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第六十三話 砦の中で

「司令官、本当に留まるんですか、この先の村を見捨てるつもりなのですか」

「分からん奴だな、村の者には放棄しろと前もって知らせているんだ。それでもそこに留まりたいのならそうすればいいのさ、いいか、防御力の無い村で何が出来るんだ。いいからお前は黙っていろ」


「それは我々にも当てはまるのですかな」

「帝国の方々には……それでは上官の方だけに別室でお話いたします」


 砦に着いたとたんにニーノがここの司令官と対立し、今は隊長のネストレと副長のモデストが別室で説明を受けている。

 

(さて、何が話されているのかな)


『ご主人様、おはようございます。あの、ここは何処ですかね』

「起きたのか、アーリア、ムックが目を開けたぞ」

「あっ本当だっ、ちょっといつまで寝てんのよ」


 アーリアは文句を言いながらもムックを抱きしめている。ムックは此処に来る前から一度も目を覚まさなかったのでかなり心配だったが、幸せそうな顔をして眠っていたのでそのまま連れて来ていた。


『あの~ご主人様、この娘をどうにかして貰えませんか、ここまで強く抱かれると気持ち悪いんですが』

『そんな事を言うな、アーリアはずっと心配していたんだぜ』

『小娘に心配されるほどの事は全く無いんですがね』


 ムックの言葉はいつものようにアーリアに対して厳しいが、決して逃げ出そうともがいてはいないのでもしかしたらムックの照れなのかも知れない。


『それよりもどうしてあんなに長く眠っていたんだ? 自覚はあるのか?』

『我が種族は進化する時には深い眠りに入るのです。時が近づいたら安全な場所で睡眠に入るのですが、私はうっかりしていたようです』


 その言葉通りなら進化した事になるが、目の前のムックはいつものムックと何ら変わりないように見えてしまう。


『どこが進化したんだ』

『さぁ何処ですかね、この姿は仮の姿なので本来の姿に戻らないと違いが分りません。どうしますか戻りますか』

『そうだね、また今度にしようか』


 アーリアはまだしも他の兵士にはムックが魔獣であると知らないので、下手な事は出来ない。


「みんな集まってくれ、今から説明があるぞ」



 ◇



 砦の中にある会議室では援軍としてやって来た獣人族の一角馬隊と、帝国の騎馬隊が集められ、全員が揃った途端に奥にある壇上に狸のような顔をした小さな司令官が登っていく。


 誰もが固唾を飲んだように静かにし、その者に注目していると、その小さな体に合わない程の大きな声で話し掛けた。


「いいか我々は此処で敵を迎え撃つんだ。避難命令に従わない者を助けに行く事はこの司令官である私が許可しない。これは国王様も了承した決定事項だ」

「本当にそれでいいんですか」

「黙れリビト、司令官の言葉を遮るんじゃない」


 壁沿いに立っている砦の兵士が動き出そうとした瞬間にニーノが怒鳴り声を上げた。決して本気で怒っている訳では無く、リビトを助けるためだろう。



 ◇



「連合軍が三千でこっちの兵士が六百だってね、これはもう無理でしょ、どうする?」

「籠城すれば何とかならないかな」

「ずっと砦に籠る作戦でしょ、向こうが此処を迂回したら見当違いな作戦になるね」


 それでも連合軍の進行方向を見極めると、真っすぐ来ればここには1日もすれば到着するらしい。


 この砦にも援軍が徐々に増えてはいるが、連合軍が進攻してきたのは一ヶ所だけではなく、むしろ南から来ている部隊の方が主力となっているので、どうしてもここは立派な砦があるので後回しになってしまうそうだ。


 避難勧告をした村や里からはもうほとんどの獣人族が避難先の街で確認が取れているので、それで司令官は充分だと判断している。


 それよりも王都からここにやってくる予定の大勢の援軍はどうしても四日後になってしまうのので、それまで何としてでも此処から先に連合軍を進めさせたくない。


 この場所なら砦の周りには天然の擁壁があるので守りやすいのだが、此処を超えてしまうと王都迄の道が何通りもあるので被害が広がってしまうと予測されている。



 ◇



 思ったより状況が良くない話を聞かされたあとで、私達だけで砦の上からその先に見える森を眺めていた。すると副長のモデストが隣に並んで景色を見始めた。


「あの、いいんですかこんな場所に居ても」

「私等は只の助っ人だからな、それよりも君達は帰国した方が良いんじゃないか、かなり厳しい戦いになると思うぞ」


 見た感じだとこの砦は簡単に攻略が出来ない位の高い城壁もあるし、地下水や食料もふんだんにあるそうなので下手な事をしなければ王都からの援軍を待つこと位は出来そうに思えるのだが、本職からみるとそうでは無いらしい。


「堅牢そうな砦だと思うのですが違うんですかね」

「砦を挟んでいる山が問題なんだよ、何で繋げちゃうのかな、見栄えは良いけどそのせいで侵入しやすくなっているんだ。自分らがこの砦を奪う時にやった作戦を逆にやられるんだろうな」


 モデストの言葉がやけに頭を駆け巡り、何だか嫌な事が思い浮かんできた。


「あのこの砦を作ったのは、もしかして」

「まぁ想像通りかな、ただ魔族じゃない方な」


 それだったら向こうにとっては領土を取り戻しに来た事になる。



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