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4.少女の定着

 少女と別れて、数刻の時間が経ったが俺の気分は晴れないままだった。

 少女の顔に滴っている涙が脳裏に焼き付いていた。昨日までは一人でいても何も気にならなかったのに。

 いや、まさか人肌がさみしいというわけではない。ただあの風変わりな少女の行く末が気になった。ただそれだけだ。

 

 いつまでも気にしていたって意味がないので気分を変えて数学の参考書を開いて勉強を始める。学校に行ってないため時間はたっぷりとある。授業は受けてないが自分のペースでやっていくのが好きなので問題はない。せめて学校の進度に遅れないよう勉強しているのはいつでも戻れるようになのかもしれない。


 そうして数式をルーズリーフへと書き込んでいるとまたもやインターホンがなる。


 何も頼んだ記憶はない。来るとしたら勧誘や集金だけだ。家にはテレビなんかないぞと息巻いてドアを開けるとそこには誰もいなかった。


 ドアから顔を出して周りを見渡すも本当に誰も見当たらない。一本道なので隠れるような場所はない。イヤホンの故障かと思いドアを閉じ振り向くと、そこにはいるはずの無い少女、先程警察官へと引き渡した少女が眉をあげ、怒ったような表情で突っ立っていた。


「え!?お前……どうしてここに?」


 問いかけるも当然答えはない。さっきの警察官が杜撰な仕事をして少女を放り出したのかと思い、非難するため電話しようと携帯を取る。だがそこで俺は信じられないものを見た。というより()()()()()


 少女の特徴的な紫がかった髪。それを確かに視界にとらえながら携帯に110を打ち込んでいたのだがその瞬間、少女が消えた。ふっと風が通り過ぎるのと同じくらいの自然さでまるで存在しなかったかのようにいなくなったのだ。


 目を丸くして打つのをやめると少女がまた現れる。携帯を取るとまた消える、現れる、消える、現れる……


「魔法使い!?」


 これはとんでもないものを見てしまった。近くにカメラが構えていてドッキリ大成功の看板を持っていた方が信用できるほどだ。

 テレビは流石に無断で人の家に侵入することはない。つまり本物の魔法使い、いや魔法少女というべきか?


「それを使って逃げ出してきたんだな?」


 聞くと少女は頷く。

 ふむ……なんとなく思っていたが出身がこの世界ではないのは確定だ。髪の色も顔もあまり見ない感じだし、なにかの事情でこちらの世界に来てしまったということだろうか。

 ならば住む場所もないだろう。お金も持っていない。このまま俺の手を離れてちゃんとしたところに預かってもらうのがいいとは思うが信頼できるかもわからない。


「なんでここに戻ってきたんだ?」


 すると少女はどことこと走ってカップ麺を持ち見せてくる。


「カップ麺をまた食べたかったってことか?」


 また頷く少女。

 急にこいつが可哀想に思えてきた。こんな簡単さだけが取り柄の不健康食品で喜ぶなんて……

 今度料理でも作ってやろう。


 正直この家に暮らしてもらっても俺にとってはデメリットはほぼない。親からもらっている金は一人増えたところで問題はないほどだ。

 それに一番は魔法に俺が興味を引き立てられている、ということだ。


 「じゃあ問題はない、か」


 そうして少しの間、少女が自立できるまで預かる、という形で一緒に暮らしていくことになった。


 だが俺が抱いていた魔法を使えるようになるんじゃないかという思いはすぐに挫折した。少女が消えるのをもう一回やってもらい、その真似をしても体は消えないし透明マントは出てこない。気長にやることにした。

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