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第三話 もう一つの世界

「暑いな、此処は何処なんだ」


 それにしても汚い場所じゃないか……いや、仕方が無いんだよな、場所が場所だし……。


「え~~~~~~~~~」


 小汚い小屋に中で寝ていた私(俺)は二つの意識がごちゃ混ぜになっている中で、この前以上に混乱をしてしまい、こんな場所で叫んでしまった。


 この場では相応しくない大声を上げてしまったので、半分腐っているような扉から毛深い筋骨隆々の男が飛び込んできた。


「隊長、何かありましたか」

「えっあの、申し訳あり……いや、ちょっと悪い夢を見ていただけだ、下がっていろ」


 副官であり、いつもは見慣れていたパドゥの顔を見た途端に叫び出したくなった。なにせどう見ても狼男だからだ。

 この事を当り前と思っている俺と、混乱の極みの私の意識が頭の中で争っている。


 お~い、ちょっと話合おうじゃないか、これはいくら何でも酷いじゃないか、聞こえているんだろ……今度あったら只じゃおかないからな。


 まてまて、そんな汚い言葉を吐く私じゃないだろ、まるでチンピラじゃないか。落ち着くんだ私よ、いいか飲み込まれるなよ。この年でそんな輩になりたく無いだろ。


 え~冷静に記憶を探るとまずこの世界の私(俺)はインベルガーと言って30歳の若さで独立部隊の隊長なのか、それにしても今回は記憶を取り戻すのに時間が掛かったせいか俺の意識がかなり強いな。


 おいおい本当に同じ魂なのか、親をリザードマンに殺され戦士として育ったらこういった人格になるのか……って本当かよ。


 (あぁお前は俺だ。何で理解出来ないんだ)


 んっ………………怖っ、落ち着け、落ち着け、私と違って簡単に受けいれるのか、だから隊長なのかな。


「失礼します、偵察が戻って来まして、捕虜にされた者達の居場所が分かりました」


 いきなり狼男が入って来ると思わず心臓が止まりそうになるが、そもそのこの私(俺)も狼男なんだ。正式には獣人族狼種と言うらしいんだけどな。


 記憶を取り戻したこの国は獣人族しか存在しないのだが、私の世界よりも部落や街同士の対立が激しく、平和とは縁の遠い国だ。


 確かに力が欲しいとは言ったけど、これはあんまりだな。あいつはわざとやっているのか、なぁどうせこのグチも聞いているんだろ…………返事しろよな。


「あの、それでいかがいたしましょうか」

 

 サラリーマンの俺に分かる訳ない……んっインベルガーの意識が強くなっている気がする……。


「場所は何処なんだ。いいか、今すぐ助けに行くぞ、集合させるんだパドゥ」

「了解しました。直ぐに出発しましょう」


 お~い、インベルガーさんよ落ち着きなって、何で作戦も考えないで行こうとするんだよ。捕虜施設があるのなら危ないんじゃないか。


「敵は最低限の人数しか配置していない様です」

「そうか、だったら解放した奴らも戦えば勝てるな」

「そうですね、いい予感がしますね」


 お~い、そんな予感なんかで判断するなよな、ちょっと誰かこの二人を止める奴はいないのかよ。大体なんでホフマンの時と違って身体を自由に動かせないんだ。何だかおかしいじゃないか。


『それはね、彼の仲間を助けたい気持ちが強いからじゃないか、落ち着けば君とちゃんと同化するから大丈夫だよ、そもそも同一人物だからね』


 いきなり話し掛けるなよ、まぁいいか、あのさ、この世界は戦いばかりだよね、確かに私(俺)は強いのかも知れないけどちょっと馬鹿じゃないか、部下もだけどさ。


『同化した後に君が立派な指導者になればいんじゃないか、隊長なんだからもっと出世するだろうしね』


 いやいや私はただ自分の身を守れる力が欲しかっただけで戦士なんてなりたくなかったんだよ。お前、いい加減にしろよな。


『ほらほら言葉使いがもっと悪くなっているよ、影響され過ぎだね』


 そう言われてもさ…………あ~向かっちゃったよ。


『あれは不味いな、向こうは待ち構えているからね、いやぁ~獣人族って無謀だね、あっ敵も獣人族か』


 ちょっと落ち着け、私の意識の方が強いんだろ、止まれ、止まれ、止まれ~。


「みんな、落ち着くんだ。一度基地に戻ってから作戦を考えるぞ」

「どうしたんです。まさか怖気づいたんですか、先程の演説は嘘じゃないですよね」

「嘘というか、間違いというか……」

「あぁいつもの冗談ですか、大丈夫ですよ、緊張何てしていませんから……あっもしかしてまた一人で行く気なんですね、確かに隊長は強いですけど今度は私達を信用して下さい」


 インベルガーの信頼が高いのか、それともパドゥが馬鹿なのか分からないが勝手に良い方に話を解釈してしまっている。


「よしお前らの気持ちは分かった。いいか俺について来い。奴らを全員ぶっ殺して仲間を助けるぞ」

「うぉ~~~~~~~~~」


 何なんだよ、こんな所で叫ぶなんて馬鹿じゃないのか、敵に聞こえたらどうするんだ。それにまたインベルガーが出て来ちゃっているしさ。

 あ~もう誰もが興奮しているじゃないか。


 確かにインベルガーの肉体は人間の時に比べれば強靭だし、訓練もしているから強いのは分かるんだけどさ、立派な戦士なのかも知れないけど指揮する男じゃないよな、だから私なのか。


「あっ隊長、敵に囲まれました」


 あ~あ~これは駄目だ。映画とかで見るやつね、そうそう弓で射抜かれて……はいはい、どんどん部下が死んでいくね、あ~そうですか俺は特攻すると……よくこんだけ暴れられるもんだね……へ~やはりそうですか。


『あら~また君は此処に来たの? そんな簡単に来れる場所じゃ無いんだけどな』


 知らないよ、俺が死んだからだろうが。


『まぁ仕方がないよね、それじゃもう十分だよね」


 あのね、そんな事を言うと本気で暴れるよ、いいかい今度はあんな世界じゃなくて平和で自由を謳歌出来る世界がいいな、そこで納得したら最後にするからさ。

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