第二十五話 予想外の討伐
「さて、今日こそはコモン鳥を狩らないとな」
「そうだね、まさか昨日は一羽も捕れないとは思わなかったよ」
コモン鳥は魔獣ではなく単なる大きいだけの鳥で、簡単に依頼を達成出来るかと思ったが、昨日は群れを発見する事が出来なかった。
まだ父と狩りをしていた時はこんな事は無かったので悔しくて仕方がない。
『ご主人様、前にその鳥の群れを見たことがありますのでその場所を案内いたしましょうか」
『そうか、それなら案内をお願いしようかな』
直ぐに案内をして欲しいが、まさかムックと会話が出来る事を教えていないアーリアがいるので演技をするしかない。
「ムック、この羽を嗅いでみろ……どうだ分かったか、さぁ俺達を案内してくれ」
『どうしたんですご主人様、そんな事をしなくても案内しますけど』
『仕方が無いだろ、ただ合わせてくれるだけでいいんだよ』
ムックは怪訝な表情をしながらも走り出してくれた。
「ねぇ本当に理解出来たのかな、もしそうだったら凄いね」
「あいつは魔獣だからな、普通の犬より頭が良いのさ」
二人でムックの後を付いて行く、昨日は森の中でも木々が少ない場所を選んで探したが、ムックは森の奥深い場所に向かって進んで行った。
『じめじめした場所は好まないんじゃなかったっけ』
『大丈夫です。私を信じて下さい』
地面は最初は軽くぬかるんでいる程度だったが、そのうちにくるぶしまでの水が一面を覆っている。
「え~まだ先に行くのかな、ちょっと嫌なんだけど。ムックは理解してるのかな」
『失礼な小娘め、儂はなちゃんとその鳥が捕食されているところを見たんじゃ』
ムックは捕食されていると言ったよな、それだと話が違っているんだけど。
「ちょっとあれを見てよ」
目の前には幾重にも張られた大きな蜘蛛の巣が見え、先頭を走っているムックは大きさはそのままで三本の角だけ生やしている。
『さぁあいつらのエサを奪ってやりましょう』
ムックの角から炎が立ち上がってきた。
「あのな……リプレイ」
あれはどう見ても普通の蜘蛛の巣ではなくアラクネの巣だ。もしかしなくともムックはアラクネが捕まえたコモン鳥を横取りするつもりらしい。
「ちょっとあれを見てよ」
「そうだな、あれはアラクネの巣だな」
『そうですよ、あいつらが乱獲しているから悪いんですよ。だからアラクネを殺して奪ってやりましょう』
まぁそれはムックにとってはいい考えなのかも知れないが、私には賛同する事は出来ないが、何故かアーリアは少し興奮している。
「ラッキーじゃない。だったらコモン鳥なんてどうでもいいよね」
「えっもしかしてアラクネと戦うつもりなのか」
「当たり前でしょ、糸玉があったら高額で売れるし、牙だけでも取れたらコモン鳥どころじゃ無いでしょ」
ムックと戯れている姿は可愛らしい女性にしか見えなかったが、アーリアは立派なこの世界の冒険者だと言う事を思い出した。
『あの~私はこのまま攻撃をしてしまって良いのでしょうか? あ奴らを黒焦げにしたやりたいのですが』
『アーリアが驚くからさ、今回は悪いけど声を掛けるまで見ていてくれるか』
ムックは止まられるがアーリアは止められそうもないので、左手を前に構え【混沌の弓】を出現させた。ちゃんとイメージ通りに【光の矢】も現れてくれている。
「アーリアはちょっと待っていてくれよ、先に仕掛けるから」
「あまり近づき過ぎないでね、糸に絡まれると厄介だよ。ムックはおいで」
ムックは子犬扱いされるのを嫌っているはずなのだが、アーリアに従って今は頭の上にちょこんと帽子のように乗っている。
慎重に近づきアラクネの本体を探す。
「早く姿を見せてみろよ……うわぁ」
いきなり足首にアラクネの糸が絡み、一気に引きずられて行く。
「あ~もうリプレイ」
再び【混沌の弓】を構えているが、これ以上近づくのは止めてリシオの記憶を探ってみる。
すると暗い感情が私の中に流れ込みそうになるが、その感情は無視して私が必要な魔法の知識だけ取り出そうとした。
落ち着くんだ私よ、私はリシオではなくて辻本なんだ。
今度は【光の矢】ではなく【炎の矢】を出現させる。見た目は矢が燃えているので熱気が漂ってきそうだが魔法のせいでまだ熱は全くない。
「何それ、そんな事も出来たの」
「ちょっと見ていてよ、俺も初めて使うんだ」
アラクネの姿は目視する事は出来ないが、既に感知して隠れている場所は分かっている。その場所を頭に浮かべて右手の指を放すと、解放された【炎の矢】は大きさを変え、周りに火の粉を巻き散らしながら飛んで行くので目の前が炎の海へと変わって行った。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁl」
悲痛な叫びが聞こえ、炎の先に姿を現したアラクネは身体を溶かしながら死んで逝った。
「いやいや山火事を起こしたら駄目だろ……あ~仕方がないな、リプレイ」
そうだよな、魔王の魔法だもんな、威力を抑えないと不味かったか。




