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第七十七話 ムックのエサ探し

「お~い、魔獣はいないか~。人間が此処にいるぞ~」


 獣が対象なら声を出しながら歩くなどそんな馬鹿な真似は出来ないが、魔獣ならこれをしても逃げ出すような相手じゃない。

 それどころか声の持ち主をエサだと認識する可能性が高いだろう。


 それにしても私がこんな変なテンションになってしまったのは全てあの事が原因だとは分かっている。

 本当ならば全てを正直に話してしまいたかったが、私でもまだはっきりと分かっていない話を信じるとは思えないし、それこそ馬鹿にした嘘だと思われてしまうだろう。


「くぅぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~」


(えっこの気味の悪い声はなんだよ)


 近くの倒木の影に隠れて様子を伺うと、変な叫び声を上げながら二人組の男達が目の前を通過して、その後方からやって来た全身が緑色の熊とゴリラが合わさったような獣が追いかけている。


 直ぐに男達は追いつかれ、一人の男はっそのまま踏みつぶされ、もう一人の男は振り返った途端に長くて太い爪によって身体を引き裂かれてしまった。


(初めて見るけど、どう考えても魔獣で良いんだよな……リプレイ)


 倒木の上に立ち。手には【混沌の弓】を構えて二人組が通り過ぎるのを待つ。


「まだかな、まだかな」

「くぅぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~」


 全く同じ叫び声を上げながら私の目の前を通過しようとしている。


「なぁ、君達を負っている魔獣は俺が倒しても良いかな」

「助けてくれ~」

「何を言うんだお前は、悪い事は言わねぇから逃げた方が良いぞ、ごぼっ」


 一人の大柄な青年は走りながら答えてくれたが、もう一人のすらっとした青年は方向を変えて俺の方に寄りながら答えてくれたので、前回よりも早く追いつかれ今度はその頭が魔獣の口の中にすっぽりと入ってしまった。


「うゎ~目の前で食べないでくれよ、えっこっちに来るのかよ」


 そのまま逃げて行った青年を追いかけてくれれば良かったのだが、魔獣の狙いは俺に変更したようだ。


 ただその魔獣の見た目は醜悪な姿をしているが、威圧感は水竜に比べると大人と子供ぐらいの差がある。

 それなりの経験を積んだせいなのか特に肩に力が入るような事はない。


「ぐごぉふぅ」


 息を吐きながら迫って来る魔獣に狙いを付けてゆっくりと指を放すと、正確に眉間の中央を貫いた矢は魔獣をこの世界から解放させた。


(倒したけど駄目だよな、リプレイ)


 戻ると同時に叫び声が聞こえ、目の前をあの二人が通過していく。本当だったらあの二人が私に助けを求めるまで手を出してしまうと後々揉める事になる可能性があるので倒しながら許可を取ろうと思う。


「この魔獣を倒すけどいいよな~」


 その言葉を言いながら同時に指を放す。矢は魔獣の左目から入って突き抜けて行った。


「んっまだ動くのか」


 もう死んでいると思ったが魔獣はゆっくりと私の方に向きを変えたのでもう一度狙いを付けてから指を放した。


 吸いこまれるように魔獣の眉間に入って行った矢は前と同じように突き抜けていく。

 残っている右目が反転した後でその巨大な体躯を地面に横たえた。


(こんなに大きな獲物ならムックも喜んでくれるだろうな)


 空間倉庫の中に魔獣の死体を入れると、魔力が削られて行くのを感じるが前ほどの疲労感は訪れない。それでも腰を落として少しだけ休むことにした。


(魔力が増えたのかな……気のせいだよな)


「なぁそこのお前、俺達を追いかけていたはずのラグドールの気配がしないんだが、奴は何処に向かったのか見たか?」


 足音も無く近寄って来たのはさっき迄逃げていた大柄の青年で、その様子に少しだけ警戒をしてしまう。


「おいっそんな聞き方はないだろ、もう少し優しく聞けよナランディ」


 その横にいるスラッとした青年は優しい笑顔を見せてはいるが、その目は決して笑っていない。


「分かったよ、それじゃ改めて聞くけど、ランドールの行方は知っているかな」

「そこにいるなら見ていたよね、俺達はどうしてもあれを倒したいんだよ」


 あんな無様な姿を見せてまだ討伐をしたいと思っているとは滑稽でしか無いが、此処でそんな事を言ってしまったら余計な揉め事を生んでしまうだけだ。


「俺が矢を放ったら向うの方に逃げて行ったけど、あれはラグドールっていう魔獣なのか」

「ただのラグドールじゃないぞ、あれはこの森の主なんだよ、前までは討伐対象では無かったんだがある時から人間を襲うようになってな、今ではこの辺りで最高額の賞金首さ」


 それだけ言うと二人は私が指差した方角に行ってしまったが、もし生きていたとしてもあの二人はどうやって倒すつもりなのかは謎のままだ。


 どれぐらいの報奨金が貰えるのか分からないが、それ程の獲物ならムックは元気になるに違いない。

 肉はムックに上げるが、残った骨はギルドに売ってしまう。


(いくらぐらいになるのか楽しみだ)

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