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その四 リシオは進む

 街の中央部にある門の中に入って行くと、ここではかなりの抵抗があったのか、ようやく魔狼や傀儡の死体が何体も転がっていた。


「これぐらいは人間もやってくれんとな」


 すると近くに倒れている兵士と目が合ってしまったので、辛うじて傷口を塞ぐだけの魔法をかけてやった。


「有難う、悪いんだがこの先にある領主館に向かってくれないか、まだ領主様を逃がす事が出来ていないんだ。頼む」

「任せてくれ、君は安全な場所に移動するがいい。領主の事は私に任せてくれ」


 身体を引きずりながら去って行く兵士を見ながら領主館の方へゆっくりと歩いていく。


 さて、領主館の方はどうなっているかの、おい、そっちにいる魔狼よ、状況を報告せよ。

 ……なんじゃ、ほぼ兵士は殺し終えたのか、弱すぎるの此処の人間は。

 お前らそれ以上は殺さなくていいからな、ただ何処かに上手く追い詰めろ。


 倒れている兵士を少しだけ癒しながら歩いて行く。決して戦闘に参加出来ない位に治すのは面倒だったが、計画の邪魔はさせたくなかった。


「もっと治してやりたいが、これで我慢してくれ、少しでも魔力を温存しておきたいんでな」

「何をおっしゃるんですか、これだけで充分です。どうかあいつらを倒してください」


 ふんっ、所詮は人任せか、どいつもこいつもカスじゃな、人間は勇者のような奴らばかりだと思っておったが、こんななら昔に攻め滅ぼしても良かったわい。

 まぁ今更どうでもいいがの。


 兵士が教えてくれた道を進んで行くと、他の建物とかなり違った煌びやかな建物が見えてきた。


 どうも顕示欲が強い領主なのか、こんな物に金を掛けるよりもっと城壁を堅牢なものにすればよかったじゃろうに。

 

 魔狼の気配を探るとどうやらこの奥に集まっている。

 そこは倉庫のようで、魔狼達は中に入ろうとはしないで入口の前で唸り声を上げていた。


 どうするかの、出来れば領主が見ている前で討伐した方が良いんじゃが。

 んっ、小窓から覗いているな、もしや。


 小窓から見られないように倉庫の裏側に回ると人が集まっている気配がある。

 もしかしたら脱出できる何かがあるのかも知れない。

 だが、何かがあってそれ以上は動けない様だ。


 そうじゃ、魔狼達に正面の入口を壊させて、儂がこの壁を壊せばここから出てくるかの。


 魔狼にわざと声を出させ、入口の鉄の扉に体当たりをさせているときに裏側の壁を【鉄槌】で壊してみた。


「私は味方だ、早く此処から逃げ……んっ?」


 砂煙が舞い上がっている中で、中から車輪のついた台車の上に傷だらけの子供が乗せられて飛び出てくる。


「何じゃこれは」


 すると人間の気配が倉庫の反対側から飛び出て行くのが感じられた。


 もしかして向う側に隠し扉があったと言うのか、それでこのガキは生贄と言う訳か。


 どうやらその生贄は脚を怪我しているようで逃げる事も出来ずただ泣き叫んでいる。


 おいっこの中にはもう居ないぞ、早く外に出て人間を追い詰めて置け。


 リシオはその子供に近づいて怪我をしている脚を癒し、そっと頭の上に手を置いた。


「もう痛くないだろ、ぼうず、どうしてこうなったんだ」

「わぁ~ん、あぁ~わぁ~ん」


 恐怖で会話も出来んか。


「いいか、此処を動くなよ、また来るからな」


 煩わしい子供をそのままにして逃げた連中を追いかけようと思ったが、その子供がリシオの服をしっかりと握って話してくれない。


「う~ん、そんな暇はないんじゃがの」


 リシオは【スリープ】の魔法で子供を寝かせそのまま行こうと思ったが、服を握られたままだったので抱きかかえたまま後を追う事にした。


 反対側では十人程の人間が魔狼に囲まれていて逃げ場を失っている。

 その中には武器を構える者はいなく、傀儡の前に膝間づいてひたすら命の懇願をしていた。


「あぁどうか助けて下さい」

「金なら倉庫の中にいくらでもあるから好きなだけ持って行って下さい」

「どうか、命だけは……」


 誰が領主なのか分からないが、この中にはわざと服装を変えている領主が紛れているのだろう。

 どうしてそんな惨めが真似が出来るのか知りたくなったので傀儡の口を借りて質問する事にした。


「なぁ、反対側の壁から出されたあの子供は何なんだ」

「あぁ貴方がボスなのですか」

「聞かれた事だけ答えるんだ」


 一人だけ醜く太っている男が答え出したので、もしかしたらそいつが此処の領主なのだろう。


「あの子は庭師の息子で、その親ももう犠牲になって死んだんです。そしてあの子は自ら犠牲になって食い止めると言ってくれたのですが」

「そんな嘘が通用すると思うのか、これが人間の本性なのか…………」


 どうしてここまで怒りが湧いて来るのか自分でも理解出来ないが、怒りの感情に支配されそうだ。


 まぁもうこの街はどうでもいいか。

 本番は次にしよう。


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