その六 リシオは弟子をとる
かなり面倒くさいと思いながらもリシオは笑顔を絶やさずに、あの街で生き残った数少ない人達をレンゲルの街まで一緒に行動した。
その街に向かう途中で救援要請を受けた兵士達と合流したのでリシオは解放されると思ったが、既に街の人達から勇者扱いされているリシオをはそこから勝手に出る事は許されなかった。
(全く人間と言うのはどうして自分達の力で解決しようとせんのだ。まぁいいか、どうせだったらレンゲルの街の偉い奴を傀儡へと変えてやるかの…………いや、やはり止めておこう、まだ儂は本当の人間の中身を知らんから見極めてからだな、それにどうにかして魔力を昔に様に戻さんといけないの)
「あ~面倒じゃの」
「どうかなされましたか勇者様」
「あっいや、何でも無いんだ。ただ儂、じゃなくて俺を勇者と呼ぶのは止めてくれないか、俺はその称号が苦手なんだよ」
(魔王である儂が勇者と呼ばれたく無いに決まっとるだろう。それにもし受け入れたら魔国に行って魔王と戦う羽目になるのだろ)
魔王リシオの事は魔国中に知れ渡っているので、もし人間側に寝返ったと勘違いされたら同種族だけでなく魔族全体から敵視されてしまう。
(魔族の何処までが儂を恨んでいるのか知らんが、それを跳ね返すだけの力を取り戻さんと魔国での復権は難しいじゃろうな)
◇
レンゲルの街に入るとようやくリシオは生き残った人達と離れ、領主の前であの街で起こった事を説明している。
リシオが引き起こした事だから詳しいのは当たり前だが、全てを話さないでこの目で見たことだけを話すように心がけた。
「……そうであったか、いきなり巻き込まれて大変だったの、それでお主は何処からやってきたんじゃ」
「名前も知らない遠くて小さな国からです」
(貴様、少しでも疑うようならこの街も滅ぼしてくれるわい)
「どうしてあの街に……」
領主はリシオの素性に興味を持ち始めたが、領主の後ろにいる兵士がそっと諫め始めた。
「お待ちください領主様、彼は冒険者のようですのでそれ以上は詮索なされない方がマナーだと存じます」
「そうか、冒険者とは直に話したことがないからギルドの常識と言うものに疎くてな、すまんの」
「いえっそこまで配慮して下さり有難うございます。ただ、私のような冒険者はこの場にはふさわしくございませんので失礼致します」
リシオは早く此処を離れて、まずは冒険者としてのギルドカードを作りに行こうと考えていた。
今回は着の身着のままなのであの街の人達も何も調べられず街の中に入れたが、これからはそうはいかないと思うので一刻も早く手に入れたい。
「そんな遠慮するでない……そうじゃのゆっくりお主の話を聞きたいから食事会でも開こうかの、お主は子供と一緒に参加せい」
「子供ですか……誰の子供の事を言っているのでしょうか」
「そこにいる少年はお主の息子ではないのかね」
リシオはゆっくりと振り返ると。この街までリシオに背負われていたあの子供が入り口に立っていた。
(クソガキがっ、何でそこにいるんじゃ、あの時見捨てないでいてやったんだからそれでいいではないか)
この場にはずっと笑顔を絶やさずにいたが、助けを求めるような視線を向けてくる子供を見ているとつい本性を出してしまいたくなる。
しかしその気持ちを心の奥に沈め、更なる温かみをもった笑顔になりながら子供の前で片膝をついて、同じ目線になったところで話始めた。
「坊や、こんな所にまで来てどうしたんだい。君の住む場所は兵士さんが考えてくれるよ」
「いやだ、僕はもうあんな思いをしたくない為に魔法が憶えたいんだよ。なぁオイラに魔法を教えてくれよ」
ようやくその子供の声を始めて聞いたが、それよりもいい加減にして欲しい。
「残念だけどな魔法を使うにはそれなりの魔力が無いと駄目なんだ、君は志願兵として騎士を目指したらどうかな」
これでこの話は終わりだと思っていたが、どういう訳か領主が口を挟んできた。
「旅の者よ、その子は賢そうに見えるな、だったら弟子にしてあげても良いんじゃないんのか、この街が管理しているダンジョンに潜ればこの子の成長も早いと思がの」
(こいつは馬鹿なのこの儂が人間の子供を弟子にするなんてありえないだろう……とはいえ領主の顔はつぶせないか、う~ん)
悩んだ末にこの街であの子供の面倒を見る事になった。魔法の才能があるようには見えないので気に食わない事があったら殺せばいいとリシオは考えている。
「そうか、この街でそ奴を育ててくれるか、いやぁこの街にとっても助かるな、実はな戦争のせいで兵士の数が足らんのだよ、あの街のような事があると思うと心配でな、そなたがこの街にいるのなら安心じゃよ」
(こいつは儂を戦力として利用しようとしとるのか……この街も滅ぼすかの)




