第十七話 襲撃
「ブルクハルトさん、ブルクハルトさん、何処にいますか」
どうしても伝えなくてはいけないので大声で叫ぶと、直ぐにブルクハルトはこの馬車に寄って来た。
「どうした。何でお前はそんなところにいるんだ。失礼になるだろうが」
どうやらブルクハルトは依頼主がこのこの屋根の下にはいないという事を知らないようだ。
「そんな事より大事な話があるんだよ」
このまま大声で話す訳にはいかないので下に降りて耳打ちすると、ブルクハルトは苦虫を噛み潰したような顔になった。
「本当かよ、それが本当だとするとあの野郎はまだ酒が残っているのか」
すぐさまブルクハルトは二人を偵察に送り、俺はインベルガーの記憶にふれ、あの時の感覚を思い出す。
おいおい、そのまま進むと敵に見つかるけど平気なのか?
教えた方が良いかも知れないけど此処からでは声も届かないな。
あっ今度は敵が崖を降りてくる。
「崖から敵が降りてくるぞ、人数は20人ぐらいだ」
「おいっ偵察はなにをやっている」
「分かりません」
崖の方に意識を向けているので先行した2人の気配は今の私には分からない。
「馬車を固めろ、いいかお前らここで迎え撃つぞ」
「こんな霧ので崖から降りてくる連中なんていないでしょう」
「五月蠅い、指示に従え」
ブルクハルトは馬車を守るように護衛達を並べたが、降りてきているはずの敵の足音はまだ聞こえない。
「シューヤ、どうなっているんだ」
「あの、それが……見失いました」
緊張が高まり過ぎたせいなのか、先程まで感じていた間隔が全く消えてしまった。
「いないのか……いや、もう少しこのままで様子を見るぞ」
「すみません。いい加減な事を言ってしまって」
「いや、多分お前の感覚は間違っていないぞ、嫌な空気が漂って来ているからな」
左手を前に構えて目を凝らしていると、徐々に足跡が上から聞こえてきた。
すると下にいる依頼主であるオスカリが屋根に上って来た。
「なぁ、こんな場所で戦うよりこの霧を利用して逃げた方が良んじゃないか」
「難しんじゃないですか、それより、あっ」
話している最中にオスカリの脳天を矢が貫いた。
「あ~もう、リプレイ」
「なぁこんな場所で……」
「いいから黙っていて下さい。それっ」
矢は通常ではなく魔力を込めると光の矢が現れそのまま見えない敵に向かって矢を放った。
光の矢は分裂しながら霧の中を飛んで行く。
頭の中に3人を仕留めた感覚が伝わってきた。
いい魔法じゃないか、この矢は勇者が使っていた奴か、使いやすいな。
「皆殺しにしろ~」
「うぉぉぉぉぉ~」
姿は見えない敵の怒号が聞こえ、大地が震えている。
「お前ら、前からも来るぞ」
感知が全く出来なくなってしまったのでただひたすら声のする方に矢を放って行く。
狙いを付けて放ってはいないが、それでも何人もの敵を射抜く事が出来ている。
「がぁっ、いってぇ~、リプレイ」
敵からの矢が降りそそぎ、危うく即死しそうだったが、これで何処が安全な場所なのか把握する事が出来た。
全ての矢を躱すと、とうとう敵の姿が見え始めたのでこれで一人一人を正確狙い撃つ事が出来た。
私の下にいる護衛達を助けるために何度か【リプレイ】を使用したが、残念ながら全てが良くなることはなく、馬車に乗り込ませない選択を選んでしまう。
「お~い後ろはどうだ」
「崖からの敵は全て倒しました~」
私と一緒に戦った護衛は戦力にならず、ただの肉壁として利用してしまったが、それは彼等の体調管理が悪いせいだと思うしかない。
「おいっシューヤ君、もう終わったのか」
馬車の中からオスカリが顔を出すが、彼に何かあったらこの護衛は失敗となってしまう。
「まだ分かりません。確認してきますので中にいて下さい」
崖からの敵は全て退けたので前の方にいくと、ブルクハルトとアーリアが背中合わせで立っていてその周りには数々の死体が転がっていた。
「おいっそっちはどうなった」
「商会の人達には何も被害は出ていません。ただ護衛の……すみません」
「謝る事ないでしょ、自分の身を守れない連中が悪いんだからね」
結局、この襲撃でまだまともに戦えるのはこの三人のみとなってしまった。




