


「大丈夫よ、私はいいの……それより、百香にご飯を食べさせてあげないと……」


 小百合はそう言うと、家の中にある、今にも崩れ落ちそうな腐った箪笥を指した。


「中に服が少し入っているわ、下着もね。あれを売ってきてくれないかしら……?売る場所は……」


 小百合がそう言いかけたのを、瑠璃羽が遮った。箪笥の中にある服はどれもボロ布のようであり、こんなものを売ったところで、とても食料などは買えないと理解していた。


 それでも構わず、売ってきてほしいという小百合に、瑠璃羽は呆れたような、どこか嬉しそうな表情で応えた。


「小百合さんて、ホントお人好しって感じだよね。あたしに金をせびるなり、百香に体を売らせるなりすればいいのにさ、そうしないんだもん」


 地下では子供に売春をさせるのは当たり前であり、利用できるものは利用する。それが常識だ。


 しかし、それをしようとしない小百合に、瑠璃羽はどこか温かいものを感じた。


「いいよ、これは売ってきてあげる。でさ、その後なんだけど、しばらくあたしが面倒見るよ。小百合さんもね。それでいいでしょ?」


「ありがとう、瑠璃羽ちゃん……」


 小百合は弱々しく微笑むと、そのまま眠りについた。

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