第七十五話 なんてこった
「ちょっと待ってくれよ、何で俺はD級なんだ。何かの間違いじゃないのか」
朝になりギルドに依頼達成の報告に行くと確実にC級になると思っていたがまさかの展開になってしまっている。
ギルドの中はかなり賑わっていたが、そんな周りの目を気にする気もなく若い受付嬢に怒鳴ってしまったので直ぐに別室に連れて行かれ、小太りの中年女性に変わり私の対応をすることになった。
「ちゃんと依頼を理解しているんですか? 獣人族の子供の護衛は当たり前ですけど他の方達の護衛も含まれているんですよ」
「だ・か・ら・俺はちゃんと護衛したでしょうが、騎馬隊隊長のサインの入った手紙にも書いてありますよね、水竜も倒したんですよ。それなのにD級だし依頼料だって半額にされるなんてあんまりじゃないですか」
この俺でさえこれだけ怒っているのだからアーリアはとっくに暴れ出したので、ムックに外に連れて行って貰った。
「まぁ水竜を倒したことは船員から話は聞いているんだがな」
いきなり部屋に入ってきた男は顔中が傷だらけで雰囲気がかなり怖い。
「それだったら水竜の討伐料を寄越さないのはおかしいんじゃないですか、竜種ですよ」
「お前さぁ、何で部位を持ってこないんだよ、鱗の一枚でもかなりの金額になるのに手ぶらはないだろ、それにな討伐だってお前が金貨でも握らして船員に嘘をつかせたかもしれないだろ、他にもあるぞ、どんな理由だろうともファーウス子爵や憲兵は帰って来ていないじゃないか、分かるか? 依頼は失敗しているんだよ。だがな特別にこの手紙があるから妥協してやっているんだ。有難く思いやがれ」
話している内に興奮してきたのか机を叩きながら恫喝してくるのでいくら私でも委縮してしまうが、ここで引き下がる訳にはいかない。
「そんな脅しには乗らないですよ、もういいです。責任者を呼んで下さいよ、この事も含めて報告させてもらうからな」
こんな脅しをした事伝えればこの男の評価は下がるだろう。それが嫌ならせめて全額寄越すか、C級にして貰いたい。
「その必要はない。儂が此処の責任者だからな、ちなみにこの辺りのギルド長をまとめているのも儂だ。お前がどこで何を騒ごうがこの決定は覆らないのさ」
(ずるいぞ、ギルド長だったらもっとましな恰好をしろって言うんだよ、そんなみすぼらしい恰好をしているから窓際族の偏屈野郎だと思ったじゃないか)
「もう宜しいでしょうか、これ以上ギルドの決定の逆らうようでしたら資格停止処分を出さなければいけなくなりますが、どうなさいましょう」
小太りの女性はギルド長の援護が入ったので随分と強気で出てきたようだ。こうなったら私が行うのは一つしかない。
「失礼いたしました。全て喜んで受け入れますよ、それでついでなんですが短期で割のいい仕事を紹介して欲しいのですが」
帝国からの報酬はペスコの街に行かなくてはならないので、今回の事でゴタゴタしているであろうあの街には近づきたくない。
騎馬隊が一緒だったら話は違うが、今は行かない方が無難だと思う。それに帝国は報酬を踏み倒したりしないはずだ。
だから俺はプライドと言う物を捨てて利益を取らなければいけない。私の中の一部の者はこの行動に嫌悪感を感じているみたいだがそんな子供じみた事を言っている場合じゃない。
グラッパ王国に行くまでの旅費は今のままだと不安でしか無いからだ。
◇
「あんたねぇ、それにしてもそんな面倒な依頼を受けて来ないでよ」
「仕方が無いだろ、こっちはそんなにお金に余裕が無いんだからな、それにさD級なのに今回はC級の依頼から仕事をくれたんだぜ」
討伐とちょっとしたお使いの仕事だから楽な仕事だと思って報告したが、アーリアはあからさまに嫌そうな顔をしている。
「そこまでして依頼をしなくても良いじゃない。片道なら今の資金で余裕で行けるでしょ、向こうのギルドで仕事をすれば良かったじゃない。向うにもギルドがあるんだからさ」
「そうだけどさ…………」
そんな事は言われなくても分かっている。ただ戦闘国家と呼ばれているグラッパでの依頼など嫌な予感しかしない。
悪いけど今回の人生はそう簡単には死にたくない。ただでさえ誰かの手助けをその国でしなければいけないというのにこれ以上危険は冒したくない。
◇
私が往復の旅費を稼いでいる間はアーリアとはほぼ別行動だったので、このまま別れてしまっても良いと思ったが私の準備が整った事を知るとこれからの予定を立ててくれた。
一つ残念な事はペスコの街の新たな領主から食事会の案内とその時に報酬を渡すとの連絡が来たが、もう私の意識は王国に向いてしまっているので代理としてオスカリにお願いをすることにした。
「さて、それでは行きますか」
『ご主人様、遠慮なく私の背中にお乗りください』
「いい、楽な旅じゃないからね、覚悟するんだよ」
いよいよグラッパ王国へ向けて出発する事になる。




