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第八十一話 入国

 船に乗ってアイゾール国を出航し、いくつかの港町を経由した後でいよいよチャタル共和国へと入って行く。


「直通じゃないからかなり時間がかかったな」

「帝国を出てからまだ10日だよ、これから陸路になるんだからもっと時間が掛かるんだからね」


 海に面している部分があまりない共和国ではこれから到着する港が最大の港であると同時に唯一の港でもある。


 グラッパ王国は数年前から人の出入りをかなり厳しくしてしまったので、国民でもない私が入れるような港も関所も存在しない。


 そうなると私が王国に入る為には抜け道から勝手に侵入するしか無くなった。


「アーリアははよく帝国にやって来れたよな、出るのは簡単なのか?」

「数年前は帝国民は比較的に緩かったんだよ、今は出入は厳しくなっているみたいだね」


 数年前とは正確には何時から何だろう。どう考えてもアーリアは10代の頃に帝国から出たと思うので、その行動力は私には無いものだ。


『ご主人様、あやつらはどうするのですか? ずっとこちらの様子を伺っているので煩わしくて仕方が無いんですが』


「う~ん、そうなんだけどな」


「何、何々、またムックと会話しているでしょ、私にも聞かせてよ」


「そんな大したことじゃないんだけど、船の端からこっちを見ているあいつらの事だよ」


 あいつらとはラグドールを巡ってもめたのだが、仲間とも上手くいかなくなってしまったらしく俺達とどうしてもパーティを組みたいようだ。


「あぁあいつらね、あんな事が無かったらちゃんと考えたかも知れないけど、仲間にはしたくないなぁ」


「そうなんだよな、それにさあいつらB級だって言うんだぜ、あの弱さで意味が分からないよ」


「アイゾール国は平和な国だからね、ギルドも簡単に昇格させるんじゃないの? そもそもC級よりB級の冒険者の方が多いなんて他の国では考えられないよ」


 どんなに考えてもあの二人は俺達を利用しようとしているとしか思えない。



 ◇



 チャタル共和国の唯一の港であるサンクグラードはどの世界を生きた私でも見たことが無い程の広さを持っているし、船の大きさによって係留する場所が決められているなど、ちゃんとした管理をされている。


「この街を抜けたら暫くは海の物は食べられなくなるか~、だったら出る前にたくさん食べないとね」

『この娘の意見に同感しますな』


 人をかき分けながら我先に降りていくアーリアの頭の上には子犬の姿をしたムックがちゃっかり乗っている。


(文句は多いけどムックはアーリアが好きなんだよな)


 街に入る前に検問で並んでいると、とうとうあの二人組が話し掛けに来た。


「あのさ、俺達はこの国に詳しいんだよな、だから一緒にいた方が良いんじゃないかと思ってさ」

「結構です。それなりにこの国の事は調べたし、そもそもこの国には長くいるつもりは無いんでね」


 弱いし信用できないというのも理由の中に入っているが、私が彼等を仲間にしない一番の理由は彼等が何度も食い殺された光景を思い出してしまうのでそれが嫌だからだ。


 別に今は生きているのだから気にしなければ良いと思うが、どうやら私の脳裏の中でトラウマとして記憶してしまったらしい。


「それじゃまた他の国に行くのかよ、此処からだとグラッパ王国か、もしかして魔国じゃないよな」

「そりゃないででしょ、俺達が魔国に入ったら数分で死んでしまいますぜ」

「………………」


 もう彼等には何も言わない事にした。トラウマを除外したとしても彼等と一緒に行動してしまうと負担だけが大きくなる。


 受付を終えるまでしつこく話し掛けて来たが何も反応をしないのを見て、とうとう二人で街の中に消えて行ってくれた。

 ただ、何度も何度も振り返って止めてくれる声を待ったいたようだが、それでも視線を送ったりはしない。


『中々渋い事をしているじゃないか、それでさ、もうひとつお願いしていいかな』


 管理者か、いきなり声を掛けて来ないで欲しいんだけどな。


『あのさ、だったらどうすればいいんだい。あの場所に連れて行ったらどうせまた文句を言うくせにさ』


 そうだけど、現れる前に音が出るとか、ちゃんと姿を現して話し掛けるとか、考えればいくらでもあるだろう。


『ちっ面倒だな、まぁ考えておくよ、それより此処から北西にあるマスカール村に行ってそこにいるネクロマンサーをどうにかして欲しいんだよね』


『はぁ? そいつが何をしたか知らないけど、この国の兵士か冒険者に頼んだらいけないのか』


『いやぁそれがさ、そいつは君と似たような転生者なんだよね、ただその男はこの世界を支配しようとしているから考え方は違うんだけどね』


 ……俺と同じ転生者だと。

 ……私には関係ないんじゃないか。

 ……何で戦わなくちゃいけないんだよ。

 ……もう何かやったのかな。

 ……好戦的な転生者と会いたくないんだけどな。

 ……私には無理でしょ。


『おいおい、いきなり諦めないでくれよ、死者ばかりが住む世界に君は生きたいのかい』


 性格もちゃんと確かめないでそんな奴に変な能力をあげるからいけないんだ。それにそいつをどうにかしたいのならその能力を奪えばそれで終わりだと思う。


『それがさ、そいつを転生したのは僕じゃ無いから手を出せないんだよね、力を与えた管理者はそんな世界があっても良いなんて言うからどうしようもないんだ』


 ちょっと待てよ、そうなるとこの世界には管理者は一人では無いと言う事なのか。



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