幼い勇者は愛で敵を倒す
ある国には悪い者たちを倒す勇者がいました。
神託により勇者と決められた彼は、物心つく前から正義のためにその力を使い続けていました。
ある時、勇者は悪い者を国に渡す前に聞いてみることにしました。
「あなたたちはなぜこのようなことをしたのですか?」
正義のために生きてきた勇者はどうしても理解できなかったのです。
一人は悪態をつき、もう一人は顔を背け無視をする中、大人しくしていた最後の一人が語りました。
「俺たちのような奴はみんな貧民街出身なんだ。
どれだけ努力したとしてもまともな職にもありつけないことがほとんどだ。
子供の頃から飢え死にしないように盗みをやる奴も多いし、どうにか周りに染まらず一生懸命生きていた奴も世間の厳しさを味わうと犯罪に手を染めるのさ。」
どこか苦しげな顔で教えてくれた男に勇者がお礼を言うと男は「期待してるよ」と少し口角を上げました。
それは勇者にとっては印象的な出来事でありました。
恵まれた家に生まれた幼い勇者はまだまだ知らないことがたくさんある事を知りました。
勇者は悪い者を倒し、弱い者を助ける存在。
しかし、悪い者も元々は弱い者だったとしたら...。
勇者の中で守るべき者と正反対であり、白に反抗する黒のような存在だっだ彼らは元々救うべき存在だったかもしれません。
もちろん、悪いことをした者には裁きを受ける必要があり、全てを赦すことは正しいとは言えないと思います。
しかし、これから悪に染まるであろう貧しい者や染まりかけている者、反省し二度とやらないと誓った者は助けるべきだと勇者は考えました。
それからすぐに勇者は行動に移しました。
貧民街を訪れて食料を配り、また身なりを整えさせ清潔感を出すよう道具を与え、方法も教えました。
安定した食料配給や生活保障のおかげで犯罪件数が減り、貧民街への信頼が上がった結果、徐々に仕事の斡旋もできるようになりました。
一連の動きに感化された人々が少しずつ偏見を無くしてくれたおかげでもありました。
◇
それから五年、十才になった勇者は言います。
「幼い僕を信じて協力してくれたみんなに感謝しています。
これからも穏やかで安定した国になるよう、尽力していきたいです」
と。
その傍には共に活動する仲間たちがいました。
貴族出身の者もいれば、旧貧民街出身者もいます。
自己犠牲だと言われることもたまにありますが、家族が応援してくれて、差し入れの甘いお菓子を食べられる日常は勇者にとっては幸せなのでした。
愛する国民みんなが幸せに暮らしていけるのはとても素晴らしい事なのです。
勇者は愛で敵を味方にしましたとさ。おしまい。
深夜テンションで善と悪について考えて書きました。
綺麗事も混ざってると思いますが、愛情や思いやりって偉大だなーってことです。
無理に矯正できるものではないので、自然と善に近づける方が得策なのではないか、と。
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