麻弥の提案
佳世を仲間に引き入れて数ヶ月、瑠璃羽はグループのメンバーに、疑われない程度に、ほどほどに献身的に接し、自身の支持者を増やしていった。その中には、瑠璃羽が以前疑いを掛けた亜里沙も含まれていた。
瑠璃羽の行動を見ていた亜里沙は、瑠璃羽が麻弥に代わってリーダーになってくれれば良い、ということを呟き、その場にいた他の女性もそれに賛同した。
気付くと、メンバーの殆ど、瑠璃羽が念頭に置いていなかった、病気でもなければ騙されたこともない、特に麻弥に反抗する気もないであろう女性たちも、瑠璃羽に着くようになっていた。こうして、瑠璃羽率いる反抗グループは拡大していった。
*****
ある時、麻弥によってグループの全員が集められた。麻弥は機嫌が悪そうであり、タバコを咥えながら苛立ちを隠そうともせず、磨かれた靴でトントンと地面を叩いていた。
「瑠璃羽、来な」
「えっ?」
麻弥は顎をくいと上げ、瑠璃羽に自分の下に来るように促した。瑠璃羽はやや戸惑いながらもグループのメンバーたちの間を縫うように、麻弥の下へ向かった。
「なに……あっ!」
話出そうとした瑠璃羽の胸ぐらを、麻弥は思い切り掴み、そのまま突き放した。瑠璃羽は後ろに倒れ、尻餅をつくこととなった。ふと顔を上げると、麻弥の顔は怒りに満ちており、咥えたタバコの吸い口はぐしゃりと潰れている。
「この間、玲奈のやつが吐いたよ。勢いだろうけどね。あんたがリーダーになるだって?馬鹿げたことを」
玲奈とは、瑠璃羽が自身のグループに取り込んでいた売春婦の1人だ。数日前、上納金の額が少ないことを詰められた玲奈は、怒りのままに瑠璃羽がリーダーの座を狙っていること、麻弥もこのままではいられないことを吐いてしまったのだ。
「いい度胸じゃないか。人も集めたみたいだね。最近、随分反抗的なヤツが増えたと思っていたところだよ」
そう言うと、麻弥は短くなったタバコを吐き捨てた。さて、どうしたものかと瑠璃羽は考えていたが、それは麻弥も同じだった。
「瑠璃羽、あんたがそういうつもりなら、この際、決着つけなきゃね。どっちがリーダーに相応しいか」
「それしかないみたいだね……」
瑠璃羽は拳をぐっと握り締めた。数ヶ月間機会を窺っていたが、その時がやっと来たのだ。
麻弥は顎に手を当ててしばらく考えていたが、はっと顔を上げると、目を細めたいやらしい笑顔でこう言った。
「あたしらは売春婦、いや、あんたたちが、というべきかな。じゃあ、それらしい勝負をしようじゃないか」
「売春婦らしい勝負?」
「瑠璃羽、あんたとあたしで対決するんだよ。そうだね……3つ。3つの勝負をして、2勝した方が勝ち。簡単だろう?」
「やることはもう決めてんの?」
「それは勝負までに考える。あたしが決めるよ。3日後、それまでせいぜい夢でも見ておくんだね」
そう言うと、麻弥は新たにタバコを咥え、取り巻きたちと共に去っていった。残された瑠璃羽には、亜里沙や佳世、玲奈が寄り添った。
「瑠璃羽さん、勝負なんて本当に大丈夫なの?」
「麻弥さんのことだし、どんな勝負を持ち掛けられるか」
「きっと自分に有利なことをするに決まってる!」
勝負の内容を予想してやいのやいのと盛り上がるメンバーたちと同じく、瑠璃羽も一抹の不安を感じていた。麻弥が持ってくる勝負の内容とはどのようなものなのか。果たして自分は勝つことができるのか。もし負けたら?自分は?着いてきてくれたメンバーたちはどうなる?
その日の夜、瑠璃羽は一睡もせずに翌日の朝を迎えた。




