第二十話 護衛任務終了
「ねぇ起きなって、何時まで寝ているのよ、ブルクハルトが集合しろってさ、あ~あ~これはまた凄い格好だね」
「うん……ちょっと何で部屋の中にいるんだよ……リプレイ」
こっちは裸だって言うのに何で平気な顔していられるんだ。だったら……。
「うわぁっ、何でこんな所に立ってるのよ、驚かせたいの?」
「偶然だよ、たまたま出ようとしていただけさ、それよりどうしたんだ」
「ちょっと集まれってさ」
想像は何となく出来るが、別に私みたいなE級の意見など聞かずに勝手にやってくれて構わないのだが、それとも他に理由があるのだろうか。
◇
私達が泊まっていた宿よりも数ランク上の宿に到着すると、従者たちが馬車の手入れをしていて、それをオスカリはただ眺めていた。
「お~来たか、悪いけどなるべく早く出発するってさ」
「えっそれは無理があるんじゃないですか、新たな護衛はどうなったんだ」
「一応声は掛けたからな、入口で待っているはずだぞ」
それならわざわざ私達もここに呼ばなくても良いと思うので、悪口を言ってから【リプレイ】したくなったが、こんなこと位で使っていたらきりが無い。
集合場所では死んでしまった冒険者の数ぐらいは集まって欲しいと思ったが、残念ながらその期待は破られてしまった。
新たな人員は二人しかいない。
「旦那様、あと一日待てば今の倍以上に護衛が集まりますがいかがいたしましょうか」
「いや、明日迄は待っていられないな、それよりあいつは何処にいるんだ」
「彼でしたら買い出しを頼んでいます」
「そうか、揃い次第に直ぐに出発だな」
オスカリはせかすように街を出てあの峠に向かって行くが、護衛の数は昨日に比べて半分以下に減ってしまっている。ただまともに戦ったのは3人なのでそれに比べたら良いとは思うが、本当にそうなのか。
「どうしたんだいシューヤ君。そんなに緊張しなくても大丈夫さ」
「どうしてそんな事が言えるんですか」
「それはね、誰もがこの行動を予測していないからだよ」
昨日の内に兵士達が死体を焼却処分したので、あの時とはまるで違った清々しい空気がこの峠を包み込んでいた。
これだと戦闘があった事を知っている当事者以外は何も気が付かず通り過ぎて行くだろう。
オスカリは出発の日を商会の中の人間には三日後と言っていた。仮に商会の中に内通者がいた場合に直ぐに行動を起こさせないためだ。
まぁ正解はあの冒険者の中に内通者がいたんだけど、そこまではオスカリは分かっていない。
それに今日は兵士が峠を見張っているので余計な護衛などいなくても安全に通行できると判断した。
「内通者は誰だと思っているんですか」
「この中にいるのであれば明日には分かるんじゃないかな、まぁ私はこの中には居ないと思っているけどね」
「そうですか……」
リプレイで見たことは言えないので黙っているしかないが、丁度いい緊張感が流れているのでこの空気を利用してインベルガーの感知能力を身に付けたい。
どうすればいいかな……記憶に触れるか。
心の中にあるインベルガーの記憶に触れようとするが、何故だか細かい事は思い出せないし、思い出した記憶はまるで映画でも見ている様な感じで現実感がまるでない。
インベルガーの俺も私なんだけどな……。
昨日とは違って峠は平和そのものになっている。私が内通者だと思っている男がひょっとしたら現れるかと思ったが残念ながら姿を見せる事はなかった。
それからの数日間は全く危険は無いし、そのせいかあの感覚を取り戻す事も出来ないままペスコの街に到着した。
そして当初の依頼料よりもかなり多くのお金をオスカリから手渡された。
「こんなにいいんですか、契約と違うのですが」
「さっき説明したろ。君達が規約違反だと言って護衛を辞めなかった事に感謝しているんだぜ、それにこれだけ払っても私は損をしていないんだ」
あぁあれだけ護衛が死んだんだからそうなるよな、払わなくてよくなったんだから……。
「そうですか、遠慮なく貰いますよ」
「どうだい、君はルカメヤ商会の専属にならないか? そこらの冒険者と違ってがさつなところが無いので気に入っているんだが」
「少し考えさせてください」
直ぐに明確な答えを言えないのは悪いとは思うが、こればかりは仕方のない事だ。
もしかしたら護衛が天職かも知れないし、冒険者として成功するかもしれないからだ。
何にせよ、繋がりは持っておいて損する事はない。
「答えは何時でもいいからな、ほらっギルドに完了報告をしてくるんだ。忘れたら意味はないぞ」
アーリアと一緒にギルドを目指すが、そこでお別れになるんだろう。




