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第二十二話 森の中で

 このペスコの街のギルドは賑わっているせいなのか、やけにアーリアは視線を集めている。もしかしたらアーリア程の美貌を持った冒険者は珍しいのかも知れない。


「あのさ、かなり見られているよな」

「そう? いつもと変わらなくない? 別にどうでもいいけど」

「その恰好が目立つんじゃないか、そんなに素肌を出さなくても良いと思うけどな」


 最初見た時はビキニアーマーに感動すら覚えたけど、よく考えれば防御力の無いその恰好の意味が分からない。


「別に動きやすいからいいでしょ、何もあんたもこれを着ろって言っている訳じゃないんだから」

「ふ~ん、そうか、では失礼」


 もしかしたら見えない何かに守られているかも知れないのでアーリアのお腹を触るが、やはりお腹の感触以外の物はない。


「ちょっと、いきなり何するのよ」

「リプレイ」


 アーリアの視線が恐ろしく感じたのですぐさま時間を遡る。まぁこうなるかもと予想はしていたので特に動揺などはしない。


「ねぇあんたはどんな依頼を受けたいと思ってるの」

「そうだね、いきなり遠くに行くのは嫌だから近くの討伐依頼がいいかな」


 依頼票を見ている内に私の中で閃いた事があった。直ぐに手にした野鳥の狩りを選んだが、その理由としてあの時の感知能力と【光の矢】が使えれば大量に獲物を獲る事が出来ると思ったからだ。


 ◇


 結果はまぁまぁと言えるだろう。

 感知能力は全く出てこなかったが、【光の矢】は分裂こそしないがちゃんと出す事が出来たので狙った獲物を外す事は無かった。

 まるで矢とは思えない程の速度で飛んで行ったのでそれだけで嬉しくなる。


「本当はもっと成果を出したいところだけどね、そうなるとダンジョンがいいのかな」

「二人で行くのは厳しくないか、それに俺は一度も入った事が無いんだよね」

「ギルドに人材を紹介してもらおうか、まぁ明日考えようよ」


 私達はまだ森の中にいてアーリアが先に眠りにつく事になった。

 空を見上げても雲に覆われているせいなのか何も見えず、ただ目の前の焚火だけが光を放っている。


 元の世界では考えられないな、こんな場所で私が見張りだよ。本当だったら少しは恐怖を感じても良いはずなのに不思議な感覚だ。

 本当に私の心は辻本なのだろうか、いや、もうこれまでの私達が混ざっているんだろうな。

 もう全てが合わさって俺なんだろうな。


 深く考えた訳では無いが、何となくそう感じていると森の中に何かしらの魔獣の気配を感じるが、その魔力は今までの魔獣に比べると桁外れに強い。


 ただ何故かその魔力は俺にだけ向けられている様な気がするので、そっとアーリアから離れながら【混沌の弓】を構える。

 難なく【光の矢】も出す事が出来たのでこれなら射抜く事が可能だろう。


 すると森の中から静かに姿を見せたのは、三本角を持った大型犬のような魔獣で、凶悪な顔をしているが何故か敵意は感じられない。


『魔王様、リシオ様ですよね、その姿が新しい肉体何ですね、本物かどうか分からず警戒しながら来てしまった事をお許し下さい』

「えっ何で声が聞こえるんだ」


 目の前の魔獣からは唸り声しか聞こえないが、頭の中にははっきりと言葉になって聞こえてくる。


『どうかなさいましたか、私の事をお忘れになったのでしょうか……あぁそうですよね、私がリシオ様に会ったのは子供の時ですからね、そうだ、その当時の姿に戻りましょう』


 その言葉が届いたとたんに魔獣が小さくなり、まるでポメラニアンのような子犬へと変化していった。


 凄く可愛らしんだけど、さっきはリシオって言っていたよな、俺はリシオではなくただ身体の中に入っていただけなんだ。その事を言ったらこの魔獣は敵対するのだろうか。


「あのさ、俺はリシオじゃないんだよ。どう見ても魔王に見えないだろ」

『……確かに人間ですよね、けど貴方様の魔力の中にリシオ様の匂いがあるのは何故なんでしょうか』

「それは俺にも良く分からないけど、リシオとして行動した事があったからかな」


 嘘ではないが、これ以上なんて説明したら良いか分からない。


「く~ん。く~ん」


 魔獣の言葉は頭の中に聞こえてこないが、言葉にならない声を上げているようだ。どうやらこの魔獣はかなり混乱しているに違いない。


「あのさ、悪いけど俺は本当に魔王リシオじゃないんだよ」

『そんな、ようやく見つかられたと思ったのに』


 子犬が涙を流すところを見たことは無かったし、魔獣が涙を流す事が出来るとは思いもしなかった。


 

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