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第五十四話 オスカリからのプレゼント

 王都に向けて動き出したが、後から聞こえてくるお気楽の声とは裏腹に私はオスカリに対する警戒心で緊張感を持っている。


「そんなに警戒するなよな、ただ君があまりにも面白いと思っているだけなんだよ」

「面白いですかね……只の田舎者なんですけど」

「そんな訳ないだろ、どうだい、此処での会話は誰にも聞こえないから本音で話さないか」


 気が付くといつの間にかに周りの音が何も聞こえていない。管理者と話す時と同じようなのでこの変化に気が付くのが遅くなってしまった。


「音だけが遮断されているのか、オスカリさんはこんな魔法も使えるんですね」

「僕じゃなくて執事の魔法さ、こうなると思って指示した置いたんだよ、それに障壁がある訳じゃ無いからそこから離れれば直ぐに音が聞こえてくるよ、だけどさ、誰にも邪魔されないで話せるなんて中々ないぞ」


 私の事を考えての【音の遮断】と言う事だろう。まぁこの人の性格は少し怖いと思うが、だからと言って悪人と言うよりも善人のようだと思う。


「俺に聞きたい事は何ですか?」

「そりゃ色々あるけどさ、それよりも大事なのは君の不安定さかな、このままだと大変な事になりそうだから僕としてはそれが心配なんだ」


「俺は不安定ですかね」

「昨日は特にそう感じたけど、君にはその自覚は無いのかい。それだと厄介なんだけどな」


 オスカリは視線を前に向けたまま話しているし、その言葉は誠実のように感じている。

 ただ全てを話す訳にはいかないし、こんな滑稽な話をしたら馬鹿にしていると思われてしまうかも知れない。


「感情の揺れ幅が他の人より大きいとは思いますし、それを自制出来ていないのは理解しています」

「自制どころか別人のように感じていたけどな」


 オスカリの横顔は本当にこの私を心配しているように見えるので、全てを話しても良いのではないかと考えてしまうが、軽率な真似は出来ない。


「いつからそう感じましたか」


「盗賊に襲われた時に君に対して違和感を感じていたな。器用なようで武器用ともいえる魔法だったからな、それに海の時で確信をしたね」


 勇者の時か? あれは記憶の中から引っ張り出したんだっけな。


「そんな前からでしたか」

「まだ君の理性がある時はどうでもいいんだ。それよりも君は何かのスイッチで身体の限界を簡単に超えてしまうから危険なんだよ。いくら治癒の魔法を知っていると言ってもこのままだと長生き出来ないだろうな」


 本当に良く見ていると思う。リシオの力は管理者が抑えてくれたらしいが、僕の身体に合っていない事を私自身がしてしまう可能性は十分に持っている。


「そうですか、俺もその事は考えてはいるんでけど、頭に血が上るとその傾向はありますね。早急に直したいとは思っています」

「そう言ってくれると思ったよ、実はないい物があるんだよ」


 私の答えが嬉しかったのかオスカリは笑顔を浮かべて手綱を僕に渡して荷台の中に入って行く。

 【静寂の魔法】はオスカリが出て行った途端に効果が切れ、様々な雑多な音が聞こえてきた。


 何を持ってくるつもりなのだろうか分からないが、この事は簡単に解決する訳では無いのだからあまり期待はしていない。

 

 少ししてからオスカリがまた戻って来たがその手は手ぶらだった。


「どうでしたか? やはり見つかりませんでしたか」

「ちゃんと見つけて来たさ、ただこれが君に悩みを全て解決してくれるのかは不明だけど試した方が良いかも知れないと思ってね」


 オスカリは内ポケットの中から小さな紫色の魔石を取り出して私に投げて渡してきた。


「これは何ですか?」

「僕が昔に使っていた魔石何だけど、これを握りしめると緊張がしなくなるというか、心が落ち着くんだ。もう僕には必要は無いんだけど旅のお供にいつも持ってきているんだ」


「そんな高価そうな魔石何て使えませんよ」

「気にしなくていいから貰ってくれよ、そんな高価な魔石じゃないんだからさ」


 想いでの品を貰って良いのかと思ってしまうが、この魔石で変な事から逃れられるなら使用して見たい。


「本当にいいんですか」

「あぁ君には必要だと思ったからね、それよりも前を見てごらん、王都が見えてきたぞ」


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