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第四十七話 使者団がようやくやって来る

 オスカリは明確な答えを言わないまま船を修理している所に私達を案内すると、そこには想像が出来なかった光景が待っていた。


 元の世界のドックがどう言う場所か詳しくは知らないが、決して目の前にある光景とはかなり違っているだろう。

 船は何処かに固定されて吊るされていたりする訳ではなく、半透明な球体の中に入っていて浮かんでいる。

 その中では獣人族だけでは無くて色んな種族が作業していた。


「これを見れば人間がいかにおごり高ぶっているか分かるだろ、彼等は人種に拘らないからこんな施設が作れるんだろうな」

「そうなんですか」


 オスカリによると、この中にはホビット族やエルフ族、そしてドワーフ族が獣人族に交じって働いているそうだ。人間族は魔道具制作で他種族の上を行っているようだが、このままだといつか劣化種族となる可能性があるらしい。


「揉め事は起きないの?」

「それはあるんじゃないか、けどそれは何処でも一緒だろ」


 此処を見学しているのは私達だけではなく、この船を操縦してくれた船員もいて、私の姿を見ると嬉しそうに駆け寄ってきた。


「君はようやく目が覚めたんだな、心配していたんだぞ、それに謝りたくてな」

「それは俺もそうだぜ、生意気なガキだと思ったことを謝るよ」


 それ以外にも色々と褒めてくれるのは嬉しいが、兵士でも商人でもない階級の低い冒険者がこの船に乗っている事をあまり良く思っていなかったらしい。どうやら何処かの貴族の馬鹿息子だと勘違いされていたようだ。


「それはもういいですけど、どの船の魔石が壊れていたんですか」

「三隻ともだよ、それにどの船も壊れる事を考えて魔石をいくつも付けているんだ。それが全て壊れている何て自然じゃありえないな」


「オスカリさん、そうなると……ですよね」

「あぁ三隻とも沈めたかったんだよ、船が沈めばあそこは助かるだろうな」


 答えは一つしかなく、そうなるとこれからの事を考えると怒りと憂鬱な気分が入り混じってくる。


「ねぇ分かっているなら早く捕まえれば良いじゃない、もっと酷い目に遭うかも知れないよ」

「ここまで来たらもう無いんだよ、それにさ確実な証拠がないとそれを相手に伝えるだけで大変な事になってしまうんだろうね」

「はぁ誰の事を言ってんのよ」


 アーリアももう少し考えてくれたら簡単に黒幕が分かると思うが、その答えを言ってしまうとこれから来る黒幕の手下に喧嘩を売るような真似をされると面倒な事になる。

 オスカリもそう思ったのか、アーリアにはコールマ商会の残党と言う事で納得させたが、たかが盗賊が監視の厳しい港に侵入してあれが出来ると信じたアーリアの単純さが少し可愛く思えてしまう。


 ただ、話しながらオスカリ自身もおかしなことを言っていると思ったのか、たまに口の端が痙攣しているし、奥歯を噛みしめて笑いをこらえている様な仕草を見せていた。



「ぶぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

 

 沖の方から此方に向かって合図の音が聞こえると、私達が沈まなかった事を残念がっているグシュバッハ共和国の船が見えてきた。



 ◇



 この港町ゴフリックの中にある大きな会議室に子供達と執事以外の者が集められ、グシュバッハ共和国の使者団が此処に来るのを待っている。


 私はこの場に居なくても良いような気もするが、今回の発端の責任としてここに居なければいけないらしい。


(はぁ何だかどんどん面倒な事に巻き込まれるな、死んでいないからいいけど、この人生もかなり厄介だな)


 中々この部屋に使者団は来ず、時間が過ぎるにつれてこの部屋の空気が重くなってくる。

 此処にいるアーリア以外の者は船を沈めようとしたのはグシュバッハ共和国の連中だと思っているし、今は港で働いている人物を過去も含め調べられている。


 誰かが使者団を見た途端に暴走する恐れもあるが、今のところはその怒りを内に秘めているようだ。


 そんな空気の中で扉が開き、狐のような顔をした獣人族の男性が入ってきた。


「失礼します。グシュバッハ共和国のクラメール公爵の御一行様が此方に向かっておりますので少々お待ちください」

「何だと、公爵が使者団の中にいるのか」

「そのようですね、入国手続きでそのように申告されていましたので」


 何だがこの部屋の中に困惑と怒りが入り交ざったような感情が蠢いているのでこの部屋から抜け出したくなってしまう。


「ねぇどうしたのかな」

「予想以上というか想像していなかった権力者が来たから困惑しているんだろ」


 てっきり軍関係者か盗賊がいた町の領主が来る者だと思っていたらしいが、まさか貴族の中で一番格上の公爵が来るとは誰もが想像していなかった。


 子爵は先程までは部屋の奥の中央に座っていたが、今ではその場所を公爵の為に明け渡す事に決めたようだ。

 オスカリも何やら部下に慌ただしく指示を出しているので益々此処にいたくなくなった。


「何だか嫌な予感がするな、どうする? 宿に戻ろうか」

「そうだね、私達は只の冒険者だからね」


(みなさん、どうか頑張ってください。それでは失礼足します)


 心の中でちゃんと挨拶をしてそっとこの部屋を出て行くと、私達の進行方向から十人程度の集団が歩いて来ている。



 

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