第七十九話 奴らは意地でも取り返そうとする
二人の内の一人が目の前のカウンターを思いきり叩き、今にも食いついてきそうな目で私を睨みつけてくる。
(誰だっけな? 何処かで見たような気がするんだけど……あ~何度も食い殺された奴か、まぁ生きてはいるんだけどね)
「何事だね、君達は随分と彼に不満があるようだが」
「あぁそうだよ、こいつが獲物を横取りしたんだからな、俺達はラグドールに毒矢を撃ち込んだんだ。時間がたって死んだ後でこいつが奪ったんだぜ」
よくもそんな事が言えたものだと呆れかえってしまうが、そうなってしまうと言ったもの勝ちになりそうだ。
「毒が効いていないからあんなに早く動けたんじゃないのか」
「だから効くまでに時間が掛かるんだよ」
その男は職員を納得させるかのようにゆっくりと話し出した。
「あの、おいらはこのラグドールに毒を塗ったメイスで後ろから斬りかかったんだよ、そりゃ皮膚に弾かれて最初は効かなかったのだろうけど、時間が立てば浸透するようになっているんですぜ」
そう言われてしまうと、その可能性も考えられるが、ラグドールに肉は全てムックが食べてしまった。
『そうだよ、ムックはお腹は大丈夫なのか?』
『ご主人様、あの肉には毒の味などしませんでしたよ、その頭の悪そうな男の攻撃は傷一つ付ける事が出来なかったんでしょうな、ですから殺せる訳がない』
アーリアに抱かれているムックは眠そうな顔をしながら教えてくれるが、それを私は上手く伝えなくてはいけない。
「悪いんだけどさ、あんな風な逃げ方をしていた君達にランスの攻撃が届いたとは思えない」
「そんな訳ないさ、確実当てたんだから、それに毒が効いたからあいつは逃げたんだろう、だからこのラグドールは返して貰うしその肉を撃った金も返して貰うからな」
ムックの意見を代弁したところで信じては貰えないだろうし、そうなるとやはり不利になってしまう。こうなるのが嫌だから声を掛けたというのに、この国の冒険者はモラルが無いのか。
「君達、こんな場所で争うのは止めなさい。それになこのラグドールを倒すほどの腕前ならそんじょそこらの実力じゃないはずだろ、だったら君達で戦って勝った方がこのラグドールの正式な持ち主にしようじゃないか」
この老人は随分と思い切った事を提案してくるが、まぁパターンを読めば良いだけだから何とかなるだろう。
「本当にそれでいいんだな、ギルド長が言い出した事なんだからどんな結果になろうとも覆すのは止めてくれよ」
(えっこんなにみすぼらしいのにギルド長なのかよ、こんなに薄汚くて冴えないのにな。
「……君っ君っ、何をボーッとしているんだね。君の事なんだが、どうするんだ」
「あぁそれでしたらやりますよ」
「おいっ本当にいいのか、こっちは俺達が相手にするんだぞ」
「別にそれでいいよ」
それまで遠巻きにして見ていた野次馬が戦う事を決定したので一気に盛り上がり始めた。そしてこの二人を呼び寄せた男は不穏な笑みを浮かべているので何か秘策があるのかも知れない。
◇
ギルドの地下には、まるで野球が出来る位の大きな闘技場があるのだか、重機がないこの世界でどうやってこれが出来たのか不思議で感心してしまう。
私は【リプレイ】があるので意外と気楽に始まるのを待っていたが、いざ始まると俺の予想とは違っていた。
「それはおかしんじゃないか、何で二人じゃなくて四人もいるんだよ」
「ラグドールを攻撃をしたときは四人いたからだろ、それの何が問題なんだ」
四人相手となると【リプレイ】で行動パターンを覚えるのは面倒で仕方がない。そうなると別の力に頼らないといけなくなる、
「私もユウと同じパーティ何だから参加しても良いんだよね」
私が四人を相手にしなくてはいけなくなるとアーリアはムックを頭に乗せたまま出て来てくれたが、ギルド長が他の職員と頭を近づけて暫く話し合った後で、アーリアが参加出来ない事が決まった。
「君はあそこにいなかったそうじゃないか、だったら参加させる訳にはいかないな」
ギルド長はさも当たり前のように言ってくるが、どう考えても向こうとズブズブの様にしか思えない。何だかこの国が少し嫌いになってきた。
「ギルド長、俺達は別に構わんぞ」
「余計な事を言うなよ、何があるか分からないんだぞ」
向こうは向うで揉めているが四人で戦うつもりなのだとしたら私は容赦などしない。
「俺一人で良いよ、いいかな始めても」




