第四十四話 彼の名は管理者
『いやぁ~面白い事になっているじゃないか、こんな事になるとはね』
「えっリシオじゃないよな、神様だよね」
『残念ながら僕はね、神と言う存在じゃないさ、そうだね、管理者だと言った方がしっくりくるかな』
この場所はまたいつもの場所らしく、何も無い世界のように思える。
「もしかして私はまた死んだのか」
『いや生きているよ、ただ魔王に身体を乗っ取られて魔力の全てを出し切ったからね、このままだと暫く目を覚まさないだろうね』
目を覚ましたとしても身体の自由が無いのだったら意味が無いし、色々な疑問が頭の中を駆け巡っている。
「どうしてリシオに身体を乗っ取られたんだ? これからは奴があの身体を使うのか」
『どうだろう、それにねあれはリシオと言ってもあの時のリシオの欠片であって本体とは違うんだよね、消す事も出来るけどどうするか決めなよ』
少し気になる事があるが一つずつ解決していくしかない。
「あいつは俺の身体で人は殺していないだろうね」
『人殺しは君自身がもうやっているのに何でそれにこだわるんだろうね、まぁ彼は何もしていないよ』
「なぁこれは予想で来たんじゃないか、私の魂じゃないのに勝手に入れるからこんな事が起きたんじゃないのか」
『予想なんてできるかよ、ただ面白いかな~って思っただけさ』
もし今の私に身体があるとしたらこの管理者をどうにかして殴ってやりたい。この気持ちはどの世界の私でもそう思うはずだ。
「もういいよ、さっさと魔王の欠片を消してくれよ、そうすれば普通に戻れるんだろ」
『そうだけどさ、少しだけ残してみないか、ちょっとこの先どうなるか見てみたいんだよね、それに本体と合ったらどういう反応するんだろうね』
やはりこいつはこの私を見て遊んでいるとしか思えない。それにさりげなくだが重大な事を漏らしている。
「魔王リシオはこの世界で生きているのか」
『そうさ、彼は不死族だからね、君に魂は死んだと思って諦めたみたいだけど向こうは諦めていないさ』
「あのさ、もしかしたら他の者だった時にもこのような事があったのか」
『このようなって何だい』
「私が死んだと勘違いして戻ったという事だよ」
『…………』
直ぐに答えるのかと思ったが中々答えてくれない。いなくなったようには思えないので、これはどうとられたら良いのだろうか。
『今更いいじゃないか、それにリシオ以外は君なんだから変な風に考えると何も出来なくなっちゃうぜ』
「そうなんだけどさ、他人のように思えてしまうんだ」
『記憶を鮮明に残すと君の頭では確実にパンクするからね、仕方のない事だよ』
よくは理解出来ないが辻としての記憶は鮮明に残っているのだから良いと思うしかない。
「あっそうだよ、魔王リシオは何処にいるんだ。魔国じゃないのならどうにかしないといけないと思うんだが」
『まぁいいじゃないか、彼は昔のように簡単には人を殺さなくなっているしね、君の言う通り、魔国にはいないけど……まだ気にしなくていいよ』
(魔国にいないだと、骨男がどうやって生きているんだろうか。魔族を恐れない種族がいるのだろうか)
「何だか分からなくなってしまったな、整理するとどうなるんだ」
『簡単さ、さっきは君の意思の反して乗っ取られたけど、他の連中は君でもあるのだから大した問題じゃないさ、ただっ魔王は特別だからもうああはならないように力を奪うよ』
「本当にそれで大丈夫なのか」
『君が生きる事を諦めなければね』
余りにも抽象的なので少し嫌になるが、リシオでないのなら良いと思うしかない。彼等は私なのだから。
(気が付いていないんだろうな、君はもう本来の辻本では無いんだけどな)
「あのさ、このまま話すのも良いけど、いつ現実の世界に戻れるんだ」
『リシオの欠片を魔力に代えたからもう少しだよ、もう何も考えなければ直ぐに目を覚ますだろうな、また何かあったら話そうよ』
これ以上考えるのを止めると現実と非現実の間を浮遊している様な気がし、暗かったこの世界が暖かい光に包み込まれていく。
「お~い、そろそろ目を覚ましなさいよ」
「お姉ちゃん、駄目だよそんなに強請ったら」
「シューヤが起きないと出発出来ないんだよ、それでも良いの」
(あ~五月蠅いな、もう少しこの世界で眠らせてくれよな)




