第二十六話 魔王って奴は
リシオの記憶からは詳細な魔法の情報は引き出せなかったが、やはり魔王の魔法だけあってただの【火矢】では無かった。
あれからもう何度も試して森に被害を出す事は無くなったが、アラクネはどうしても跡形もなく殺してしまう。
『ご主人様、やらないのでしたら私が代わりにやりましょうか』
『いや、かなり手加減をしなくちゃいけないから悩んでいるだけさ』
『手加減ですか……』
【炎の矢】とアラクネが相性が良すぎるのか意外と難しい。
「ねぇどうしたのよ、早く討伐しようよ」
「あぁそうだうわぁ~リプレイ」
考え過ぎたせいでまたアラクネに足を取られる時間が来てしまった。
再び威力を弱めた【炎の矢】を放つ。これが失敗したら別の魔法にするつもりだが、どうせならリシオが使っていた魔法にしようと思う。
「ぎやぁぁぁぁぁぁ」
またしてもアラクネの断末魔が聞こえてきたので、私が指を鳴らすとアラクネに燃え移っていた火が消え、身体の半分だけは何とか原型を保っている。
もうこれでいいかな、それとも【光の矢】に代えようかな。
やはり魔王の魔法は扱い難いのかな。
「ねぇなんでそんな魔法が使えるのよ」
「それはちょっと、あれっ、ぐぅがっ」
「ちょっと大丈夫?」
◇
此処はもしかして私は死んだのか? まだ他に敵がいたというのだろうか?
『いやぁ君は相変わらず面白いね、魔王の魔法も発動できるようになったじゃないか』
そうだけど……私は死んだのか?
『違うよ、今の君は意識を失っているのさ、大体さ普通の人間の身体であんな魔法を何度も使ったら反動があるに決まっているじゃないか』
いや、【リプレイ】しているんだから一回じゃないのか?
『怪我とかは元に戻るけど、魔力はそうはいかないんだよな、あれっ言ってなかったっけ』
初めて聞いたぞ、それでいつまで私の身体はどうなるんだ。
『さぁどうなんだろうね、もういいかな、それより僕はあっちの方が心配なんだよ、折角、君と言う武器を用意したのに』
何を言っているんだ…………お~い会話の途中だって。
◇
『ご主人様、お身体は大丈夫でしょうか』
ムックの声は頭に聞こえているが、耳に聞こえるムックの声はいつもの様な子犬のような高い声ではなく、大型犬の低い声が聞こえてくる。
「えっ、あっ」
それもそのはずでムックは魔狼の姿に戻って心配そうな顔で私の顔を覗いている。
「目が覚めたんだ。大変だったね、いきなり苦しみながら気を失ったんだよ。そしたらムックがこの姿になってあんたを担ぐからさ、もう何が何だか」
「あぁ~ぐっ」
まだ痛みが全身を駆け巡っているし、まともに声を出す事も出来ない。
「無理して話さなくてもいいよ、それにしてもムックは元の姿に戻れるのかな、この姿だと街には入れないよね」
『ご主人様、この小娘を置き去りにしてもよろしいでしょうか』
『頼むから止めてくれ』
私の言葉が不満だったのかムックは何処かに走り去ってしまい。アーリアはそれを気にする様子もなく火の番をしている。
今は身体の痛みや吐き気がするのでもう目を開けていられない。
◇
「偉いねぇ、獲物を獲りに行ってたんだ。これで何か作るから待っててよ、それともあんたは生の方が良いのかな」
『ちゃんと調理をするんだ、小娘よ』
「何で唸ってるのか分かんないけど、調理した方が良いのかな、まぁいいや、あんたにも作ってあげるから元の姿の戻りなよ、分かるかな、も・と・の・す・が・た・に、そうそうさっきの姿は不細工だからね」
『この小娘が、ご主人様の許しが出たら殺してくれるわ』
人が苦しんでいる側で馬鹿な事を言い合っているが、ムックは言葉とは裏腹に子犬の姿に戻っているのでまんざらでは無いのだろう。
それにしてもまさかこんな目に遭うとは思わなかった。勝手に魔力が元に戻ると思っていた私も悪いんだが強力な魔法には反動があると言う事か。
「んんっ」
「おっ目が覚めたんだね、まさかいきなり魔力切れを起こすとは思わなかったよ」
「魔力切れ?」
「そうでしょ、違うの?」
「あぁいや、そうだね」
もしかしたらこれが魔力切れなのだろうか。魔法が使える勇者も魔王も無限とも思える魔力を持っていたからそんな心配はする必要はなかったが、この身体だとそんな訳にはいかないのだろう。
私の魔力を探るにはどうしたら良いのか……。
……勇者の記憶だと……だめか、全く気にしていないか。
……魔王の記憶だと……あぁそうすれば良いのね、魔王は何でも知っているのかよ。




