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人間飼育場

 小屋の中には異様な光景が広がっていた。


 広い空間に、檻がいくつも置かれており、その中には何十人もの裸の人間が押し込まれていた。


 檻にはそれぞれ、[男・低][男・並][男・高]「女・低][女・並][女・高]と書かれたプレートがつけられている。これがどのような意味を持つのかは不明だが、少なくとも愉快なものでないのだけは確かだ。


 檻の中にいる人々は、瑠璃羽が入ってきたのを見ると一斉に身を寄せて固まった。そして口々に懇願し始めた。


「ごめんなさい……許してください……」


「まだ、まだ……」


「死にたくない……死にたくない……」


 ここを管理している者は余程彼等を酷い目に遭わせているのだろうか。その怯え方は尋常ではなかった。


 身を寄せたことで檻の中にスペースが生まれ、それによってあるものが瑠璃羽の目に留まった。


 それはペット用のケージに取り付けるような給水器と給餌器だ。小さなものが互い違いに設置されていた。


 それを見たことで、瑠璃羽の頭に、この小屋は人間の飼育場なのではないかという考えが過ぎった。その用途は不明だが、人々の怯え方から最後には命を奪うものに変わりはない。


 瑠璃羽は居心地の悪さを感じたが、だからといってどうにかしようなどという考えには至らなかったし、第一、どうしようもなかった。今はただ、自分の身の安全のために、人々を落ち着かせるしかなかった。


「あの、大丈夫。よくわかんないけど、あたしは関係ない。何にもしない。だから騒がないで」


「嘘だ! 前にそう言って、何人か連れて行かれた。今日だってきっとそうなんだ」


「そうよ! 時々何人か連れ出されるのよ。それで帰ってこないの。連中は血の匂いがするのよ。きっと殺してるから帰ってこないんだわ!」


「今日は誰が連れて行かれるんだ……もうやめてくれ……」


 人々は、完全に正気を失っていた。瑠璃羽にはもうどうしようもなく、黙ってその場に立ち尽くした。


 その時だった。


「きゃあぁぁぁぁぁーーっ!!」


 1人の女が悲鳴を上げた。人々は瑠璃羽を見た時よりも恐ろしい、酷く怯えた表情を浮かべており、以前よりより固く身を寄せ合っていた。


 悲鳴と、過度に怯えた様子の人々に驚いた瑠璃羽は、その目線の先、自身の背後を振り返った。


 そこには、マスクで顔を隠した小さな少女。百香よりも年下だろうか、それほど小さな少女が、帳面を持って立っていた。


「………………」


 少女は何も言わず、今入ってきた出入り口の隣にあるボタンを押した。


 その様子を見て、瑠璃羽は様々な考えを巡らせた。


 今のボタンは何の意味があるのだろう、呼び出しか、警報か、それとも他の何かか、また追われるのか、今度こそ自分は終わりなのか、この少女くらいなら押し退けて逃げられる、でもその先はどうする、交渉すべきか、逃げるべきか


 ぐるぐると巡る、まとまらない思考に、瑠璃羽は冷や汗が止まらなくなった。その様子を見た少女は、持っていた帳面に何事かを書き出した。


『何もしない。話を聞く』


 少女はそう書いた帳面を瑠璃羽に見せた。わざわざそうしたのは、騒がしいからなのか、それとも話せないのか。どちらかはわからなかった。


 少女は瑠璃羽が帳面を視認したのを確認すると、出入り口から離れ、その近くにある椅子に腰を下ろした。その様子に、焦りは全く見られない。


 何もしない。それを信用して良いのか。しかし、逃がさないつもりであれば出入り口を離れるのもおかしい。少女が離れたのは、敵意がないことを少しでも示そうとしたのではないか。


 そう考えた瑠璃羽も、少女に応えるようにその場に腰を下ろした。


 未だ、周囲は騒がしかったが、瑠璃羽には、もう悲鳴だの、許しを乞う声だの、そんなものは聞こえていなかった。ただ目の前にいる少女と、おそらくこれから現れるのであろう何かにだけ、神経を研ぎ澄ませていた。

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