第四十六話 目が覚めた後で
宿の外に出て見ると、そこには大勢の獣人族の姿が見えたので最初こそ興奮したが、ほんの数分で慣れ親しんだ風景のように思えてきた。
(そりゃそうだよな、どれぐらい前か分からないが獣人族であった事があるからな)
「ねぇ、驚いたでしょ………………そうでもないようだね、つまらない男だな」
「子供達と一緒にここまで来たからな、それで慣れたんじゃないのか」
「ふ~ん、まぁいいけどさ」
この港町ゴフリックは獣人族だけでなく、人間族もドワーフ族もエルフ族もいるそうだ。
街並みは港に近い場所の建物は石造りで建てられているが、内陸になるにつれ木で作られたロッジのような建物が増えてくる。
街の外観にはアンバランスさがあるが、雑多な感じと言うよりもどこか昔のリゾート地のような雰囲気をかもしだしている。
肌に触れるこの風の匂いは港町エライサの様な漁村の匂いとは違ってどこか爽やかな風が流れているようだ。
「あのさ、此処に到着してからどれぐらいが過ぎたんだ」
「五日だよ、昨日までは子供達はこの街にいたんだけどね、憲兵の報告が終わったら帰って行ったよ。ただみんなあんたに感謝していたね」
「そうか、元気に帰ったのだったらいいか」
寝ている俺の姿を見せたらしいが、私が辻本であった時は半目で寝るのが癖だったので、この身体でもそれだったら恥ずかしが、聞きたいとは思わない。
「人間族は目を開けたまま寝るんですねって言ったよ、恥ずかしいからその癖止めな」
「俺だって止めたいけど、どうやるんだよ」
「知らないけどどうにかしなよ」
「治す方法があったら教えてくれよな、まぁそれより王都にはいつ向かうんだ。俺も自分で動けるから直ぐに行けるんだけど」
クヌートの事もあるし早く王都に行って、先の事を決めたいと思う。
「それがね良く分からないんだよ、私達が此処にいる理由は昨日帰った子供達を見送る為でもあんたの回復を待つ為じゃないんだよね」
「まさかと思うが、まだグシュバッハ共和国の連中が到着していなとかじゃないだろうな」
「それがそうなんだよね」
ファーウス子爵はずっとグシュバッハ共和国の使者団を待っていたが、これ以上待たないで先に王都を目指したいとこの街の衛兵に交渉をしているそうだ。
だが獣人族側としてもなるべくなら一緒に行動して欲しいらしい。
「どうしてなんだろうな」
「さぁ分かんないけどね」
「私は一緒に行動してくれた方が良いんだけどな」
さりげなく現れたオスカリが会話に入ってきたので心臓の鼓動が高まるが、何時も驚いてばかりではいられないので動じていない振りをする。
「グシュバッハ共和国にも顔を売りたいからな、それに彼等だけだと少し可哀そうな気がするからね、子爵はそこはどうでもいいらしいが、そこは商人との考え方の違いだろうね」
グシュバッハ共和国にとっては只謝りに王都に行くし、その情報はこの国の獣人達に広がっている可能性もあるので王都迄の道のりがあまりいい事ではないだろう。
そこでオスカリが上手い事立ち回れば新たないい関係が共和国と商会との間で築けるかもしれないと思っている。
姑息な手段かも知れないが、その考えはよく理解出来る。
この状況を利用すれば商会に更なる業績を運んでくれるはずだ。
「それじゃファーウス子爵の直談判はオスカリの邪魔をしてるって訳? 止めた方が良いんじゃない」
「そうすると子爵との関係が悪くなるかもしれないだろ、だからここは運に任せるしか無いんだ」
「色々と大変ですね、あっちにもこっちにも気を使うなんて」
「そうでもないさ、それが仕事だから仕方が無いんだよ、ただね、ファーウス子爵は共和国の使者団とは一緒に行動したくないんだ。その気持ちも分かるけどな」
「どうしたんです」
実は少なからずとも船に損傷が出てしまったので船員が船を修理していると、一人のベテランがある事に気が付いてしまったそうだ。
「それは何です」
「魔海獣避けの魔石に誰かが手を加えた形跡が見つかったんだ」
「まさか、そのせいで」
「その通りだね、僕もおかしいと思ったんだよな、魔道具か正常に作用していたら水竜に何て襲われる事なんて無かったんだ」
それを知った誰もがグシュバッハ共和国からの嫌がらせだと思っているのだろう。




