SIDE2 ストレス発散
(馬鹿じゃないかしら、本当に私が信じたと思っているんだろうね)
アーリアは無邪気にムックとじゃれているシューヤに冷たい視線を送っているが、その事に全く気が付いていない。
(もう少し行動すれば秘密が分かるかな? それによっては…………)
始めは【混沌の弓】を見た時あんな魔道具は見たことが無く、それがただの田舎者が持てるわけがないと思ったからだ。どんな人物か気になり接近をしている内に別の感情も芽生え始めて入るのだがまだ本人も気が付いていない。
それでもアーリアはシューヤを見ながら今までの疑問を頭の中で整理してみた。
1、あの弓は誰の物なのだろうか。
2、何であんなに多くの魔法を知っているのだろうか。
3、魔力は多いが、それにしては自分の限界を知らな過ぎる。
4、どんな魔法使いから教わったのだろうか。
5、まさか独学だと言う事はないとは思うのだが。
6、性格が変化するのは何故なのだろうか。
7、もしかしたら魔族なのだろうか。
8、魔道具も碌に使えないのにどうやって連絡を取ったのだろうか。
9、あの国に行く本当の理由はなんだろうか。
10、どうしてハイエルフなど子供でもつかないような嘘をついたのだろうか。
(あ~考えればきりがないよ、こんな怪しい男とは早く別れればいいんだけど、どうしても気になってしまうんだよね、それに普通に働くより金を貰えるから得なんだよ、今回もオスカリから頼まれているから一応これも仕事だし)
◇
帰り道の海は平和そのもので、すっかりと夜になってしまったがエライサに到着する事が出来た。
こんな時間だと宿屋を探すのも厄介だが、オスカリの計らいでルカメヤ商会の寮でその日は泊まる事になっている。
「クヌートがここに住んでいるそうだから会いに行こうぜ」
「私はいいわよ、たまには一人になりたいの」
「そうか、それならムックを連れて行くか、良い番犬になるぞ」
「あのねぇ犬と一緒なら店を探すのが面倒でしょ」
ムックはアーリアの言動に反抗して声をあげているが、普通に聞こえる声は可愛らしい声のままだ。
『この小娘が、私を只の犬扱いするなんて、こやつを懲らしめてもよろしいでしょうか』
『ごめんな、頼むから我慢してくれ』
(ふんっそう言えばもう一つ秘密があったわ、あんたはムックと会話しているんでしょうね)
気になる事を調べるだけでお金を貰えるのだからいいはずだとは思うが、今のこの状況はのけ者にされているようでムカついてしまう。
少し気持ちを落ち着けるためにもアーリアは寮を出て、裏通りにある古びた飲み屋の中に入って久しぶりに一人で酒を飲み始めた。
「よう、お姉ちゃんは一人なのかい。そんな寂しい事はしていないでこっちにきて一緒に飲まないか」
声を掛けてきたのは冒険者の様ではなく、黒光りした体を見せびらかすかのように上半身裸で飲んでいる連中なので、船員か港の作業員のどちらかだろう。
「誰があんた等みたいに汚い連中と飲まなくちゃいけないのよ、いいからあっちに行ってよ」
「随分と生意気な姉ちゃんだな、そんな恰好をしているって事は誘っているんだろ、いいから俺達と飲もうぜ」
(いい加減にしてくれないかな、面倒だから早く手を出してくれたら簡単に対処してあげるのに)
アーリアは腰の剣を抜こうと一度は思ったが、相手は武器を持っていないので此方から攻撃をする訳には行かないと思っている。
せめて掴み掛ってきたら抜いても問題はないのだが。
アーリアの前の席に座り、ただ飲もうと絡んできている男に対して嫌味を言う事しかできないので額に浮かんだ血管が切れそうになってきた。
その時間がどれぐらい過ぎたのか分からないが、しびれを切らした男の仲間が千鳥足で寄ってくる。
「その辺にしとけよザーギ、その姉ちゃんは冒険者なんだろ、可愛いのは見かけだけに決まっているだろう、なぁ姉ちゃん、お詫びに酒を奢ってやるよ」
にやけながら近づいてきたその男は手にした酒をそのまま逆さまにしてアーリアの頭の上にぶちまけた。
そいつが冷静であったのなら自分は素手で、アーリアは可愛らしい女性とは言え冒険者でしかも武器を持っているのだからそんな真似はしないはずなのだが、その男はなかなかいう事を聞かないアーリアにかなり不満を持っていたようだ。
「良くもやってくれたわね」
鞘から剣は抜かず、そのままその男の腕に剣を振り下ろしてその腕を砕き、そのまま跳ね上げるようにして顎の骨を砕いて行く。
ザーギと呼ばれた男に対しても脳天に剣を振り下ろして意識を刈り取った。
ついさっき迄は冷静だったアーリアは怒りに身を包まれたまま二人の男を交互に蹴り上げていく。
衛兵が駆けつけた頃にはアーリアは姿を消し、そこには全身の骨を砕かれた酔っ払いが転がっていた。
(あ~少しはスッキリしたかな、そういえば最近は剣を抜く機会が無かったからな、ったく戦争に参加したのに何もしていないなんてどうかしているよ)




