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第六十二話 何だかなぁ

「君達二人は今すぐにでも王都の戻るんだ。連絡はしておくから指示に従って国に帰ると良いだろう」

「皆さんは本当に戦いに行くのですか」

「連合軍とは只事では無いからな、今後の為にも情報は入れておきたい。まぁこの国は同盟国でもあるし、恩を売る事も出来るだろ」


「帝国には連絡をしたのですか」

「勿論したが、答えを待つ時間など無いさ」

「そうですよね、時間が掛かりますもんね、それでは……」


 私の考えとは違い私の心は一緒に行きたくなっている。インベルガーとしての俺の考えなのかも知れないが私としても、この身体のフレイクとしても戦いには行きたくない。

 そうなると2対1で行かない方に決定だ。


「どうしたの」

「あぁ悪い、俺達は帰る支度をしないとな」


 帰る準備をするだけなのに何故か心は熱く力がみなぎってくるので心と体がバラバラになりそうな気がする。


 テントの戻ると直ぐにあの魔石を握りしめて心を落ち着かせていると、頭の中で声が聞こえてきた。


『僕は戦う事に賛成だね、爬虫類型とはいえ獣人族と魔族が手を結ぶなんてありえない事なんだよ、いいかいこれで2対2になったね、さぁどうするんだい僕よ』


(誰だよ、この私は……あぁそうね、勇者の私か……だけどね生きている私の方が優先するに決まっているじゃないか、君達は正義感が強くて高潔なのは良いけどこの私を巻き込まないでくれ、君達みたいに早く死にたくないんだよ)


 頭を振って馬鹿な考えを消し去り、アーリアの元に行こうとしたがまたしても別の声が聞こえてくる。


『待ちなさい、吾輩も戦いに行った方が良いと思うぞ、それになフレイク君は君なんだからこれで3体1だ』


(誰だよ、それに勝手にフレイクっを無かったかのようにするなよな、いいかいそんな考えに縛られるから私達は早死したのに…………あ~五月蠅い、そんな一気に話さないでくれ)


「もう支度は終わっているでしょ」

 

 アーリアが荷物を背負ってテントの中に入って来たのでこのまま帰路に就きたいが、そうしてしまうと自分で自分を殺してしまいそうだ。


(何だかなぁ)


「あのさ、考えたんだけど俺もちょっと行ってくるよ」

「はぁ~何考えてんのよ、あんたは只の冒険者でしょ、行く必要なんてないでしょうが…………あのさぁ、誰かに弱みでも握られてるの?」


 この顔を見てそう思ったのだろうが、私としてはこんな国同士の戦いなど参加したくないのだからこの嫌そうな顔をするのは仕方のない事だ。


 だが頭の中の俺達が馬鹿みたいな正義感を振りかざすのだからもう諦めるしかない。


(どうして主張してくるんだよ、今までは大人しかったのに)


「あのさ、何となくそうした方が良いと思っただけなんだ」

「まるで勇者にでもなったつもりなの? まぁいいけどさ、だったら私も付きあっても良いかな」


「ちょっと待てよ、アーリアまで行く事ないだろ、どうなっているか分からないんだぞ」

「あんたよりは経験があるわよ、私はねぇ、冒険者の前は傭兵だったんだから」



 ◇



 アーリアはその年齢で元傭兵だとは想像もつかなかったので驚いたが、それと同じ位にずっとその頭の上で寝ているムックにも冷静になると驚かされる。


「ねぇムックてまだ寝てる? 頭の上だから分からないんだよね」

「器用に眠っているよ、何でだろうな」


 私とアーリアは馬車での移動となり最前線へと向かっているが、窓が見ない位に荷物を詰め込んでいるので外が見えない分、ムックが気になってしまう。


「ねぇ病気なのかな、ちょっとおかしくない?」

「そうだとしても、どうすればいいんだろうな」


『おいっムック、聞こえるか? どうしたんだよ』


 ムックの声も聞こえないし、俺達の声もいくら問いかけても返事は返ってこない。あの時はリシオのように自我を持った記憶の欠片が話し掛けて来たのかと思っていたが、もしかしたら今の私が作り出した声だったのかも知れないと思うようになってきた。


 今の私は全てが辻本であると言えないし、このまま元の世界に戻ったとしたら親しい者は同一人物だと見てくれるだろうか…………。


「どうかした? もしかして後悔してるとかじゃないよね?」

「ちょっと考え事してたんだよ」

「そんな難しい顔をして何を考えたのよ、言ってみなさいって」


「本当にいいのか、あのさ、アーリアはまだ若いだろ、それなのに傭兵なんてやっている時間が本当にあったのかなって」

「これでも向こうの世界じゃベテランなんだよ、私は物心ついたころから戦場にいたからね、だから冒険者になってからこんな平和な世界がある何て驚いたぐらいだよ」


(命の危険がかなりある冒険者の世界が平和だと、これ以上聞いて良いのか?)


「あのさ、両親も傭兵だったのかな?」

「当たり前でしょ、戦場以外の場所で暮らした事なんて無かったわよ、まぁその両親も本当の両親なのか今となっては分からないんだけどね、もう死んでいるし」

「あっそうなんだ……」


 私には想像がつかない話だったし、他の記憶をどんなに探ってもそれと似たような話は俺達の記憶の中でも聞いた事はない。


 アーリアは別に辛い思い出を話している風には見せず、只の思いでとして話しているみたいで目的地である砦に到着するまでの三日間、数々の話を聞かされたので何度もアーリアを抱きしめたくなった。



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