第七十四話 これから
「ちょっと、いきなり何を言い出しているのよ、あんたからその名が出るとはね」
「えっどうしてだよ、何か変な事なのか」
「あのな、本当に君は知らないのか……」
その国は戦闘国家である。
その国は他国との交流は最低限のみしかしていない。
その国の魔道具は独自の進化をしている。
その国は何故か魔国と休戦を一度もしていない。
その国は勇者殺しの国と呼ばれている。
かなり特殊な国のようだがその中で一番気になったのは【勇者殺し】と言う事だ。
「あの、本当に勇者を殺したのですか」
「帰って来ない勇者がいたことは事実だが、グラッパ王国は国に入った事すら認めていないので事実は分から無いし、その同じ時期にグラッパ王国の国王が亡くなってしまったのでそれ以上の事は有耶無耶になってしまった」
勇者の条件は国によってまちまちだが、ただ一つ言えるのは国の中で一番強く、単身でも魔族の大軍と対等に戦える男だと言う事だ。
いくらグラッパ王国が戦闘国家とはいえ、簡単にはやられたりはしないだろう。
「どうしてちゃんと追求しなかったのですか」
「良く分からんが魔族に国王を殺されたらしくて国中が殺気立っていたそうでそれ以上は取り合ってくれなかったようなんだ。それにな、なにせ戦闘国家だからな、ちゃんとした証拠が出ない限りそれ以上は追及はしたくなかったんだろう」
随分と他の国は弱気だと思うが、私自身の勇者の記憶からだと、中にはろくでもない勇者もいたのでいろんな国で疎まれていた勇者なのかも知れない。それだから本気で調べる事をしなかったのだろう。
「まさか国王と勇者の相打ちだったりして」
「その可能性も疑われたんだがな、ただそれだと無礼を働いた勇者と相打ちになったと報告すれば他国は納得したはずなんだ。来ていないなどと見えすいた嘘をつくより簡単だと思うんだがな」
何だがそんな国に行くのは少し嫌になって来たが、【リプレイ】とこの魔力を失ったらと思うと私には逃げ道は残されていないようだ。
◇
戦場を離れ騎馬隊と共に王都に戻ると、もう一つの戦場は終結に向かっている訳では無く、ただ何となく戦闘が続けているのでどうにもならなくなっているとの情報が入ってきた。
少しだけ私の心が動いたが、あの魔石をしっかりと握りしめて心を静かにし、これ以上関りを持たないように私は心の中で誓った。
「あの隊長さん、エライサまで同行してもいいですか」
「んっ君はグラッパ王国に行くのでは無かったのかな」
「思い出したんですけどこの国に来たのは依頼を受けたから何ですよ、ですからちゃんと報告をしないとE級のままですからね」
「何だと、E級だったのか」
まさかE級だとは思っていなかったらしく、隊長は驚愕の表情を浮かべたまま固まってしまった。
「大丈夫ですか」
「あのな、まさか君がE級だとは思わなかったな、悪い事は言わないからそんな冒険者などは辞めて俺達と一緒に働かないか、君なら好待遇が約束されるぞ」
その提案は少しだけ引かれるが、自由なのない生活はもうやりたくはない。それにそこに入ってしまったらまた人の顔色をうかがう私に戻ってしまうだろう。
もうそんな私はこりごりだ。
◇
そのまま騎馬隊たちと一緒に帰れるかと思ったのだが、騎馬隊はこの国でもう少し仕事が残っており、私は国王からのしつこい誘いを断る為にアーリアとムックだけでこの国を出る事にした。
オスカリはこの事を予測していたのか私宛の手紙が残されており、その通りに行動すると何の問題もなく船に乗る事が出来た。
「ねぇ、あんたは本当にグラッパ王国に行くの?」
「仕方が無いんだよ、ちょっと頼まれごとがあってね」
「それっていつ頼まれたのよ、そんな事は全然言わなかったよね、おかしいんじゃないの」
アーリアは私から視線を外し、悲しい表情のまま海面を見ている。ただ、本当の事を言っても信じてくれるか分からないし、管理者の事を言っていいのか私には判断は出来ない。
「……リプレイ」
「ねぇどうして……」
「俺がさぁあんな魔法を使えるのって不思議だとは思わないか?」
こうなったらまた嘘をつくしかない。管理者や何度も人生を送っている事を隠しながら物語を作っていく。
強引なのは承知の上で生まれ故郷で知り合ったハイエルフのせいにしてみた。この世界では伝説となっているハイエルフを出せばあらかたの事は通用してしまうし、本当の事に比べれば小さい話になるのだから許容範囲ではなかろうか。
「何て言って良いのか分からないけど、あんたはかなりおかしいから…………まぁ信じるよ、それに私がグラッパ王国まで案内してあげるね」
「そこまでしてくれなくていいって、ただ船に乗って行けば良いだけなんだからさ」
「あのさ、簡単に入れる訳無いでしょ、いいから付いて来なって、私はただ里帰りするだけなんだからさ」
(ハイエルフなんて信じる訳無いでしょ、そこまで馬鹿な嘘をつくと言う事は相当な秘密があるんだろうね)
(アーリアはグラッパ王国から来たのか)




