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第四十五話 目覚め

 目を覚ますと目の前には俺を覗き込んでいるアーリアの顔があり、頬に触れている髪が何とも言えない気持ちになってしまう。


(こんな事で動揺する歳じゃないだろう、しっかりしろよな私よ)


「やっと起きたんだね、無茶するからだよ」

「仕方が無いだろ、えっ何だよこれは」


 俺の身体が何かに挟まっているのか全く身体を動かせないし、力も全く入らない。


「それよりも今から薬を飲ませるけど、絶対に途中で止めたら駄目だからね、いい」


 身体が怪我をしているのなら自分で治せると言いたかったが、それを話す前に液体を口の中に流し込んでくる。


 かなり臭い匂いがするし、酸味が強く不味いので飲み込もうとしても身体が拒否して吐き出したくなるが、アーリアががっちりと口を塞いでいるので吐きだす事が出来ない。


「ん~んんん、ん~ん」

「無駄な抵抗なんてしていないで早く飲みなさいよ、たったこれだけで金貨一枚もするんだからね」


 中々飲み込めず口の中一杯に嫌な味が広がるが、アーリアは全くその手を放してくれないので、身体中から冷や汗を流しながらようやく胃の中に落ちていく。


 直ぐに身体の中から熱くなってきて、全く力が入らなかった身体に力が満ちてくる。

 実際は何も固定されていなかった身体は自分の力で起き上がる事が出来た。


「飲ませたのは何だよ、まぁ動けるようになったから文句は言いたくないんだけどさ」

「だったら良いじゃない。しょうがないでしょあんたの身体が中も外も酷い状態だったんだから」


 そうだとしても回復魔法を試したかったが、アーリアの嬉しそうな顔を見ていると余計な事は言わない方が正解のように思えてきた。


「助けてくれてありがとうな」

「良いんだけどさ、わざわざ海に飛び込む必要ってあったの」

「水の中にいないと使えない魔法なんだよ、まぁ効果はいまいちだったけどな」


 ここが海の上でなかったらバルドゥルの魔法に拘らなかったが、どうしても試してみたくなったのはバルドゥルとしての意識が強かったのだろう。

 結果は練習もしないで感覚だけでやったのは失敗だったと認めるしかない。


 昔の私なら何をするにしても慎重に行動をして、少しでも不安があるのなら行動に移せなかった私だが、どうもこの頃の私は行動が思考より先に行ってしまっている。


 何も出来なかった私はこの過剰とも言える力を持ったことで浮かれているせいなのだろう。そうでなければ只の馬鹿に成り下がったのかも知れない。


 人生経験を長く積んだと言うのにこの行動は恥じてしまうが、私の中にこんな事をする自分がいたと思うと少しだけこれでも良いかとさえ思えてくる。


 そもそも年齢を重ねたからと言って頭が良くなると思っているのは幻影なのだから。


「お~い、お~い、何自分の世界に入ってんのよ、その気持ち悪い性格は直してくれないかな」

「はいはい、リプレイ」


 ほんの数秒間違えて戻ったのでまたしてもあの味を味わってしまったが、今度はただお礼を言うだけに留まった。


「そうそう、ここにいる子達以外はもういないからね」

「えっ此処にいないって……もしかして此処は海の上じゃないとか?」

「そうだよ、ここが船の中の部屋には見えないでしょ」


 確かに壁は土壁になっているし、下は全く揺れていない。管理人は直ぐに目覚めると言ったような気がするが、気のせいだだったのか。


 私が動揺しているとクヌートが近寄ってきた。


「どうかしましたか、まだ横になっていた方が良んじゃないですか」

「違うんだよ、具合が悪い訳じゃないし、リーボルト王国に到着した瞬間が見れなかったのもまぁいいとするけど、子供達と親との感動の場面を見れなかったのはちょっとな」


「しょうがないでしょ、何時目覚めるか分からないあんたが起きるまで合わせませんなんて言える訳ないでしょ、それでも待てって言うべきだったの」

「そんな事はいわないけどさ……」


 私の単なる我儘だとは思うが、それでも水竜を倒したりしたんだから少しは配慮して欲しかった。


「あの、僕や残りの四人の子供は王都で再会する事になっています」

「君達の村は王都に近いんだ」

「僕の親はそうでは無いんですけど」


 もしかしたらこっちの都合なのかも知れないし、何か別の理由があるのかも知れない。

 

(まぁこっちの都合だろうな) 


 

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