表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/106

第八話 大活躍した?リプレイ

 村に戻る途中で必死にフレイクの記憶を思い出して見ると、私(僕)は村長の娘が目当てというだけで参加した訳では無く、盛り上げ役として青年団の団長に頼まれたという名目もあった。


 だったらさぁせめて何かしらやってくれよ、このまま戦ったら大怪我をしてしまうじゃないか、僕はラッキーパンチを狙っているけど、何もしない人間にチャンスが来ない事を僕は知らないんだろうな。

 この世界の僕は私以上に情けない性格をしているようだ。


 僕がただ考えているだけだが、それが緊張していると思ったのか父親が普段は見せない笑顔を向けながら話掛けてくる。


「お前は信じているかも知れないけど、村長の娘が貰えるっていうのは冗談だからな、本気にするなよ、まぁ参加賞を狙って頑張れや」


 私にとっては村長の娘など子供過ぎて何の魅力も無いが、この父親は村一番の力持ちなのだからもっといいアドバイスはないのだろうか。

 まぁ上位に入れば副賞として食料が貰えるから【リプレイ】を使って頑張るしか無いんだけどね。

 もしかしたら優勝したりして。


 ◇


 ……………………嘘だろ、昨日の私を、そして勝手に参加を決めた僕を殴りたい。

 

 今まではある程度の年齢別で僕の年齢なら六人しかいないので何とかなりどうだと考えていたが、今年はそれが撤廃されていた。そう言えば今回の優勝の副賞は村長の娘だった。

 大人はその副賞は冗談だと知っているはずなのに、どうして全年齢で戦わなくてはいけないんだ。

 格闘大会に参加する人数が集まらないのなら止めてしまえばいいのに……。


 一回戦の僕の相手は年齢はこの僕より一回り以上離れているし、体格何て二倍以上ある。

 おかしいだろ、こんな試合は。


 先程から何度も【リプレイ】しているのか分からないが、その度に攻撃パターンが変化していたり同じだったりしているので反撃の糸口がつかめない。


『あのさ、さっきから何をしているのさ、見学をしている僕の事も考えてくれないかな、つまらないんだよね』


 ここは……またあの場所か、そうだ、どうして時間を戻しているのにパターンが変わったりしているんだよ、おかしいじゃないか。


『君の動きが違うからに決まっているだろ、相手はね機械じゃないんだ、そりゃ君の動きに合わせているからだろ』


 そうなると……ちょっと待てよ、向こうの動きと自分の動きも覚えなくちゃいけないのか、それも五分前から全てだと。


『何でだよ、今の君なら時間調整は出来るはずだろ、それでも五分以上は戻れないけどね』


 そうなのか、一分前でも可能なのか、だったらまだいいのかな?


『君は勇者出会った経験もあるし、魔王の知識も持っているんだよ、魔力操作なんて考えれば簡単な事だろ』


 それなら……よしっ戻してくれ。


 がぼっ


 「いってぇな、いきなり戻すからだよ……リプレイ」


 こいつはいきなり右で私の頬を殴って来るから下のに躱すと……あぁもう何やっても駄目ね。

 だったら右に躱すと……。


 あ~もう、最初に戻った時間よりも過去に戻れないから嫌になってくる。いい加減嫌になって来たが、これだけ殴られたんだ。こいつだけは意地でも倒さないと気が済まない。


 一体私は意地になって何度【リプレイ】を繰り返したのだろうか、非力な私の攻撃は相手にダメージを与える事は難しかったが、膝へのカウンターで活路を見出すまで実際の時間は一時間以上費やしたはずだ。


「勝者、フレイク」


「ガキのくせに凄いことやったな、まだ試合は始まったばかりだぞ」

「まさか一発で終わるとは予想もしなかったぜ」


 言いたいこと言ってくれるよな、そうだよね、あんた達にはあっという間の出来事だからね、けどね私は身体の痛みは【リプレイ】と共に消えるけど心は疲れ切っているよ。

 全ては僕がいけないんだ。もう少し身体を鍛えていたらもっと楽に倒せたのに。狩人の息子何だからしっかりしてくれよな。


「いよぉフレイク、意外とやるな」


 年齢別が撤廃されたし、娘が副賞で貰えるなど嘘だと見抜いた人間が多く、参加者が次々辞退し私はたった一度勝利を手にしただけでベスト4になった。

 そして次の対戦相手である僕よりも少し年上のハンネスが話し掛けて来た。


 面倒な奴が話し掛けて来たもんだな、私にとってはただのクソガキだが、僕にとっては頭の上がらない男なんだ。

 頭の中で二つの感情があると言う事は、完全には私と僕は同化が出来ていないんだろう。


「有難うございます、それより次の対戦相手であるあなたとと話していいんですか」

「まぁいいんじゃね~の、いいから耳を貸せよ」


 はいはい、こんなひ弱な私にまさかの八百長の相談ね、そりゃ万全に決勝に行きたいのならそうだろうね、まぁお金をくれるらしいから悪くない話だけどね。


「あの、もう少し上乗せしてくれませんか」

「それ以上贅沢な事を言うと痛めつけるけど、いいのか」

「すみません」 


「おいっそこの二人、準決勝を始めるぞ、準備はいいのか」

「はいっ」

「あぁいつでもやれるぜ、俺は無傷で決勝に行くんだからな」 


 あのな、そんなアピールするなよ、こんな場所で二人で耳打ちしているのだから怪しまれるって……何でこんな馬鹿の為に、僅かな金の為に恥をかかなくてはいけないんだ。

 ふざけろよ、それじゃあ元の私じゃないか、ここでも自分を抑えて生きていくのかよ。


 こいつは思いきり私の頬を殴ってくるんだよな、何度か【リプレイ】すればカウンターで倒せるかもしれないが、今後の事を考えてそれは許してやる。


 お前の拳に私の額で受け止めてやるさ、たしか何処かの漫画で額で拳を受けて相手の骨を砕いたのを私は覚えているんだよ……さぁ貴様の骨と引き換えに勝利を譲ってやるよ。


 ボスッ


 鈍い音が頭の中に聞こえたと同時に私の記憶は消えてしまった。

 当たり前だが【リプレイ】を唱える時間は訪れない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ