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第四話 繰り返す

 全く、あの声の持ち主を何て呼んだらいいのか分からないが、どうして当たり前の事が出来ないのだろうか。


 確かに次の転生先でのおいらは世界中を自由に行動する男だけど、まさかの魚人族鮫種だよ。

 バルドゥルと言う名はちょっと好きだけどさ、まだ私が混乱している最中に馬鹿デカい魔海獣に飲み込まれていきなり死ぬなんてあんまりじゃないか。


 それで本気で切れて、簡単に死なない様にしろって怒鳴ったらこの有様ださ。確かにこれなら簡単に死なないだろうし、魔法が使えるなんて凄い事だよ。

 頭に思い浮かべただけでも数えきれない位の魔法が使えるのだから、無敵じゃないかと錯覚してしまうぐらいにね。


『そうだろ、良いじゃないか、それなのに君は何が不満なのかね、僕はねエリートの家系に転生させたんだよ、ただその身体はすでに何百年と生きているけどね』


 あのな、今の私は不死族のワイトだっけ、よりによって魔族じゃないか、それのこの身体は骨しかないんだぞ。


『良いじゃないか、君は魔王なんだよ、この世界で好きなように生きればいいんだよ……まぁ記憶を取り戻すタイミングが悪いのかな」


 そうだよな、それに直ぐに同化出来ればいいのに何故かそうならないから一年も昏睡状態だってな、そのせいでこの国は酷い事になっているじゃないか、どうするんだよ。


『ほらほらちゃんと部下に指示をしないと危ないよ、本当だったら死なないんだけどね、相手が悪いよ』


 ふざけろよ敵は勇者じゃないか、私(儂)が眠っていたせいで統制が効かなくなった部下が随分と人間の国で暴れたよな。


『君も昔は随分と酷い事をしていたけどな』


 それを言うなよ、思い出すと罪悪感で吐き気がするんだ。


「魔王リシオ様、奴らの半数は殺せましたが勇者の勢いが止まりません。もうすぐこの魔王城に到着するでしょう」

「何とかならんのか」

「良い報告があります。ドクトが勇者の子供を攫う事に成功し、帰還いたしました。いかがしましょう、召し上がりますか」

「食べる訳無いだろ、あのさ、それって本当に勇者の子共かな」

「勿論です。それでしたら勇者の前に子供の死体を晒してやりましょう」


 はぁそんな事をしたら勇者の怒りはMAXさ、冷静を失った勇者なら倒せるかもしれないけど、その後ろに控えている勇者連合がまとめてくるだろうね、子供を利用するなんて人間には決してしちゃいけないのに、何でそんな事するかな。



「放せ~、お前ら正々堂々と戦え」

「静かにせんか」

「ぐっ、ぐぎゃ~~~~」


 あ~扉の向こうから叫び声が聞こえてくるんだよな、もう嫌な予感しかしないんだけど。


「魔王リシオ様、この五月蠅いガキが勇者の子供です」

「そうか……って、おい」


 見るからに鬼のような頭部を持ったスケルトンのドクトが私(儂)の部屋に入って来たが、手に持っているその子供の身体は半分しかない。


「お前っ死んでいるじゃないか、せめて人質にするなら殺すなよ」

「そんな人間みたいな下衆な真似はする訳ないじゃないですか、いいですか、これを魔王城の門の前に掲げたらあの勇者は怯えて逃げるんじゃないですか。ハハハッこれで勝ったも同然ですぞ」


 私(儂)以外の不死族は楽しそうに笑い出すが、私(儂)は肉体があったら顔は青くなっている事だろう。

 そんな事をしたら、勇者は更なる怒りに震えて此処にいる連中を全て殺すまで許したりはしないに決まっている。


「お前らな、勇者を焚きつけてどうするんだよ、そもそもなそんな事をする魔族が大嫌いだ」

「どうしたんです。何をそんなに怒っているんですか」

「五月蠅い、お前らじゃ遊びで人間を殺し過ぎなんだよ……もういい滅ぼしてやる……メギド」


 頭の中で勇者の子供の死体を見て笑っている儂もいるが、私にはそれが許せない。この私(儂)が知っている最大の火炎魔法で魔王城ごとその中にいる全ての魔族を滅ぼした。勿論この私もだ。


『いやぁ~お疲れお疲れ、やはり魔族は無理があったか、もしかしたら君なら平気かなって思ったんだけど無理だったね』


 ちょっと待ってくれよ、いくら何でもあれは無いだろ、私は記憶を取り戻すまでにどれだけの人間を殺したと思っているんだよ。いくら何でもそれは…………。


『ごめんって、実は君の魂はあそこには入っていません……お~い、どうした。何を固まっているんだい』


 えっどういう事だ。私はあいつが何をしてきたのか思い出せるんだぞ。


『ちょっと暇つぶしに実験したんだよね、君の記憶を魔王に入れたらどうなるのかなって、だから君の魂はずっと此処にいたんだよ」


 えっあの昏睡状態の一年は何だったんだ。


『お互いの拒否反応だろうね、だからさ魔王の意識を閉じ込めるのは苦労したんだぜ、それが一年かかってようやく上手くいったから君は魔王リシオの身体を使用で来たんだ……どうしたの、怒っているのかな』


 それもあるけど、私は人を殺していなかったんだよな……良かった。


『その反応は予想外だったけど、まぁいいか、今度は立派な人間の身体に転生させてあげるよ』



 その言葉通り私は勇者の刻印を持った体に転生し、記憶が戻ったときはこれからの人生が輝けると信じていた。


 確かに魔力は魔王並に持っているし、肉体だって魔力を纏えば普段の10倍以上の力が出るなんて凄い事だよ。しかし国王様から任命を受けてこれからって言う時に病気で死ぬなんてあんまりじゃないか。


『君が浮かれて馬鹿みたいに裸で眠るから病気になるんだろ。どんなに優秀な肉体を持っていてもあれじゃぁね、君は、辻本修也は本当に人生をやり直したいのかい。あのまま勇者クレメンテとして生きていれば君の言う輝ける未来があったんじゃないか』


 そうだったかもしれないけど、そうだよな……私は、辻本は夢を見てはいけない男なのかな……。


『悪かったよ、ちょっと僕も言い過ぎたようだ。そもそも辻本でなかったら此処で肉体があるなんてありえないんだからさ、それだけで凄い事だと思うよ。たださ、次で最後にしてくれないかな、その代わりに誤った行動してもそれに対応できる魔法を上げるよ、これは勇者も魔王も使えない魔法何だぜ、けど一つだけ条件があるんだ。僕は直接には世界に介入する事が出来ないからさ、僕の代わりに助けてあげて欲しい人がいるんだ。いいよね』


 ……最後か、それで誰を助けるんだ。

 お~い、教えてくれって……。

 



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