第七十三話 魔法の後で
『やぁ久しぶりだね、何だか随分と派手な事をしているけど、君は勇者にでもなったつもりなのかい』
『そうじゃないけど、雰囲気に流されただけさ、もうこんな事はごめんだね』
いきなり管理者によってこの世界に連れて来られてしまったけど、現実の世界の身体が少しだけ気になってしまう。
『本題なんだけど、そろそろ君の手助けが必要になったからグラッパ王国の首都に行ってくれないか、詳しい事はその時に話すよ』
『どうせ断れないから諦めるけど、それよりグラッパ王国なんて聞いた事もないけどな』
『君が無知なだけだよ、いいかいその国は君と一緒にいる魔狼だって知っているさ、それじゃ向かってくれ』
はぁ、どんなことをやらされるのかな、【リプレイ】やこの魔力に見合う内容だったらいいけど、それ以上だったら断るしかないよな。
◇
誰かの気配を肌で感じるので、いつの間にか元の身体に戻ったようだ。瞼に光を感じるの目を開けると、心配そうな顔をしたアーリアと目が合った。
「ちょっと大丈夫なの? いきなり気絶したから心配したんだよ」
「多分疲れていただけだよ、もう平気だと思う」
「そうなの、それでも二日も目を覚まさないなんてびっくりしたよ」
「えっ二日なの」
あいつは何てことをしてくれたんだ。あんな少ししか会話をしてないのにこれはちょっとないだろ。
『お帰りなさいご主人様』
『んっお帰りって、どういう意味だ』
『身体だけをのこして何処かに行っていたんですよね、小娘に伝えようとしたのですが奴とは会話が出来ませんので』
『その気持ちだけでいいよ』
もうどうにも出来ないが今すぐにでも文句を言てやりたい。
お~い聞こえているか、お~い出て来い。
『ごめん、ごめん、そんなに怒るなよ、うっかりして君を戻すのを忘れていたんだよね』
『頼むよ……あのさ、これで会話が出来るなら連れ出す必要は無いんじゃないか』
頭の中では管理者と会話をしているが、目の前の視界は現実の世界にあるので少しだけ煩わしいが、あんな事になる位だったらこれでいい。
『気分の問題さ』
『出来れば気を使って欲しいんだけどな』
「どうだ様子は、おやっ、やっと起きたのか」
「心配をおかけしました。それより状況はどうなっていますか」
「落ち着けよ、動けるなら案内してやるが」
「はい、もう大丈夫です」
私が寝かされていたテントから外に出てそのまま騎馬隊の元に連れて行かれた。
「元気になってよかったな」
「あれは全て魔法の力なのか」
「魔力切れは身体に悪いから気を付けろよ」
隊長の元に辿り着くまで色々と声を掛けられたが、今回は元の世界にあった知識との融合なので苦笑いしながら歩いて行く。
そこでの話は私にとっては衝撃で、跡形もなく砦は消え去ってしまったというのに生きていたオーガがいた事には驚かされた。
ただまともな状態のオーガでは無かったようなので多少の被害だけでオーガにとどめを刺す事が出来たそうだ。
もしあの粉塵爆発と魔法の組み合わせが失敗していたとしたらと考えると、あれに思いついた私の中の俺を褒めたたえたい。
「どうしたの、やはり横になっていた方が良いんじゃないの」
「大丈夫だよ、ちょっと考えちゃっただけさ」
あの時の私の行動を思い返すとどう考えてもいつもの私ではない。今の私なら獣人族の司令官に砦を放棄しろとなんて言える気はしない。
私の意思で行動をしていると思っていたが、実はそうでは無かったのかも知れない。
今回は確かに成功したが、私の中の俺はことごとく早死している。いつまでもそれに頼ってしまっていたらこの私も死ぬかも知れない。
色んな世界を生きて来たが一番長く生きたのは、波風立てずに地味に生きてきた辻本であるこの私だ。
もう次は無いらしいのだから無謀な事をして命を失いたくはない。
「あれっ……リプレイ」
また考え事をしてしまったので隊長も副隊長もアーリアも眉間に皺を寄せながらこの私を見ていた。
私が動か難くなってしまったので様子を伺っている様だった。
「…………って言う訳で国に帰るんだが、君達も一緒に来るだろ」
「はいっお願いします」
此方側の連合軍がほぼ全滅したとの情報がもう一つの戦場にも情報がいったようで戦争は終結に向かうそうだ。
その言葉を聞くと私の中の俺達も納得したのか何の感情の乱れはない。
「あっそうだ、俺はこれからグラッパ王国に行きたいんですけど、どうしたらいいんですかね」
「はぁ? お前、本気で言ってるのかあそこがどんな国か知っているのかよ」
何故だか知らないが、行きたいと言っただけなのに誰もが驚いた顔をして私の方を見ている。




