第二十七話 街に帰ろう
これまでの過去の私から力を引き出せたのは、獣人族の感知能力と、勇者の魔法。そして私では無いが魔王の記憶からリシオの魔法も使う事が出来た。
魔法はまだほとんど試していないが、多分、使用できるのではないかと思っている。
もしそうなら、この私はほぼ無敵では無いだろうか。魔王は知識としてあらゆる魔法を記憶しているし、勇者は魔法に比べて魔法に種類は少ないがどれもが強力だ。
な~んてな、残念ながらこの私の身体ではそれらを使いこなす事が出来る訳が無い。圧倒的に魔力が少ないんだよな。
だけど、別に人類の救世主になろうとなんて思っていないし、冒険者として使用するには贅沢過ぎるほどの力は得ている。
まぁそれはそうと、何のとりえもないように思えるサンドールには何か特別な物があるのだろうか、どうせなら記憶を探るか。
……う~ん、何だろ、何て言ったら良いんだろ、ただ平民をどうやって苦しめたらいいのか次々とアイディアが浮かんでくる。
「あほか~~~~お前は」
叫んだ途端に邪気らしきものが身体から抜け、それに触れたのか鳥が飛び立っていく。
「えっどうしたの、何、何?」
『ご主人様、どうかいたしましたか』
私の大声のせいでアーリアは飛び起き、ムックは魔狼の姿に戻ってしまった。
「ごめん、夢か現実か分からなくなったんだ。ちゃんと見張りをするから休んでよ」
「あのね、そんな起こし方されて直ぐに眠れる訳無いでしょ、あ~あ、ムックはまた化け物に戻ってるし」
『何じゃと、儂が化け物だと~殺してくれる』
「あ~もう、リプレイ」
丁度、サンドールの記憶に触れているところだったので、それ以上深く探るのは止めた。
あいつは本当に性格が悪いな、あれで私なんだから恐ろしくなるよ。
それにしてもサンドールの人生は何だったのだろう。愛されて育ったのにあそこまで人格が歪むとはな、やはり両親の影響か……それでも私の記憶が戻ったのだから、もう少しまともな人間として生きてみたかったな。
◇
コモン鳥は一羽も掴めていないが、それなのにアーリアはご機嫌な顔でギルドに向かっている。
「ふふふふ~ん、ふんふんっ」
「鼻歌なんて珍しいな、ご機嫌じゃないか」
「当たり前でしょ、アラクネだよ、その牙だけでコモン鳥の何十倍もの価値があるんだからね」
どうして私が頑なに【炎の矢】に拘ったのかは、あの時はリシオの魔法を試したいと思っていたせいだと信じていたが、冷静に考えるとリシオの記憶がアラクネの弱点が火属性だと知っていたせいだ。
辻本として考え、辻本として行動していたつもりだが、あの時はリシオがかなり混ざっていたと思う。私は本当に私なのだろうか。
『小娘が、キャンキャンと騒がしいの、ご主人様、どうしますかお仕置きをしましょうか』
『ムックがアーリアの頭の上にいるから五月蠅いんだろ、嫌なら降りろって』
『いやっ、この場所はお気に入りでして……』
ムックの声は甲高く可愛い鳴き声をしているので、本当の言葉の意味を知らないアーリアはその声を聴いて喜んでいる。
「やっぱりこの子は可愛いな、お腹でも減っているのかな」
『黙れ、小娘が』
私の記憶は全てを記憶しているから混乱してしまうが、確かアーリアはムックの本当の姿を見たはずじゃないか、それなのにどうしてそんな態度が出来るのか不思議でならない。
◇
ギルドに到着し、アラクネの牙や無事だった脚を見せると、受付嬢が青覚めながら慌てて裏に下がってしまったので私とアーリアは顔を合せている。
「あの子はそんなに蜘蛛が苦手なのかな」
「珍しいだけでしょ」
ば~~~~~~ん、
いきなり扉が開き、2mを超える大きな中年男が飛び出してきて、俺達の前に座りアラクネの残骸を一瞥した後、後から付いてきた職員に手渡した。
「おいっあれを本当に倒した奴は誰なんだ」
いきなりその男は私達では討伐が出来ないと疑っているようだ。確かに冒険者に慣れない犯罪者がダミーの冒険者を雇って討伐の報奨金を得る事があるらしいけど、それだと思われたのだろう。
「俺が倒したんだけど」
「E級のお前がか……」
目踏みするような目で見てくるので思わず目を逸らしたくなるが、このような場合は意地でも目を見ないと碌な事にならない。
『ご主人様、殺しましょうか』
「駄目に決まっているだろ、あっリプレイ」
間違えて声に出してしまったのでまたあの目を見続ける時間が長くなってしまった。
「そうだ、ちょっと見てみますか、信じると思いますよ」
目を逸らす理由を思いつき、目の前で【混沌の弓】を出してから【炎の矢】も出してみたこれなら誰が見ても理解してくれるだろう。
「何なんだこれは」
「どうです。珍しいでしょ」




