第四十一話 港町エライサ
港町エライサには出発してから十日を過ぎてようやく到着した。
俺達だけならもっと早く此処までこれたのだが、帝国の思惑と子供達に無理をさせない為なのだからこれぐらいは気にしない事にする。
このような気持ちになったのは四日前にオスカリと話してからだ。私はずっと早く帰してあげたいとそればかりを考えていたが、オスカリは子供達の心のケアもしながら移動しているらしい。
ただこの手柄もファーウス子爵に渡す事によってこの旅を円滑に進めている。実際にはここまで提案しなければファーウス子爵の重い腰は上がらなかったそうだ。
港町エライサは貿易の港だけあり他国の商人で溢れているし、そこには人間だけでなく他種族の者達も働いている。漁村とは違っていて、建物は海風に負けないように平屋の石造りで出来ているし、皆に近い所では大型の倉庫がいくつも並んでいる。
「ねぇシューヤ向こうにいるのはドワーフ族だよね、それに……」
「指を差すなよ、失礼だろ、ほらっ恥ずかしいから落ち着きなって」
アーリアと二人だけで探索しているのだが、この街独特の珍しい光景にさっきからアーリアの興奮が治まらない。
私自身ももっと他種族を見て興奮するかと思ったが、私自身が他種族になっていたせいか彼等を見ても何とも思わない。
「君はよくそんな冷静でいられるな、普通は初めてこの街に来ると興奮するもんなんだけどな」
いつから私達の後ろにいたのか知らないが、急に声を掛けられると心臓を直に掴まれたように痛くなる。
「ちょっといきなり話し掛けて来ないで下さいよ、オスカリさんは此処にいていいんですか」
「僕だってたまには自由にさせてくれよ、それより質問に答えてくれないか、君はこの街に来た事あるのか」
(…………リプレイ)
「ねぇシューヤ向こうにいるのはドワーフ族だよね、それに……」
「そうだな、すっげ~あっちにはホビット族もいるじゃないか」
(早くこの恥ずかしい会話を止めてくれないかな、どうせ声を掛けたいんだろ)
「この街は特殊だから珍しいだろ」
「うわっ驚かさないで下さいよ、オスカリさんはこんな所にいていいんですか」
「たまには自由になりたいんだよ」
それ以上の言葉はオスカリから出てこないので、恥ずかしいのを我慢して興奮した振りは正解だったようだ。
「ねぇこんなにも他種族が一緒の場所にいて治安は悪くないの?」
アーリアは他種族間の間には色々な問題があるので心配しているが、私はその心配は少ないと思っている。
「ん~んそうだね、シューヤ君はどう思うかな」
「そうですね、ここに来る者達はちゃんと目的がありますからね、上の方達が下の者達に揉め事を起こさないように強く言っていると思いますよ」
「まぁ正解だね、彼等は友好国の者達だし、此処での揉め事は国同士の問題にすり替わる恐れがあるから大事にはならないようにしているんだよ。それでも喧嘩とかは起きるけど、他の街に比べれば平和な街さ」
もしクヌートが自分の国に帰れなかったら此処で働くのも良いかも知れない、ただその事はクヌートにはまだ言えない。出来れば逃げ道が確定していない状態で問題に向き合って欲しいからだ。
「どうしたの、シューヤ」
「あぁちょっとね、そうだっ俺達が乗る船はどれですか、見学したいな」
◇
リーボルト王国に渡る船として用意されたのは三隻で、豪華客船ほどの大きさでは無いか、普通の漁船よりは大きくなっている
「いやぁ、これは大きな船だね、この船だったらなかなり早いんだろうな」」
アーリアは何の船と比べているんだろう?
この世界にエンジンはあるのだろうか?
オスカリの視線が気になるので下手な事は言えないので、ただ珍しそうな顔をして船を見ている。
「波打ち際に行かなくていいのか」
「実は水が苦手なんですよ、海は何処までも続きますよね、それを考えるだけですくみ上りますね」
自分で自分を褒めたくなるほどの言い切り返しだと思う。子供の為に恐怖を乗り越えて船に乗ろ込む私は良い奴に見えるのでは無いだろうか。
「苦手か、川もかね」
「浅ければ大丈夫ですよ、脚が届かない場所で子供の頃に嫌な思い出があるので」
これは嘘ではない、子供の頃は浅くとも深くともどうでも良かったが、調子に乗った私は海で離岸流に攫われてしまって、全く脚が届かない所まで運ばれてしまった。
下を見ると青黒い海が広がっていたのでそれ以来、海には近寄った事が無い。
ただし、魚人族だったことがあるのでその恐怖は払しょくされている。
「それなら船の中を案内しようか、見れば安全性が分かるだろう」
「お願いします」
「私はいいや、海を見てくるよ」
アーリアは言ってしまったのでオスカリにこの船の説明を私は聞いている。
船の動力はエンジンではなく魔道具によって動くのだそうだ。
(何でも魔道具か、変わった世界だよ、ここは……)




