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第四十九話 ムックと密会

 ムックとの待ち合わせ場所は街の近くにある岩場で、ドラマなら此処で殺人事件が起こるような雰囲気がある。


『すみません。目が覚めて時ににおそばにいれなくて』

『良いよ気にしなくて、それより話って何だい』


 大きな岩の影にいた、ムックは子犬の姿のまま現れて俺の近くでちょこんと座った。


(ご主人様と言わなくなったな、さて、どうなる事やら)


『この間の戦いで貴方様とリシオ様が違うのだと確信いたしました。それどころか何やら対立している様にも見えたのですが』


 ずっと「くぅ~ん、くく~ん」と現実の世界でのムックは鳴いているので、そちらに気を取られてしまいそうになるので、頭の中に直接聞こえるムックの声に集中しないといけない。


「そうかも知れないな、ただ俺の中に入っているのはリシオでは無くて、昔のリシオの欠片らしいけどな」


 自分でもこの事はよく理解していねいので、せめて言葉に出して考えながら話す事にしたが、それでも頭の整理が全然出来ていないと思う。


『あの、リシオ様の欠片と言うのは貴方様の中で生きているという事でしょうか、私には全然理解が出来ません』


 もっと上手く説明が出来たら良いのだろうが、私には自分に起きている事を完全に説明する事は出来ない。

 だけど、ムックの為に嘘だけは言わないと心に決めた。


「俺もよく理解出来ていないんだけど、俺の中に入っているリシオの欠片と言うのは過去のリシオの記憶であって、この世界で生きているリシオとはもう別らしいんだよ」


『えっそれではリシオ様はこの世界で生きているというのですか? それならば何処におられるのですか? お願いです。教えてください」


 興奮しているせいかムックの声が強く頭の中に流れてくる。そんな必死な声を聴いていると何故だか少し胸が痛くなってくる。


(やはりムックは俺の中のリシオだけを見ていたのかな)


「俺も何処にいるのか知らないんだ。ただ魔国では無い国で生きているそうだよ」

『どうしてその事を知っているのですか』

「俺の魂を色んな世界に送り込んだ管理者という者からの情報だよ、それしか言いようが無いんだけどな」

『そうですか……それでもこの世界の何処かにリシオ様が生きておられるんですね』


 目の前にいるの小さな子犬なのに何故かムックの姿が大きく見える気がする。


「あのさ、ムックは魔王であるリシオの事を知っているという事は一体いつから生きているんだ」

『私ですか? 多分ですが二百年ぐらいだと思います。ですから直接リシオ様にお会いしたことはございません、私の先祖の記憶の中にあるだけです』


(先祖の記憶の中だと?)

「ムックは自分の先祖の記憶を全て持っていると言うのか」

『全てではありません。先祖が残したいと願った記憶と匂いだけが引き継がれます』

「あぁそうなんだ……」


 この事を完全に理解する事はもう諦めた。自分自身の事すら完全には分かっていないのに魔狼の事をまで抱えていられない。

 ただおおまかに受け入れるしかない。


「それでムックはどうしたいと思っているんだ? ムックが求める魔王リシオは何処かで生きているんだ。あの姿のままだとは思えないが魔国でないのなら探し出せるんじゃないか、まぁ簡単では無いと思うけどな」


 俺としてはこのままムックと別れたくはないが、ムックの気持ちを考えれば素直に見送った方が良いかも知れない。

 

 ムックは何も答えずにその短い前足で頭を抱え込むようにして座っている。

 普通の犬にはありえないポーズだが、その悩んでいるだろう姿を見るともっと早く何かできなかったかと胸が締め付けられるようだ。


「もっと早く教えたかったけど、魔王リシオが生きていると知ったのはつい最近なんだ。信じられないかも知れないけど本当なんだ」


『そんな事は気になさらないで下さい。あの、まだどうしたら良いのか分からないので答えが出るまで一緒に居てもよろしいでしょうか』


「もちろん歓迎するけど、一つ知らせたいのがこの前はリシオの欠片が力を取り戻したけど、もうその欠片には力が無いそうだ。それでも良いのか」


『そうなんですか、まだシューヤ様からリシオ様の匂いが感じられるのですが』


 管理者はその力を奪うと言っていたが……これ以上考えても私の頭では理解出来ないだろう。


「俺にはその事は分からないな、まぁ俺は俺でいるつもりだけど、好きなだけ俺達の側にいればいいさ」


『有難うございます……ご主人様』


 ムックからまたご主人様と言われたのは少し嬉しいが、俺達の前に魔王リシオが現れたらムックは行ってしまうのだろうか。

 それに俺と魔王リシオが仲良くできるなんて考えられない。


(敵対して勝てる相手じゃないけどな)


 出来る事なら魔王リシオには会いたくはない。

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