表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたの幻(イリュージョン)を追いかけて  作者: 須賀マサキ
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

94/113

第三話 狙われたアイドル(十九)

「それなら心配することはありません。梢ちゃんは森下さんが思っているより、ずっと芯の強い女性です。多少のフェイク報道くらいでは負けません。

 それにあの子の実力は本物です。一時的に何かあっても、すぐに復活します」


 どれだけ嫌がらせを受けても、カメラの前では平常心を保って仕事を続ける梢の姿を思い出す。辛い気持ちを吐き出しさえすれば、いくらでも立ち直り、また戦場に出ていく力強さを。

 ワタルはその姿を、幾度いくどまぶしく感じた。


「それよりもおれが心配してるのは、別の問題です」


「北島さんの恋人ですね。彼らに突き止められたら、略奪愛だと言われて、梢のイメージがさらに落ちてしまう。それだけは絶対に避けなくては」


「さすがにそうなると、高校生の梢ちゃんにはきついでしょう。おれの彼女も一般人だから乗り切れるかどうか。

 名前が報道されなくても、身近な人には解ってしまう可能性もあります」


 これまで秘密にしていただけに、バレればちょっとした騒ぎになるだろう。

 沙樹のいるFMシーサイド・ステーションではレギュラー番組も持っているから、しばらくは仕事がやりにくくなる。

 こんな状況で沙樹とコンタクトすれば、ぎつけられてしまうのは時間の問題か。

 いつどこでだれが見ているか解らない。日下部の判断は正しい。


「恋人の存在が前にいた事務所に知られることだけは、絶対に避けなくてはなりません。名前や職業が知られれば、それをもとに梢をつぶしにきます」


 カップを持つ森下の手は、小刻みに震えていた。


「熱愛が純愛のうちは、何とかなります。反感を持つファンもいれば、暖かく迎えて応援してくれるファンもいます。

 でもこれが不倫や略奪愛になれば、北島さんも梢も、ネットで叩かれるのは間違いありません。これがきっかけで梢の命取りになってしまう。

 あの子はまだ、これからだというのに……」


 梢の将来と、沙樹の平穏。ワタルが行動を間違えば、どちらも壊してしまう。


「ならばすぐにでも行動した方がよさそうですね。これで失礼します。落ち着いたら連絡すると、梢ちゃんにも伝えてください」


 そう言い残し、ワタルは森下の部屋をあとにした。



 ワタルは急いで家に帰り、身支度をすると車に乗り込む。駐車場を出たところで、芸能ニュースでよく見るレポーターが、マンションのインターフォン前に立っているのを目撃した。

 間一髪。あと五分遅ければ、部屋で居留守をしたまま一歩も出られなかった。

 幸いなことに、取材スタッフはワタルの車に気づかなかった。行く当てもないままに車を走らせる。


 どこに行けばいい? 沙樹のところはもちろんダメだ。実家も知られているだろう。バンドメンバーのところも同じだ。


 みんなに知られていない場所はどこにある? 安心していられるところは。


 そう考えたとき、ある場所が浮かんだ。

 昔から何度も訪れたところ。

 懐かしい人たちが住むあの土地。


「そうだな。ちょっと遠いけれど、そこならだれも気づかないはずだ」


 行先は決まった。ワタルは一番近くにある、高速道路の入り口まで車を走らせた。



以上で第三章第三話「狙われたアイドル」は終わりです。

次回より第四章第一話「光と影の世界」に入ります。

気に入っていただけたら、評価・いいね・感想・レビューをお願いします。


お話はまだ続きますので、ぜひお読みくださいね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ