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第八十三話 マスカール村へ

 港町サングラードを出発してから三日が過ぎ、いよいよ目的地であるマスカール村にもう少しで到着するという距離でアーリアは小高い丘の上で野営をする事を提案してきた。


「もうすぐじゃないか、このままもっと村が見える場所に行かなくていいのか」

「嫌よ、もうすぐ夜になるじゃない。暗闇の中でグールなんかを見たくないわよ」


 此処迄の間に幾度となく魔獣を退けたアーリアとは思えない言葉だったが。少しは女の子らしい所も残っているらしい。


 ただ一つの不安としては管理者から話を聞いたときより時間が過ぎてしまっているので、どんな状況になっているのかは気になってしまうが、はやる気持ちを抑えるしかない。


「パ~パッパラ~」


 見張りをしていると突然頭の中に大音量の音が鳴り響いた。


『これなら文句は無いだろうね、あの男の事なんだけどさ。あそこの村はもう全滅だけど、まだ他には手を出していないな、それよりネクロマンサーとしての能力を上げるために訓練しているよ』


『あのさ、私が言い出した事なんだけどやはり音は止めて欲しいな、いきなり大音量が流れたおかげで心臓が痛くなってしまうからさ』


『あ~そうかい、全く君は我儘だね、あっそうだ、君らの下を数体のグールが通過するから見てごらんよ』


 言われて直ぐに下を覗くが、月明かりが弱いのでグールの姿を確認する事が出来ないが、目に魔力を集めると昼間とあまり変わらないようになってきた。


(お~良く見えるのは良いけど、結構疲れるよな……でっグールは何処かな……あぁあれね)


 脚を引きずるようにしながらゆっくりと歩いているグールはかなり腐敗が進んでいる死体を使用しているらしく、身体の半分は骨がむき出して、残っている肉体もかなり腐敗している。


 いつ吐き気が襲って来てもおかしくはないと思ったが、リシオの記憶に中にはもっと状態の悪いグールを見ているのでこの場で吐く事はなさそうだ。


左手を前に構え【混沌の弓】を呼び出すとそのまま光の矢を出現させる。


 暗闇に中で光に矢は目立つ存在なので魔獣なら逃げ出してしまうだろが、下を歩いているグールは自分の頭で考える事は出来ないらしく周囲を警戒する事すらしない。


「さて、試してみようかな」


 音もなく矢が飛んで行くと、グールの頭部にぽっかりと穴が開いて、声を出さないどころか痛みや恐怖すら感じていないグールは、その歩みと止めないまま光に包まれ消失していった。


(凄いな、やはり勇者の魔法は相性が良いんだな、だから儂は勇者と戦いたくなかったんだ)


「…………? おいおい記憶が混乱しているじゃないか」


 少しだけグールが可哀そうに思えてしまったせいでリシオの記憶が一気に流れ込んできたみたいだ。

 これに関しては管理者が全て悪い。勝手に私を実験材料にしてリシオの中に入れるからこんなことになってしまうんだ。


「ぐぅがが、いってぇ~」

 

 いきなり何が原因か分からないが激しい頭痛が襲ってきた。頭全体が脈を打っているようでどうしていいか分からない。


「いやっ、リプレイ」


 どいうして良いか分からず思わず【リプレイ】をしてしまったが、やはり五分後には頭痛が襲ってきた。

 しかし、あらかた予想をしていたので必死に歯を食いしばってアーリア達を起こさないようにする。


 幸せそうに眠っているアーリアとムックの姿を見ている内に頭痛は少しずつ治まってきた。


(何が原因なんだ。この世界の医療は遅れているから意味無いしな……はぁどうしよう)


 不安を感じながら見張りを続けていると、時間が過ぎてしまい、いつの間にか外が明るくなってきて、アーリアも自然に目を覚ました。


「んっどうしたのよ、まさか寝落ちしたんじゃないでしょうね」

「違うよ、ちょっと考え事をしていただけだよ」


 

 ◇



 何の音もしないマスカール村は、魔獣の心配があるのか、村を囲んである柵は斜めに突き刺さっていてその一本一本が尖っている。

 

「やはり普通の村じゃないんだね」

「そうだな、朝なのに誰もいないもんな」


『ご主人様、家の中にかなりに数の出来損ないがいますよ、どうやらネクロマンサーとしてはまだまだですね』


 村の中にどうやって入ろうか様子を見ていると、村の中から外に向かって三体のグールが歩きだしている。


「あの動き方はちょっと変だよね、ネクロマンサーによって支配されている動きとは違うかな」

「んっどういう事だ」

「ちょっと見てくるからあんたの剣を貸してよ」


 アーリアは勝手に私の剣を抜き取るとグールに向かって走り出していく。

 

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