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第三十七話 思惑

 あれから何日が過ぎたのか分からないが、今は公園でグレイハウンドと言う魔獣の串焼きと格闘している。

 グレイハウンドもしくは魔猪と言う名なのだが、フレイクとしても見たことが無いらしくどんなに記憶を探っても姿形が出てこない。


 他の私の記憶を探ろうとしたが、そのような些細な記憶を無くしているのかそれともただ単に思い出せないのか分からないが、結局どんな魔獣なのか分からなかった。


「あんたさぁそんなに暇なの? 串焼きを噛みしめながら浸っていないでくれるかな」

「何だ、アーリアか分かっていないからそんな事言えるんだよな……リプレイ」


 怖っ、もう少しで殴られるところだった。イラッとしたからとはいえ不用意な発言だったな。


「あんたさぁ……」

「いやぁ転移魔法を身に着けるにはもっと魔力が必要なんだよね、だからどうしようかなって」

「あんたほどの魔力があって使えないなら無理じゃないの? それに転移魔法何て聞いた事ないよ、それにさ、そんな事より階級を上げたらどうなのよ、未だにE級じゃない」


 私が密かに気にしている事を簡単に行ってくれるが、この事が終わったら上げる予定なのだから少し黙っていて欲しい。


「そうだよ、どうせE級だよ」

「だったら少しは仕事をしなさい。あんたに指名依頼が入っているそうよ」

「俺に指名だって、E級の俺にか」


 ◇


 受付で指名依頼の確認をすると、護衛団の一人としてリーボルト王国に行く事になっている。わざわざ指名依頼にしたのは階級を上げるためのオスカリの優しさなのだろう。


「勿論受けますよね、中枢の小隊と一緒に行動する特別な依頼になりますが、難易度が高いので全てをクリアしたらC級に上がれますよ」


 帝国の中枢の部隊と冒険者が一緒に行動するのも稀だし、海をこえてつい最近まで敵国であったリーボルト王国に行かなければならないので通常ではあり得ない破格の条件が提示されている。


 確かにその事は嬉しいのだが、それ以上にいよいよあの子供達を送り返す事が出来るので私もあいつも喜んでいる。


 ただどうして帝国の中枢が動いたのかは気になるが、どうせオスカリが司令官に何かを言ったの決まっている。


 ◇


『ムック、聞こえるか、アーリアと一緒にいるのか』

『はい聞こえます。公園の隣の店で私を膝の上でずっと背中をさすっているのが煩わしいのですが』

『それはいいんだけど、アーリアをオスカリの店まで連れて行ってくれないか。出来るか』

『大丈夫です。言葉は通じなくても上手くいくんですよ』


 ムックは私の事をご主人さまと言う割にはずっとアーリアの側にいる。二人で討伐に行ったりもしているくせに聞く度に文句を交えてくるのは意味が分からない。

 それにムックとアーリアの間には何か繋がりのような物をこの頃感じている。


 私は乗合馬車でオスカリの店がある地区に向かっていく。

  そして、店に入ると直ぐに私の顔を覚えている店員が近寄っきて、オスカリのいるところに案内してくれた。


「オスカリ様、シューヤ様がお見えになりました」

「どうぞ、中に入ってくれ」


 その応接室の中にはオスカリと部下だけでなく、アーリアとムックもいたのだがそのコンビだけは私に気が付かないでお菓子を貪っている。


 お菓子を食べているアーリアの顔は正直に言ってあまり見たくない。折角の綺麗な顔が全て台無しになっているようだ。

 

 まぁそれを気にしない性格だから冒険者をしているのだろうが。


「何て顔して私の事見てるのよ」

「何だよ、気が付いていたのか」

「当たり前でしょ」


 仕方がなくアーリアの隣に座るが、オスカリの部下からの視線は何故か冷たい。


「お前ら何でそんな風な目で彼を見れるんだ。だからもっと人を見る目を養えといつも言っているだろうが、いいか、彼はあの護衛団にいたんだぞ」

「もしかしてフィンレイさんが入っていた護衛団ですか」


 フィンレイとは誰の事だか分からなかったが、あの時に回復薬で助かった内の一人なのだろう。彼の事は記憶にないので出来る事ならブルクハルトがいてくれた方が助かる。


「あの、いいですかちょっと説明をして欲しいんですけど」

「そうだよな、いきなり指名依頼をして悪かったな」

「どうしてあんな大掛かりな事になったのですか」

「それはだね」


 あれからオスカリはそのままアズリ司令官を尋ねた訳ではなく、貴族通しで繋がりのあるファーウス子爵と手を結んで交渉をすることになった。


 オスカリにとっての利益はリーボルト王国との繋がりを作る為だ。そしてファーウス子爵の利益は彼はこの街の領主になる事が約束されているので、この事を街中に広めて民衆の人気稼ぎの為だ。


 現領主も息子の為ならばと尽力をして、アズリ司令官との交渉にも立ち会った。

 帝国軍も力を直ぐに貸したのは貴族の意見を尊重する良い皇帝だと帝国内に広めるためだ。出来る事なら皇帝は帝国軍主体でやりたかったのだが、獣人族に対して未だに下に見ている者の反対によりその話は流れてしまった。


「そこまで話が行ったのですか、上手い事に思惑が重なりましたね」

「やはり君は面白いな、とてもじゃないが只の田舎の冒険者とは思えないな」


 それなりに生きているんでねとは決して言えないけどね。



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