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SIDE1 少し前の話

「獣人族というのは此処まで軟弱とはな」

「申し訳ないが、私達も獣人族なんですかね、忘れていましたかジャワラ殿」

「いや、そうではないんだが、どうも貴公らと同じに思えなくてな」


 燃え盛る村を見ながら二人の男が切り株に座って見ている。


 一人は立派な二本の角を生やし、身体全体が赤黒くて冷蔵庫に様な体格をしているオーガ族のジャワラ中将で、もう一人は顔も身体も人型とは思えない手足が異様に長い爬虫類型獣人族のアイディ将軍である。


 将軍と中将では階級に差があり、お互い丁寧な言葉で会話をしているのは不自然だが、それは連合軍である為であって二人の間に微妙な空気が流れている。


「失礼いたします。この村ももうすぐ制圧出来ますが、村民はいかがいたしましょうか」

「あのな、私達は虐殺が目的じゃないんだ。歯向かう奴だけ殺し、それ以外はそのまま逃がしてやれ、いいかこの命令は絶対だからな」

「はっ部下には厳命させます」


 その兵士は足音を立てずに燃え盛る村に向かうと、決して間違いのないように村中を走り回って指示を出して行った。


「前々から思っていたが、皆殺ししなくていいのですか、アイディ殿は優しいですな」

(まどろっこしい連中だな、こいつらと手を組まなければもっと早くこの国を亡ぼせるのによ)


「これはね、同じ獣人族の間での最低限の決まりなんですよ、まぁ古の掟ですがね」

(この野蛮な魔族め、そもそも中将のくせにこの私を殿呼ばわりか、全く気にいらん連中だ)


 この二人は表面上は何も問題が無いように取り作っているが、心の中ではお互いがお互いを良く思っていない。

 そして揉め事こそ起こっていないが、一般の兵士も同じ気持ちだった。


 魔王と爬虫類型獣人族の国王が勝手に決めた事ではあるが、国民である兵士は誰もがその命令に逆らう事は出来ない。



 ◇



「この森の先には元は我々の物だった砦があるんです。あそこは堅牢に作られていてな、かなり厄介な砦なんで慎重に行動しないといけませんな」

「さようか、それは言い情報を有難うございます」

(てめぇらが取られた砦かよ、何が堅牢だよ、脳みそが付いているのか……あぁ向こうの戦場の方がイライラしなくて良かったわい)


 ジャワラ中将が思いをはせている戦場とは此処より南で戦っている本隊が動いている場所である。

 向こうは要所も多いいが王都により近いので此処より人数が多く二万の兵士が動いている。


 ここはずっと村や里しか襲っていないので戦士としては物足りない戦場でしかない。

 だが、アイディ将軍にとっては本隊よりも此方の戦場の方がやりがいはあった。


(これでかなりの領土を取り戻したぞ、それにこのままあの砦も攻め落とせば私の功績は誰にも負けないであろう)


 アイディ将軍にとっては砦が最終目標であり、その先にまで行こうとは全く考えていない。もしオーガ族がその先に行きたいと言い出しても絶対に動かない事を決めていた。

 それに此処にいるのはリザードマンが約千人でオーガ族が八百人しかいないので砦を守るだけの人数を置いたらそれで手一杯になってしまう。





「よ~し全体止まれ、いいか、ここから慎重に進むからな、全員がまとまって一気に砦に侵入するんだぞ」


 リザードマンの指揮官が小隊長を集めて指示を出しているが、オーガ族はそんな説明など余り気にしていない。

 彼等は目の前に敵がいたら潰す、ただそれだけだ。


「さぁ私等の姿を見せて恐怖を奴らに与えるんだ」


 わざと物音をたてながらゆっくりと森を出て行く。殆どの兵士が森を抜けた時に一部の兵士が空にい浮かんでいる不思議な物体に気が付いた。


「おいっあれはなんだ」

「火球のようだがあんな大きなサイズは見たことがないぞ」

「あんなのが作れるのは魔王クラスしか無理なんじゃないか」

「あれは見せかけだけだろ、奴らが作れる訳がない」


 残念ながらそのせいで殆どの兵士が動きを止めて見上げてしまった事が被害を大きくしてしまった原因だ。



 ◇



「何だと、殆どやられたというのか」

「魔法の正体は【メギド】だと、そんな訳あるか」


 アイディ将軍とジャワラ中将は報告を聞いた途端に本陣を飛び出して辛うじて見える焼け野原をを見ている。


「あ奴らめ、何をしたらこうなるんだ」

「あれが魔族以外に使える訳がない、どうせ魔道具を使ったまやかしでしかないはずだ。そんなのに騙されてたまるか」


 ジャワラ中将が怒りに身を任せたまま出陣しようとしたが、アイディ将軍は嫌な予感がしているので直ぐには動きたくない。


「焦らないでくれないか、それに【メギド】とは魔族が使用する魔法じゃないのか、それに付いて何か知らないのか」

「あれは【メギド】に見せかけた魔道具に決まっている。そんな物に騙されるな」


(このクソ蜥蜴が、どうせ魔道具が地面に埋まっていたんだろうよ、だったら同じ場所から攻め込めば安全に決まっているだろうが)


 二人は口論を始め、とうとう二つの種族に亀裂が入り、そのせいで再び行動を開始するまでに時間を無駄にしてしまった。  

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