第二十九話 ダンジョンに向けて
このままダンジョンに向かい、朝が来るのを待ってから中に入るのがアーリアの計画らしい。その事をアーリアは普通のように言ってくるが、私には理解が出来ない。
「あのさぁ何でダンジョンに入るのに朝まで待たなくちゃいけないんだ。中には昼も夜も無いだろうに」
「馬鹿なの、ギルドの職員がいない時間は中には入れないんだよ、勝手に入ったら罰金は取られるし何かあった場合は捜索隊も出ないんだよ」
中に入った私達を捜索するなど難しいように思えたが、ちゃんと受付をすれば居場所がある程度分かる魔道具を持たされるらしい。
危機があったとして、とても間に合うとは思えないが。
「魔道具ね」
「しっかりしてよ、基本でしょ」
フレイクが聞いた事は意識しないと思い出す事が出来ない。辻本の記憶なら簡単に思い出す事が出来るのに何だか不思議な感じだ。
「この街の宿はどうするんだ」
「荷物を回収してギルドに預けるんだけど……あんたは少しは憶えときなさいよ」
「仕方が無いだろ、前は宿じゃな無かったんだから」
多少のいざこざはあったものの、ダンジョンに向かって行くがムックはあまり興味が無いようでずっとアーリアの頭の上で眠っている。
「二人だけだと盗賊が心配だよな」
「平気でしょ、どう見てもお金を持っている風には見えないからね」
「そりゃそうか」
暫く休憩もせずに進んでいたので陽が落ちる前に馬を休ませる為に休憩をとる事にする。
「どうせだったら新鮮な水を汲んでくるよ、ちょっと待ってて」
『ご主人様、私もお供します』
今までずっとアーリアの側にいたムックだったが、今度は私の頭に乗りたくなったようだ。
別にこんな事で怒ったりはしないんだけどさ、仮にも私の事をご主人様って言っているのに頭の上に何で乗るのかな。
「出来れば料理用の水も汲んできてよ」
「そんなに持てる訳……空間収納魔法か」
リシオの記憶の中にそれがあったので後で試してみる価値はありそうだ。
それにしてもリシオの魔法の幅は凄いな。
なら勇者は……。
勇者の記憶の中から魔法の部分を思い出す。今迄は攻撃魔法の事しか頭になかったが補助魔法で魔力の消費が少ない魔法も見つけないといけない。
ふ~ん、面白い魔法を知っているじゃないか、ただ、私が一番欲しいのは回復魔法なんだよな……知らないか。
リシオはどうなんだろうか……良く知ってるね、身体の半分を崩壊させながら身に着けるなんて恐ろしい男だよ、何をしたいのかな。
『あの~ご主人様、ちょっとお耳に入れたい事があるんですか、よろしいでしょうか』
「何かあったのか、緊急じゃないなら後回しにしたいんだけど」
『私は別に構いませんが、人間が襲われているのはどう判断したら良いんですかね』
「えっアーリアの身に何かあったのか」
『いやいやあの小娘だったら報告何てしませんよ、それにあの小娘が簡単にやられはしないですからな』
ムックは何が楽しいのか分からないが、頭の上で尻尾を振っているので自分が言葉に出したことが面白いのだろう。
「分かったから、その場所は何処なんだ」
『向こうの林の奥になります。あ~けどもうすぐ終わりますかな、徐々に囲まれている側の人数が減っていますね』
「そうか……リプレイ」
感知して見たが距離が遠いのか私には分からない。ただムックを信じて時間を巻き戻せば少しでも被害が減るだろう。
『あの~ご主人様……』
「あぁ分かっている。悪いが元の姿になって私を運んでくれないか」
ムックは私の言葉に疑問を抱かないのか直ぐに元の魔狼の姿になり、乗りやすいようにしゃがんでくれた。
あれっいつから私はこんなに正義感が強くなったのだろうか?
別にわざわざ危険な場所に行かなくても良いんじゃないか。
そうだよな、さっき勇者の記憶を探ったせいだよな。




