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第二話 領主の息子

 私(僕)はどうなってしまったんだ。まるで頭の中に二人がいるようだ。落ち着くんだ。私(僕)は辻本修也(ホフマン=サンドール)じゃないか。


『やるね~君は、まさか本当に辻本であった時の記憶を取り戻すとはね、いやぁちゃんとした転生じゃないか、少し説明をしようか、いいかい、場所を移動するよ』


 んっ此処はあの場所なのか? 暗くて分からないけど、それよりさっきの感覚は何なんだろう。


『何だって、あれは君が言い出したんだろ、僕はねぇ君の為に辻本修也のまま転生させてあげたんだからね』


 いやっそれはおかしいんじゃないか、だってホフマンとしての記憶もあるし私とは性格が違っているぞ。


『育った環境が違うから性格が違うのは仕方のない事だろ。ただね魂は同じなんだから根本は君なんだよ、普通はこんな事したら魂が壊れてしまうかも知れないのに、面白いよね君は』


 おいおい壊れるだって、まだ記憶が戻ったばかりだから壊れていないだけじゃないのか、ちょっと待ってくださいよ。


『僕が思うには君は大丈夫だよ、それより心を落ち着けてあの世界の君と今の君を同化するんだよ』


 同化って言ってもどうすればいいんだ。それにさぁあの子供は私と同じとは思えないんだよ、私はあんなにひねくれていないから間違いじゃないかな。


『いいや彼は君だよ、環境が人格を作るんだから仕方のない事なんだ。それよりも辻本としての人格が優先されるから良いんじゃないか、まぁ今回の説明はこれぐらいでいいかな』


 ちょっと待ってくれよ、もう少しだけ話を………………。



「起きて下さいお坊ちゃま、将来は領主としてこの街を治めるのですよ、ちゃんと勉強をしないと」

「五月蠅いな、その前にトイレに行ってくる」


 思わず口にしてしまったが、あの話し方は何なんだ。僕はかなり生意気だぞ、ちょっと落ち着いて同化とやらをしないと…………だから、どうやるんだよ。


 やり方など合っているのかすら分からないが、心を落ち着けると段々と私(僕)が混ざるように思えてくる。かなり歪んだ考えが頭をよぎるが私の理性で押さえこむしか無いか。


 僕の記憶を思い返してみると、随分と父親から愛されているんだな。一見厳しいように感じるから僕には分からないけど私には充分にその気持ちが理解できる。

 私もこの父親と同じように娘に接していればあんな事には……。

 いや、私(僕)にはその気持ちは伝わっていないな、子供には難しいのか。


 さて、部屋の戻るとするか、あのまま成長したら悪徳領主になってしまうと思うが、私なら少しはまともな領主としてここで暮らせるだろう。


「あの、戻りました」

「そうですか、では続きをお願いします」


 そういえばテストの最中だったな、私はこう見えても49歳だぞ、こんな問題は簡単に解いて見せるさ。


「終わりましたけど」


 おいおい、領主の息子であるこの私(僕)が終わったと言っているのに、その感情の無い冷たい視線は何なんだ。


「また考えもせずに諦めるのですか……」


 お~お~目を見開いて驚いているね、そうだろう、そうだろう、僕は全く勉強なんて見向きもしなかったけど、この私にとってはこんな足し算なんて簡単すぎるんだよ。


「全部正解しているよね」

「えぇそうですね、トイレで一体何をしていたのですか、いや、それにしてもここまでは無理ですよね」


 一桁の足し算でつまずいている僕にはこの問題は解けないと思っているのだろうが、それにしても僕のレベルに合っていないテストはどうかと思う。


「本当の実力を出せばこんなもんだよ……外が騒がしいね、お祭りでもあるんだっけ」

「いえ、そうではありません。さぁお坊ちゃまは此方にどうぞ」


 いきなり腕を強い力で掴んで椅子から立たせようとするが、一体何があるのだろう。


「ちょっと痛いんだけど」

「気になさらないで下さい。いいですか始まったんですよ」

「えっ何が始まったんだ」

「はははははっ何が、何がと申されるんですかお坊ちゃま」


 怖い、怖い、怖い、怖い、どうしたんだよ、瞳孔が開いた眼で私(僕)を見ないでくれよ、いつもはもっと可愛らしい顔をしているじゃないか。



 んっ此処は何処だ……またかよ、今度は何の用だよ。変な事が起こっているんだから此処にいる場合じゃないんだけどな。


『そう言われてもさ、僕が呼んだんじゃなくて君が勝手に来たんだよ。普通はこんな事は出来ないのに君は何なんだろうね』


 知らないさ、それよりあの侍女は頭がおかしくなったのか、あれをどうにかして欲しんだけど。


『もう手遅れだよ、なんせ君は殺されたんだからね、その記憶は忘れたのかい』


 はぁ~何だと、どういう事なんだ。


『良く思い起こしてみなよ、まぁ君だけの責任じゃないけど……そりゃ恨みを買うさ」


 確かに父親は私利私欲にまみれた領主で僕はその影響を受けた生意気なガキだが、私の記憶が戻ったのだからいい街にする事が出来るのに。


『それを僕に言われてもさ』


 ふざけろよ、私の記憶が戻ってから一時間過ぎていないんだぞ。

 あ~これは酷いな、このやり方は汚いじゃないか、これは駄目だね、こんな事を認める訳にはいかないな、これも弁償の案件だね、いいかいよく考えてくれよ、ほらっ次に行こうじゃないか。


『えっまたかい。もしかして辻本のままで転生をするのかい」


 当たり前だろ、そうだな次はあんなひ弱じゃなくてもっと強い男になりたいな。その条件に合う転生先を探してくれよな。


『君は少し変わったのかな、ホフマンの性格が混ざったせいなのかな、あのさ、いいんだけどホフマンだけの記憶は奥にしまい込むけどいいよね』


 あぁ私が辻本であるならそれでいいさ、今度こそしっかりしてくれよな、私は変わりたいんだよ。

 


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